日本教育会道支部 全道巡回上川大会 「貢献力」の磨き上げを 青木信州大准教授が講演(関係団体 2022-11-24付)
日本教育会北海道支部(前川洋支部長)は19日、オンラインで全道巡回研究大会上川大会を開いた。信州大学学術研究院・教育学系准教授の青木一氏が「学校組織マネジメントにおける人材育成」と題し講演。若手やベテランの育て方について話したほか「人は人から大事にされ、頼りにされているときに幸せを感じる」とし「貢献する力」の大切さを強調。「校長も最後は再任用で1プレイヤーに戻る時代」と就労観の転換を求め「昇給や昇格がモチベーションではやっていけない。頼りにされることが幸せにつながる」と貢献力を磨くことの大切さを訴えた。
同大会は本道の広域性を踏まえ、4年前から札幌市以外を会場に年に1度、全国的に著名な講師を招き行っているもの。上川管内校長会等との共催で全道から約160人が参加した。
はじめに前川支部長があいさつ。「本支部は、皆さんが所属する校長会等の各種団体の創意で設立されたもので、学校と保護者が一堂に会して交流を深め研鑚することができる日本教育会最大の支部」と説明。
日本教育会の全国大会が来年11月11日に札幌市で開催されることを紹介し「オンライン方式を主体とした半日日程となるが多くの参加を期待する」と述べた。
また「学校における人材育成はとても重要だが難しく悩ましい問題。本日は多くの示唆や情報提供を得られると思う」と期待した。
このあと青木氏が講演。若手やベテランの育成、管理職自身の学びについて、概要つぎのとおり述べた。
新任でいつもおどおどしていた先生がいた。心配になりクラスに見に行ったところ、普段は寡黙な子や不登校気味の子が楽しそうに笑っていた。先生にも個々の持ち味があり、持ち味を生かしてあげることが大切と実感した。
長野県の研修でこれまでの教職の振り返りを315人にやってもらった結果「うまくいっている。楽しい。上向きだった」ときは9割が同じで、人から大事にされ頼りにされているときだった。相手は同僚、子ども、保護者とそれぞれ違うが、いずれも「貢献する力」と言える。
若い先生は勢いはあるが、子どものメンタルや保護者への対応は粗削りでスキルもまだまだ。過剰なストレスがあったとき我慢ができずたがが外れることが多い。過剰なストレスで攻撃的になる人は、いらいらして体罰、わいせつに走る。ストレス・マネジメントが大切。まずは食べる、寝る、ホッとできる時間の確保が大切。食べていない職員は危ない。寝ていないのは黄色信号である。
管理職はストレス・マネジメントとしてゲートキーパーの役割が大切。悩みを聞いてあげたり一緒に対応してあげたり、早めに病院にかかることを勧めてあげること。ある学校では職員会議のあとで10分のミーティングを行っていた。問題提起し、みんなで協議し、アドバイスする。10分で解決できるわけではないが、大事なことはみんなで課題を考えること。解決できなくても悩みは共有できている。それを機に同じ悩みを持っている先生と話し合えたりする。
感情を抑えることで仕事を成すことを「感情労働」という。ストレスがたまり、自分らしさが失われやすい。代表的なのはキャビンアテンダントや看護師、教師。だからこそチームで若手を支援していくことが大切。学校組織マネジメントにおいては、何でも話せる雰囲気の醸成が極めて大切。今は歓迎会や送別会などがない分、気軽に会話ができていないためほっこりした職員室が必要になる。
定年延長が2年ごとに1歳ずつ引き上がる。ということはベテランが増える。ベテランが頑張らなければ学校経営は回らない。
今の50代は気力・体力・姿も若い。しかし意識だけ老齢化し「もう年だから」と考える人が多い。かつての50代の先輩はもうロールモデルにならない。今の50代は気力も体力も若いのだと学校全体の価値観を変えるべきである。
また、アンラーン(学び直し)が大切。本当に今のやり方でいいのか、違和感はないか、時代に合っているか、身に付けてきた知識や技術をメンテナンスすること。「あれ?何だか合わなくなってきているかもしれない」と気付くセンサーが働き、修正できること。
60歳までに学び直しをすることが大切。自分は何に貢献できるか。地域のことか、生徒理解か、対保護者対応か。こうしたことを60歳までに磨き上げていくよう背中を押し、声をかけることが校長の大切な仕事。
今までは定年前と後で人生を分ける人が多かった。しかし人生100年時代となり、アフター教職は35年に及ぶ。年金で遊んで過ごすにはあまりに長い。
人生100年時代は50歳前が第1ハーフ、後が第2ハーフ。第1ハーフは問題ない。問題は第2ハーフで何ができるかを考えキックオフしておくこと。
校長先生も最後は1プレイヤーとして同僚となる。そういう就労観の転換が必要。モチベーションが昇給・昇格ではやっていけない。幸せは「貢献力」と価値観を変更しないといけない。第2ハーフを楽しむには、頼りにされることが幸せにつながるのである。
定年後半数は再任用で教職を継続すると思う。であれば、1プレイヤーとしての知見をアップデートしておくことが大切。新たな仕事や趣味を定年後にいきなりやった人は大体失敗している。うまくいっている人は定年前に実験を繰り返している。そのために余暇の時間を何とか確保し、自己への再投資に充てること。
貯蓄などの有形資産ではなく、知識や仲間などの無形資産の充実で、より幸福に人生を送ることができる。管理職であっても自分磨きを継続させ、学び続けることが大切である。
3%を自分の学びに投資してはどうだろうか。1日20分として1年で24日である。私の先輩は元技術の先生だったが、パンク修理、タイヤ交換、包丁研ぎで定年後月10万円を稼いでいる。さすが技術の先生と思いきや「50歳から腕を磨いてきたんだよ」と言われた。
退職後大学院に行って特任教授になった方もいる。「夢がかなった」と喜び、ゼミを持ちながら学生とわいわいやっている。
ある小学校の校長は、マレーシアの日本人学校にシニア派遣で行った。「新卒のようにピュアになれて、子どもと心から楽しめる」と生き生きしていた。
何を学び何に貢献するか。人は残された時間が限られていることを知れば、どうしたらいいかを考え真剣に取り組む。管理職が学び直しで学ぶ姿を見ることが教職員や子どもたちに与える効用は計り知れない。
(関係団体 2022-11-24付)
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