教職員の協力を高める学校づくり〈№118〉 チーム学校で臨む指導改善 生徒指導提要の改訂を読む①
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-07-14付)

 本紙の読者の皆さまから「生徒指導提要の改訂」について概説してほしいとの依頼があり、重責を感じながらも「生徒指導提要の改訂を読む」と題し私見を加え、6号シリーズでその要点を記述します。

 生徒指導はご存じのように、一人ひとりの児童生徒の人格を尊重し個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動を言い、学習指導と並んで学校運営上、重要な機能を担っています。また学校の目標を達成するための機能であり、小学校、中学校、高校のそれぞれの段階に応じて組織的・体系的な取組が求められています。

 このような意義を十分に理解しながら、生徒指導の実践に際し教職員の共通理解を図り、組織的・体系的な生徒指導の取組を進めることができるよう学校・教職員向けの基本書として、生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等を時代の変化に即し、教職員向けに作成されたのが生徒指導提要です。

 法的な拘束力はありませんが、生徒指導の基本方針や進め方の留意事項、さらに日常の児童生徒との関わり方から不登校・いじめへの対応など、学校現場で起こる様々な課題に対する指導方法や心構えを記しています。

 特に今回の改訂では記述内容をより細分化し、生徒指導の原理や活用方法、いじめ・非行・虐待・自殺・不登校などの生徒指導上の諸問題への対応などについて細かく記しています。

 言い換えるならば、どちらかと言うと感覚的に陥りやすい生徒指導の傾向を、今日求められている生徒指導の在り方に基づく対応方法(各関係法令が根拠となっています)の基準を明記しており、生徒指導の学習指導要領版としてまとめています。

 内容の特徴として、生徒指導は学校だけの取組とせず、家庭・学校・地域社会が、互いにできること・できないことを補いながら子どもの成長を支えていくために「チーム学校」として学校外の専門家や地域の大人とも協力して取り組む必要があるとしています。

 さらに読み進めると、対児童生徒ばかりではなく、理不尽な校則や教職員の不適切な指導の改善を学校全体で進めることの重要性が随所に読み取ることができます(第Ⅰ部「生徒指導の基本的進め方」は2、3号、第Ⅱ部「個別の課題に対する生徒指導」は4号に掲載予定)。

 生徒指導提要は平成22年3月に作成され、以来12年ぶりの改訂となりました。その背景には、いじめの重大事態や暴力行為の発生件数、不登校児童生徒数、児童生徒の自殺者数の増加傾向、さらに児童相談所における児童虐待相談対応件数も増加するなど、青少年を取り巻く問題が深刻化していることにあります。

 今回の改訂では「いじめ防止対策推進法」のいじめの定義である「他の児童生徒が行う心理的または物理的な影響を与える行為」、さらに「対象生徒が心身の苦痛を感じているもの」(平成25年公布・施行、29年改訂)、また「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」による国や地方公共団体の責務、財政上の措置、基本方針等が示されたことによる不登校児童生徒等に対する教育機会の確保(28年公布・施行)などが反映された内容となっており、今日的な課題を踏まえ、教育現場で活用しやすいよう生徒指導の概念・取組の方向性等を項目別に再整理した内容となっています。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

◆「教職員の協力を高める学校づくり」新章突入

 本紙連載中の「教職員の協力を高める学校づくり」は、きょう14日付から新たな章に入ります。テーマは「生徒指導提要の改訂を読む」。生徒指導に関する学校および教職員向けの基本書として平成22年に初めて作成されて以来、今日的な課題に対応していくため昨年末、12年ぶりに改訂となりました。

 290ページにも及ぶ膨大な資料のポイントについて、チーム学校で臨む指導改善には児童生徒理解が大前提となること、「自ら守ろうとする校則か」などと問いかけながら子ども第一主義の学校であるために「改善させる」から「育む」へと転換することの意義、個別の重要課題やその状況に応じた関わりなどをキーワードに分かりやすく解説します。

 執筆は北海道文教大学人間科学部健康栄養学科の石垣則昭教授。

 本シリーズは連載6回を予定しています。

(教職員の協力を高める学校づくり 2023-07-14付)

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