教職員の協力を高める学校づくり〈№115〉 法令を背景とした対応を 学校のリーガルリスクマネジメント④(教職員の協力を高める学校づくり 2023-05-26付)
保護者の中には、校内外で起きた子どものことと言いながらも、まるで日頃の鬱憤を晴らすかのような、心雑で妄想に駆られているのではないだろうかと思われるような強い口調で教職員を罵倒し、メンタルヘルスを損なう事例も見られます。
ごく少数とは言えそのような保護者への対応は極めて困難であり、誠意を持って対応することが望ましいと理解はしていても、誠意が通用せず学校運営に重大な支障を来す事例が見られます。
残念ながらそのような方々の多くは、当初の児童生徒の問題からクレームの対象が次第に学校や教職員の対応に移行し「子どもを不幸にしない」よりも、自己抑制ができず感情の思うままに振る舞い、学校の非について丁寧に説明した上でわびても納得せず、一方的に学校の非をまくし立て、挙げ句には根拠のない「訴えてやる」などの脅し文句を並べ、自分の正当性を他の保護者に吹聴するなど、学校が混乱の渦中に陥ってしまうこともあります。
また金品などの利益強要、場合によっては激高して器物を破損し、暴行、土下座の強要などの相談事例もあります。特異な事例と言えども学校運営上の危機管理上、このような保護者への対応をどのように進めるか今号と次号に記載します。
学校のリーガル・マネジメント①で、学校が求められる毅然たる態度とは、法令を背景に対応すべきであると記述しました。
ご存じのように、文部科学省の令和5年2月7日付通知「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」では「重大ないじめ事案等は直ちに相談・通報を行うほか、学校と警察が日常的に情報共有や相談を行える体制の構築」に関わって触れています。
同様に、保護者による刑法の触発行為については、児童生徒、教職員の安全を確保するために、警察へ相談することをお勧めします。
対応として、感情が激高して一方的に学校の非を責め、事実を歪曲しながらまくし立てる保護者には、その言い分を丁寧に聴きながらも事実関係を中心に話を進めるようにします。
対応の一例を記述しますと、該当の保護者には事前に「〇月〇日〇時に学校にお越しいただきますが、どのような事実があるのか、日時と場所、事実関係についてお聞きしたいと思いますのでご準備ください」と告げ、当日は「本日は〇〇さんが感じたことではなく、事実のみをお聞きします。時間と場所、どのようなことについて、どのようなことがあったのかをお話しください」と述べメモを取り、その後「〇〇さんがお話しされた内容で事実関係を調べますが、お話しされた内容が事実と違う場合は(虚偽の風説は威力業務妨害・刑法234条3年以下の懲役、50万円以下の罰金)基本的人権を保護する観点から、場合によっては必要な対処をさせていただきます」と説明します。
つぎに「本日のお話は、先日お電話で話しましたように〇時〇分までとします。その後も協議時間を要求される場合は、不退去罪(刑法130条・3年以下の懲役、罰金10万円以下)が適応されますのでお話を終了いたします」と説明します。
協議の途中、主観的で感情的な発言が見られる場合は「先にご理解いただいたように、本日は〇〇さんから事実関係をお聞きする機会ですので、〇〇さんの感じたことのご発言はお控えください」と告げます。
また攻撃的な言動が繰り返されるような発言をされた場合は、即座に協議を打ち切ることなどを協議前に保護者に説明します(保護者の状況を見極め、〇〇罪と告げるのではなく、〇〇のようなことが互いに生じないように注意しましょうと呼びかけます)。
〈参考文献〉
▽実践事例からみるスクールロイヤーの実務(石坂浩・鬼澤秀昌、日本法令)
▽学校保健学校安全法令必携・第8次改訂(ぎょうせい)
▽スクールロイヤー・学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q&A170(神内聡、日本加除出版)
▽法学六法2020(信山社出版)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-05-26付)
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