教職員の協力を高める学校づくり〈№107〉 基本的対応手順の明示を いじめ問題再考②
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-01-30付)

 児童生徒、教職員、保護者、地域住民、学校関係者を対象とした令和3年度「いじめに対する意識アンケート」(道教委学校教育局生徒指導・学校安全課)の調査結果を私なりになぞってみます。

 調査結果によると、保護者に対する、学校がいじめの未然防止に取り組んでいるとの回答は45%であり、取り組んでいないが4%、分からないが51%となっています。児童生徒への同様の質問では、取り組んでいるが55%、取り組んでいないが6%、分からないが39%となっています。

 調査では、何をもって未然防止の取組としているのか不明ですが、いじめの未然防止の活動は安心して集団生活を送る上で、全ての児童生徒に保障されるべき人権を確保する活動です。

 特にこの項目で重視されるべきことは、個々の教師が必要に応じて特別活動などで実践するのではなく、①年間の活動計画に位置付け、教職員の共通理解のもと、学校全体でどのような活動(方法)をもって取り組むかを検討し、児童生徒の実態を踏まえた活動内容として位置付けられているかどうか②いじめ問題は社会的発達が未熟なため起こる問題であり、いじめ問題は児童生徒自身が自分たちの問題であると自覚できているかどうかであり、教師からの一方的な指導ではなく、児童生徒が主体的に活動できる場を設けているかどうか③未然防止のためには教師間の連携がことに重視されるべきであり、授業中、休み時間、登下校時など知り得た情報を学年や学校で共有し、複眼的に児童生徒を見守る体制がとられているかどうか―です。

 さらに、学校はいじめの認知に向けて積極的に取り組んでいるかとの質問に対して、保護者の8%がとてもそう思う、60%がそう思う、28%があまりそう思わない、4%がそう思わない、同様に児童生徒の33%がとてもそう思う、50%がそう思う、14%があまりそう思わない、14%がそう思わないとなっています。

 教師も児童生徒自身も日常的にいじめ問題について注視する学校内の雰囲気を醸成(ポリスマン的な見守りではなく)することが必要と思われます。

 つぎに、いじめが起きた場合の学校の対応として、保護者の28%が適切に対応できている、5%が適切に対応されていない、68%が分からないとしています。同様に児童生徒の49%が適切に対応できている、4%が適切に対応されていない、47%が分からないとしています。

 この項目の課題は、いじめが発生した場合の基本的な対応の手順を保護者や児童生徒に「学校のいじめ対応」として日常的に明確に示すことが必要であると解釈できます。

 ただし、いじめの発生に関わる公開(発生した学級や部活動名、どの児童生徒が被害者であり加害者なのか、いじめの経緯や経過など)は、いじめの状況によって教育委員会と連携のもと慎重に対応しなければなりません。

 さらに、学校で苦慮することは、被害に遭った児童生徒と保護者、加害の児童生徒と保護者の納得です。場合によってはいじめそのものの問題よりも、学校の対応を問う事例も多く見られますが、保護者はどのような状況であろうともわが子を守ろうとする心理が強く働くことを前提に対応することが求められます。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2023-01-30付)

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