道視研 教育研究大会札幌大会開催 アイデア実現する会に 地域でセンター的役割を
(関係団体 2023-01-06付)

道視研研究大会(開会式)
“新たな道視研”として一層の活動の充実を訴えた

 道視覚障害教育研究会(道視研、佐古勝利会長)は、昨年11月中旬、2日間にわたり札幌視覚支援学校で4年度道視覚障害教育研究大会を開いた。佐古会長は開会式で「日々の教育活動に真に役立つ“新たな道視研”をスタートさせることができた」と謝示。在籍者の減少に伴う課題が生じていることに触れ、解決に向け、授業改善の着実な実施と地域におけるセンター的機能の発揮、「4校全ての教職員がアイデアを出し合い、そのアイデアを連携・協働して実現できる道視研となるよう学び続ける」ことが必要と訴えた。

 大会の研究主題は「視覚に障害のある幼児児童生徒一人一人のニーズに応じた指導・支援の在り方の探究~“個別最適な学び”と“協働的な学び”の観点からの学習活動の充実」。約120人が参集したほか、全道からオンラインで参加。午前中は札幌視覚支援学校の通常授業を公開した。

 開会式では佐古会長があいさつ。「本年度から、道視研は年1回の研究大会を主軸に置いた在り方を改め、会員が希望する教科等指導サークルに所属し、年度を通した研究・研修はもとより、適宜指導上の情報交流を行うなど、日々の教育活動に真に役立つ“新たな道視研”をスタートさせることができた」と振り返った。

 その上で「これも各校の校長をはじめ、道視研在り方検討チームのメンバーを中心とする4校全ての教職員が学校間の垣根を越え、目の前の幼児児童生徒一人ひとりに専門性の高い教育を提供したいという熱意と現状を変えたいという行動力のたまもの」と謝意を示した。

 また、在籍者の減少に伴う教育活動や教職員の専門性の維持・向上が大きな課題となっていることを述べ「令和の日本型学校教育を目指した授業改善などに着実に取り組むこと」「センター的機能を発揮し、地域に居住する全ての視覚障がいのある方のニーズに応じた助言・援助を行うこと」「4校全ての教職員がアイデアを出し合い、そのアイデアを連携・協働して実現できる道視研となるよう学び続けること」などが必要と訴えた。

 続いて、来賓の村上由佳道教委特別支援教育担当局長が祝辞。「一人ひとりの状態に応じたICTを活用した自立支援などに日々取り組んでいることに敬意を表する」「在籍者の減少によって点字指導の維持・継承などが課題となっているが、相互に緊密な連携を図り、本年度中に策定する基本方針を通じ、特別支援教育の充実に力を尽くしていく」などと述べた。

 初日はこのあと、研究授業の公開と部会・分科会(「理科・生活」「図工・美術」「算数・数学」「生活、学校保健」)を実施。

 2日目は4校全校を学校休業日とし、引き続き部会・分科会協議に加え、教科等指導サークルの研修会。さらに、NPO法人スラッシュの山賀信行氏が「視覚障害児・者のICT利活用を進めるために視覚障害教育に期待すること~ワード・エクセル以外に必要なことは」と題し講演した。

◆入力に抜群の連携プレー 5年理科「人のたんじょう」

 大会の初日、札幌視覚支援学校の水沼直美教諭が小学部5年の理科「人のたんじょう」の研究授業を公開した。妊娠・出産について調べ分かったことを端末に入力する場面では、答えをつき合わせることで正しい知識を覚えるとともに、自分たちで役割を分担し、意見を調整し、入力を助け合う姿が見られた。

 7時間扱いの5時間目。これまで人の誕生について様々な方法で調べており、本時の目標は「調べた結果をもとに、人の子どもの母体内での成長について考え、友達と情報を伝え合ったりしながらまとめることができる」。

 水沼教諭は前時までを振り返り「きょうは調べたことを発表し合ってまとめていこう」と投げかけた。

 インターネット、本、出産経験者へのインタビューなどをもとに「赤ちゃんは子宮で育つ」「38週間で出てくる」「生まれたときの平均は50㌢、3000㌘」「おなかの中ではへその緒で呼吸している」「赤ちゃんがおなかにいる間は重かった」「へその緒は切っても痛くない」「赤ちゃんが出てこないときはおなかを押す」「赤ちゃんが泣くのは空気を吸うため」などと発表。

 水沼教諭は「インターネットは便利だけどうそもあるって話したよね。でも、本や人に聞いたことも同じなら正しいと言えるよね。それでは共通点を話し合ってまとめシートに入力していこう」と投げかけた。

 子どもたちは、調査結果で何が一致しているかなどを話し合い、端末に入力。「この項目は僕が入力するね。つぎのは誰がやる?」といった具合に自分たちで役割を決め、スムーズに入力を進めた。

 へその緒を「臍帯」と書いた子がおり、それが入力されると「名前どうする?」「医療的な名前で書いてくれたんだからそれにしよう」「それじゃ臍帯(へその緒)にした方が良くない?」など次々と意見を交わし、自分の意見に固執することなくみんなの考えをまとめていった。

 「僕すごく長く書いてきたんだけどどうする?」「詳しく書いた方がいいと思う」など、一人で決めず、みんなで判断し合いながら作業を続けた。

 また、長い入力を行ってつぎに進めない子の様子を見ると「〇番書いてほしい。いい?」と入力をしていない子に作業を振ってあげたり、長い文を目で追うのが大変そうな子がいると「覚えきれないから、僕が読み上げてあげる」と申し出るなど、互いを思いやりながら作業を進めた。

 その結果、1つの項目を除き全て正解と思われることを入力できたが、赤ちゃんがどれくらいで生まれてくるかについては「10ヵ月」「38週」「80日」「40週」とバラバラの結果に。子どもたちは「普通30週以上あるよ」「20週を7で割ったんだけど」など、自分なりの考えや予想について意見を交わし合ったが授業終了の時間となり水沼教諭は「何で違うのかな。どこから数えるのかな。つぎの時間に調べてみよう」と投げかけ授業を終えた。

 終了後も「先生、僕はこう思うんだけど」と持論をぶつけるなどつぎの時間が待ちきれない姿が見られた。

 水沼教諭とサブティーチャーの黒澤康裕教諭は、子どもたちが発表や入力をする際困ったり戸惑っている子をサポートするなど、一人ひとりの状態に応じて支援した。

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道視研研究大会「人の誕生」
端末の操作や文字の見えにくさなどに戸惑う子を支援した

(関係団体 2023-01-06付)

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