教職員の協力を高める学校づくり〈№106〉 学校におけるいじめの現状 いじめ問題再考① きょう19日付から計6回(教職員の協力を高める学校づくり 2023-01-19付)
本紙連載中の「教職員の協力を高める学校づくり」は、きょう19日付から新たな章に入ります。テーマは「いじめ問題再考」。学校におけるいじめが原因と疑われる重大事案が、依然として全国的に多発傾向にあります。全ての子どもたちが“自分が必要とされる”存在であると感じ、互いを認め合い、支え合うことができる取組のさらなる推進が早急に求められています。
複雑化する状況下において新章では、あらためていじめへの対応はどうあるべきかについて、学校におけるいじめの現状や基本的な対応手順、いじめのない集団づくり、子に寄り添う教師と学校などをキーワードに分かりやすく解説します。
執筆は北海道文教大学人間科学部健康栄養学科の石垣則昭教授。本シリーズは連載6回を予定しています。
道教委「いじめ問題への対応状況の調査」結果から考察します。調査期間は3年4~11月。対象は札幌市を除く道内全小学校787校(義務教育学校前期課程を含む)、中学校474校(義務教育学校後期課程および登別明日中等教育学校前期課程を含む)、高校247校(全・定・登別明日中等教育学校後期課程を含む、通信制を除く)、特別支援学校67校。
4年3月発表によると、小学校でいじめを認知(注釈)した件数は1万169件、解消件数は4987件、解消に向けて取り組んでいる件数は5182件、中学校でいじめを認知した件数は2074件、解消件数は1054件、解消に向けて取り組んでいる件数は1020件、高校でいじめを認知した件数は548件、解消件数は274件、解消に向けて取り組んでいる件数は274件、特別支援学校でいじめを認知した件数は76件、解消件数は33件、解消に向けて取り組んでいる件数は43件となっています。
校種別に解消件数と解消に向けて取り組んでいる件数を比較すると、各校種とも約半数が解消に向けて取り組んでいることになります。
また、この状況は解消に向けての対応が長期化していることが見て取れ、被害に遭った児童生徒の保護者ばかりではなく、加害者の保護者の感情的発露やいじめに関わった児童生徒の見解の相違など、学校が丁寧に聞き取り、誠意ある対応を図ろうとしても解消や解決に向けて時間を要し、対応に苦慮している様子もうかがうことができます。
ことにいじめ問題は、女子の児童生徒に多く散見される凝集性の高いグループ化によって、いじめる、いじめられる関係の逆転が見られるなど、関係性の複雑化が見られます(参考文献『集団と群衆の心理学』萩原直樹著、有斐閣)。
近年の児童生徒の関係性の特徴として自分たちのグループには関心を示すが、グループ外のことには関心を示さない「マリモ化」が見られ、いじめの傍観者や観衆を増大させる結果となっているとも言われています。
さらに、いじめ問題そのものが教師の仲介によって解決したように見えていても、その後の関係が気まずくなり、いじめられた児童生徒が孤立するなどの不安要素も見られ、わが子を絶対視する保護者は、たとえ子どもがいじめの加害者であっても事実関係への理解を示さず、学校への不信感を募らせ、学校や被害者の保護者を攻撃するなどの事例も見られます。
このような状況下において、あらためていじめの対応はどうあるべきかをシリーズで記述します。
注釈 いじめの認知
①自分がいじめられていると思っている
②いじめをする方もいじめていると思っている
③いじめだと思っていなくても、嫌なことをされた
④いじめだと思っていなくても、嫌なことを言われた
⑤クラスで嫌な思いをした―いじめの認知件数とは、“深刻ないじめ”だけではなく“相手が嫌な思いをしたらそれもいじめ”を含める
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-01-19付)
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