教職員の協力を高める学校づくり〈№116〉 保護者プラス1人が原則 学校のリーガルリスクマネジメント⑤(教職員の協力を高める学校づくり 2023-06-09付)
今号は前号に引き続き、特異性の見られる保護者対応の一例を刑法によって記述します(対応については、保護者の状況を見極め、〇〇罪と告げるのではなく、〇〇のようなことが互いに生じないように注意しましょうと呼びかけます)。
一例の記述に当たり、粗暴な言動や器物破損(起訴状や告訴状、判決書などの公文書には「器物破損」ではなく「器物損壊」と記載される)など暴力行為に及ぶ可能性、金品の利益要求をする保護者と対面するときには、保護者の人数プラス1人(保護者が2人の場合は3人)の複数で対応します(静止させ、警察へ通報するためです)。
また事前に教育委員会の理解を得ながら警察へ事前通報し、その必要が生じた場合は直ちに学校へ来ていただくよう依頼しておきます。
面談当日は保護者の状況によって、つぎのようなルールを事前に提示してください。
▼本日の協議は、法にのっとり協議を進めさせていただきます。これにより、何点かお願いがあります。
▽電話でお話しましたように、〇〇さんのお考えや感じたことではなく、事実関係についてお聞きします。
▽〇〇さんの発言により、〇〇教諭は心療内科へ通院し、診断書が下されています。〇〇さんの言動は、威力業務妨害(刑法234条3年以下の懲役、50万円以下の罰金)に該当し、重ねて本日の協議の中で同様の感情的発言がなされた場合は、警察へ通報させていただきます。また脅し文句ともとれる発言をされた場合は脅迫罪(刑法222条2年以下の懲役、30万円以下の罰金)および脅迫未遂罪が適用されます。金品など利益を要求することは恐喝罪(刑法249条10年以下の懲役)に該当します。さらに学校の器物を破損された場合は、器物破損罪(刑法261条懲役3年以下、罰金30万円以下)が適用されます。
▽謝罪文書や土下座などを要求した場合は、脅迫罪(刑法222条懲役2年以下の懲役、罰金30万以下)および強要罪(刑法223条懲役3年以下の懲役、罰金30万以下)に該当する可能性があります。
▽机をたたく、いすを蹴るなどの行為は、暴行罪(刑法208条2年以下の懲役、罰金30万円)に該当します。また同様に相手の体の一部に触れ暴力とみなされた場合は、傷害罪(刑法204条懲役15年、罰金50万円)として直ちに警察へ通報します。
▽ビデオ撮影は人権侵害に当たりますのでお断りします。
▽以上の内容に齟齬がある場合は、即座に協議を打ち切ります。
▽〇〇さんが言われた内容を記録するため、校長である私と教頭、〇〇教諭の3人によって協議に参加し、終了時に読み上げ、確認しますがよろしいですか。
▽以上ですが、意見や質問はありますか。
▽(訓示例)学校は子どもたちが社会生活を学ぶ場です。当然ルールがあり、他の子との人間関係のあつれきも生じます。しかしそのことによって、自分を見つめ互いに人として成長する活力になることは、お分かりのことと思います。
▽それでは、教頭の司会で進行します。
―事実関係を何時、どこで、どのようなことがあり、どうしたのか具体的にお話しください。記録をいたします。途中で感情的な態度や発言が見られた場合は必要な個所について説明します。なおかつ収まらない場合は協議を打ち切り、場合によっては警察へ通報します。
〈参考文献〉
▽実践事例からみるスクールロイヤーの実務(石坂浩・鬼澤秀昌、日本法令)
▽学校保健学校安全法令必携・第8次改訂(ぎょうせい)
▽スクールロイヤー~学校現場の事例で学ぶ教育紛争実務Q&A170(神内聡、日本加除出版)
▽法学六法2020(信山社出版)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-06-09付)
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