教職員の協力を高める学校づくり〈№112〉 学校・教職員が変わるとは 学校のリーガルリスクマネジメント①(教職員の協力を高める学校づくり 2023-04-14付)
新年度がスタートし、何かと忙しい毎日をお過ごしのことと存じます。
「教職員の協力を高める学校づくり」57号から66号では、保護者との信頼関係を築く関わりと題して記述し、同様にスクールロイヤー制度の制定による活用に関する問いによって84号から88号で生徒指導再考シリーズを執筆し、現在、皆さまから多くの個別の相談や研修会の依頼を受けています。
新シリーズの中心話題は「学校のリーガルリスクマネジメント」。
学校事故の回避、特異性のある保護者による学校に対する利益の強要、教師の人格を傷付けるような暴言、また著しい人権侵害を含め刑法に触れるような保護者への対応、いじめ問題を含めた裁判の判例について記述します。
冒頭に当たり読者の皆さまに申し上げたいことは、「学校の毅然たる態度」とは、法令によって対応し対処することです。
ご存じのようにスクールロイヤー制度は児童生徒の安全・安心のため、学校の講じた対応が法令にのっとり遂行されているかどうかを相談し、必要に応じて助言をいただく極めて貴重な制度です。
当然ながらスクールロイヤー制度施行以前においても、学校リーダーは危機管理のアンテナを高くし、学校安全、さらには保護者対応についての基礎的な法知識を日頃から教職員に伝え、子どもを不幸にしないための教育活動を進めることが重要とされてきました。
高崎市教委教育長であり高崎経済大学講師の飯野眞幸氏は独立行政法人教職員支援機構の講演(校内研修シリーズ44号)で、リスクマネジメントにおける学校について弁護士の言葉を引用し「学校(教員)の常識は世間の非常識」「教訓を学ぼうとしない学校(教員)は隙だらけ」と述べています。
またこの言葉は、学校は単に法令を学び、防御する手段として「問題によって生じたダメージを最小限に押さえる」のではなく「日常から学校の組織として危機感を共有し、問題発生を未然に防ぐ」ことであると解釈できます。
学校は危機の連続の中にありますが、教職員は毎日の教育活動に慣れが生じ、危機意識が弱化する傾向が見られるとマスコミを中心に指摘されています。
昨年連載したマルトリートメントによる児童生徒に対する不適切であり、人権を侵害するような言動はないでしょうか。生徒指導は人格の形成を手助けする活動と言えども、学校の対面や秩序を重んじるあまり、特定の教職員による児童生徒への威圧的行為、また児童生徒への支配と非支配の関係に陥ってはいないでしょうか。
さらにそのような教職員の存在を知りつつも、学校リーダーはその行為を黙認してはいないでしょうか。社会に適合しない理不尽とも言える校則により、生徒を圧していないでしょうか。
アルフレッド・アドラー『人生に革命が起きる100の言葉』(小倉広著、ダイヤモンド社)に「健全な人は相手を変えようとせず自分が変わる。不健全な人は相手を操作し変えようとする」と書き記しています。
教育は教師自身が社会状況の変化や児童生徒が目指すべき未来像に向け研鑚し、教育理論や教育方法を学び続けていかなければなりません。
また学習指導要領の解説では、これからの社会と教員に求められる資質・能力について「教員には、不断に最新の専門的知識や指導技術等を身に付けていくことが重要となっており“学びの精神”がこれまで以上に強く求められている」(文部科学省「これからの社会と教員に求められる資質能力」から)と各校で作成する教育課程の編成基準の中心課題としています。
自分の教育の方法は今も昔も正しい。変わるのは児童生徒であるという教師の姿勢を変えない限り、国民が期待する未来を担うべき児童生徒の育成は遠ざかります。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
◆本紙連載中の「教職員の協力を高める学校づくり」は、きょう14日付から新たな章に入ります。テーマは「学校のリーガルリスクマネジメント」。学校現場における保護者対応で、感情の起伏が激しく否定的観念によって一方的に教職員を非難、中傷する保護者の存在が問題となっています。学校として毅然たる態度でこれらに当たるには、法令を背景とした対応が今強く求められています。
新章では事案に対する事実関係の確認はもとより、客観的かつ具体的な報告書等の作成、果たすべき安全配慮義務と注意義務、保護者対応への臨み方などをキーワードに、できる限り多くの事例や判例を示しながら分かりやすく解説します。
執筆は北海道文教大学人間科学部健康栄養学科の石垣則昭教授。
本シリーズは連載6回を予定しています。
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-04-14付)
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