全国小社研北海道大会公開授業④ 道教大附属札幌小 農家の営みから地域を学ぶ 生産者と消費者の視点で考える
(札幌市 2022-11-21付)

第3学年授業研究会B(2)

道教育大附属札幌小3年1組(樋渡剛志教諭)

地域に見られる生産の仕事~「札幌黄」生産へのこだわり

◆第3学年で目指す子どもの姿

▼体験的な活動を通して地域の良さを実感し、社会的事象を創出する人物への憧れや住んでいる地域への愛着を持とうとする子

 第3学年部会で目指す「社会を知り、世界を切り拓く北国の子」とは「地域の良さを知り、自分の地域を捉え直す子」である。3年生の社会科では主に地域の学習を進めていく。

 川が高い土地から低い土地へと流れていくことを「地域」を通して学んだ子どもたちに、他地域の地図を提示すると「札幌と同じように、高い方から低い方へ川があるよ」と共通性を見つけていく。

 このように「地域」を学ぶからこそ、他地域との共通性を見いだし、特色をつかめるようになっていく。

 さらに、地域に対する「良さ」を捉えることで誇りや愛着を持つことができれば、他地域、他国へと学習が広がっていく際にも自分の「地域」とその地域を比べ、共通性や「良さ」を捉えようという芽が育まれていくと考える。

 本単元では、札幌のタマネギ農家の営みから、札幌という地域だからこそ札幌黄の生産にこだわる意味や通年出荷することの意味について生産者と消費者の立場で追究し、札幌における農家の在り方を考え、地域に誇りや愛着を持つ子を目指す。

 このような学び方が、多角的に追究し、わが国の発展を願いわが国の将来を担う国民としての自覚を養う5学年の産業学習にもつながると考える。

◆本単元の目標

 タマネギ生産の仕事は地域の人々の消費活動と密接な関わりを持って行われていることを、見学・調査したり、地図などの資料で調べたりして、ノートなどにまとめ、仕事の種類やタマネギ畑の分布、仕事の工程、消費者の願い、販売の仕方、他地域との関わりなどに着目して、タマネギ生産に携わっている人々の仕事の様子を捉え、地域の人々の消費活動との関連やそれらの仕事に見られる工夫を考え、表現することを通して、札幌の農家の一人である坂東拓也さんの営みを知る。

 また、主体的に学習問題を追究・解決し、学習したことをもとに地域の農家の在り方について見つめ直し、自分の消費行動や地域の良さについて考えようとする態度を養う。

◆本時のねらい

 坂東さんが生産しにくい札幌黄をたくさん作っている意図について考える活動を通して、消費者の願いに応えながら札幌黄を生産している坂東さんの工夫や札幌黄作りのこだわりを捉え、表現することができる。

◆本時の展開

【子どもの主な活動】

〈問いを生む場〉

▽タマネギの生産割合を予想する

▼課題(病気に弱くて保存しにくいのに)どうして坂東さんは「札幌黄をたくさん作っているの?」

〈考えをつなぐ場〉

▽坂東さん

・大型冷蔵庫で、冬眠させるって聞いたよ

・生のおいしいタマネギを届けられるよ

・明治から続いている札幌黄作りを続けるための作戦なんだよ

・一年中売ることができると、いつも利益があるよ

▽消費者

・生産量の少ない札幌黄をいつでもレストランで使えるよ

・レストランもうれしいし、レストランで食べるお客さんもうれしい

・食べたくてもめったに見かけないタマネギが一年中ある

・あのおいしさが一年中楽しめる

▼まとめ「保冷庫で保存することで、いつでも食べられるようになるし、いつでも売ることができるんだ」

〈吟味・検証・再考する場〉

▽札幌黄の販売時期と生産量について再考する

▽多くのタマネギ農家

・札幌黄を一気に販売

「生産する量が少ないから、一度に新鮮なまま売っているんだ」

▽坂東さん

・札幌黄を1年間販売

「たくさんの量を生産しているから、一年中出荷しているんだ」

▼まとめ「札幌のタマネギ農家は、札幌黄を残そうとしたり消費者のニーズに応えたりするために作り続け、生産量に合わせて販売方法を工夫しているんだ」

【教師の具体的な手だて】

〈問いを生む場〉

▽タマネギの生産量を決められる円グラフを提示する

▽病気に弱く日持ちしない札幌黄をたくさん生産している坂東さん(農家)の意図を問う

▽F1種と札幌黄(一般的な農家)の作付面積を比較する場を通して、坂東さんの意図をより強く引き出し、問いを生む

〈考えをつなぐ場〉

▽見学してきたことをもとに見通して自力解決できるよう、何から得た情報かを子どもに問いかける

▽「坂東さんは、そこまでする必要があるのか」と問い、「広めたい」という農家の思いと「手に入りにくい(流通)」という消費者の思いを引き出すことで「利益」と「入手のしやすさ」という視点から追究する姿を引き出す

〈吟味・検証・再考する場〉

▽生産量によって、販売時期を工夫していることに目を向けるために、自分が札幌黄を作る農家だったらいつまで売るかを考える場を構成する

▼評価

▽「自分にはなかった友達の考えを聞いてどう思ったのか。今の自分はどちらの売り方を選ぶのか」を「消費者」と「生産者」の立場でノートに記述している内容を見取る

(札幌市 2022-11-21付)

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