北理研第7回札幌支部理科教育研究大会学年別分科会主張内容④ 共生の視点で関係性考える 生物の暮らしと環境
(札幌市 2022-11-08付)

6年「生き物の暮らしと環境」

◆指導者=蝦名裕貴教諭(北九条小)

◆発表者=石黒正基教諭(伏見小)

▼重点1「課題と問題の関連を明確にした単元構成」

 札幌市内の6年生、約500人に実践前にアンケート調査を実施。その結果、人が生きていく上で、食物連鎖、植物の役割、水の循環が必要だと考えた子どもは学級の約8割、本単元で学習する知識をある程度もっていることが分かった。

 「植物が人のために役立っていることはあるか?」と問うと「植物は食料になってくれている」「酸素を出してくれている」「森は洪水を防いでくれている」など、人にとって有益だと答える回答が90%を超えた。

 一方で、人が植物に役立つと意識する子どもは多くない。約35%の子どもがNOと回答し、Yesと回答したうちでも、アンケート記述を分析すると96%の子どもは、水やりや雑草抜き、丁寧な栽培、植樹、肥料、品種改良など消費者や利用者としての立場から捉えているものだと分かった。

 また、身近な動物が何を食べているか、食べる様子を見たことはあるかと問うと、特にミミズやダンゴムシといった土壌生物については、知らない、分からない、食べなくても生きられると回答する子どもが多いことが分かった。

 こうした実態を踏まえ、本単元は、生き物同士のつながりに視点を絞る課題を設定した。例えば1次は、北九条小学校周辺の環境と5年生の宿泊学習で訪れた滝野の環境との比較から、「滝野の動物は、森で何を食べて生きているのか?」を課題とし、食べる・食べられる関係に着目した活動を展開する。

 図鑑を使って、滝野の森に生息している生き物を複数調べると、いずれもミミズと植物とプランクトンに行き着く結果に出合うことで子どもは、土壌生物の役割に問題意識を持ち、解決に向けて追究し始める姿が実現できると考えた。

 本部会では、このように6年生の知識や経験をもとに、自然認識を深めていけるような学習の実現を目指した。

 本単元は食物連鎖、植物の役割、水の循環を扱うがそれぞれが扱う内容が異なるので、単元構成にもう一つ工夫がなければつながりに欠ける面もあるのではないかと考えた。

 それを解消するために着目したのは2点、1点目は、単元を通したコンセプト「共生」の設定と2点目は、毎時間スライドを活用して学習内容を結び付ける活動の位置付け。生き物同士のつながりという視点で事象を見つめ直すと、これまで別々で見ていた生き物の役割に目が向く。

 また、それを毎時間書き込むことで知が更新され、「共に生きている」という気付きが生まれるきっかけとなった。これは本単元で目指す「価値を創る姿」につながると考えた。

▼本時場面について・重点2「自然事象を見つめ直すきっかけを生む対話問題」

 本時は、植物を閉鎖空間に置き、酸素の割合を増やす場面。子どもは、日光や二酸化炭素を十分に与えれば、酸素の割合を大きく増やすと予想し、活動に向かう。

 しかし、屋上や温室、多目的ホールなど、どの条件においても思ったより増えず、21%程度の結果になるという問題に出会う。

 そこで、授業の中盤では、スプレッドシートで酸素と二酸化炭素の増減の値を一覧にすることで、植物の酸素の出し方についての考えを引き出す。

 また、個々の考えを共有することで、観測時間や空気の構成など、新たな条件が話題となる。

 対話を通して、他者の視点を取り入れて解決の方法を発想し、再び事象に関わる姿を生む。

 3連休明けの追実験では、どの条件を変えても、植物は酸素濃度を21%程度で抑えることを捉える。

 以上の追究を通して、空気中に含まれる気体の割合が一定なのは、植物が酸素の割合を元に戻しバランスを取っているという、自然事象の価値を実感する姿をねらった。

(連載終わり)

(札幌市 2022-11-08付)

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