教職員の協力を高める学校づくり〈№109〉 いじめのない集団づくり いじめ問題再考④(教職員の協力を高める学校づくり 2023-02-24付)
今号では、いじめのない集団づくりについて説明します。
加害者や観衆を含め、いじめに関わる児童生徒の心理課題は、正しい集団生活など社会性が未熟であり、いじめられている児童生徒のつらい心情に共感できないことが多く見られます。
また、傍観者のようにいじめを見て見ぬふりをする児童生徒は、いじめをしてはならない概念を持っていますが、いじめをしてはならないという内面化(その社会が有する価値と規範を自分の価値と規範として受け入れること)が不十分と言えます。
いじめのない集団づくりのためには、形式的にいじめをしてはならないと説明するばかりではなく、いじめはしてはならないという意識をいかに形成するかが重要です。
意識の内面化は「いじめは絶対に駄目」という児童生徒の主体的な意識を高めることですが、それは短時間で形成されるものではありません。
また、活動の意味を理解させず活動するだけでは、期待される成果は望めません。
ある学校では、ピア・サポートを全校で取り組んでいましたが、残念なことに楽しいエクササイズ(活動)に終始し、その意味が児童生徒に理解されていませんでした。内面化のためには、活動の意味を十分に理解させ、意識化を図らせながら活動を進めることです。
つぎに、生徒指導の機能(自己指導能力を育成するため①自己決定の場を与える②自己存在感を与える③共感的人間関係を育成する)を生かした授業づくり、特活領域である学級会活動や学校行事、生徒会活動、さらに道徳の時間、朝や帰りの短学活などでの多面的な指導と、主体化を図る働きかけが必要であると理解できます。
また内面化のため、基本は教師がいじめについて日常から注視し、早期発見、早期指導を意識することが極めて大切となります。
さらに、学級などの集団心理(群衆心理)ついて説明します。児童生徒にとってどこかの集団に所属して安心感を得ることは、メンタルを良好な状態に保つためには効果があります。しかし、集団になると一人では行わないような行為に及ぶことがあります。
加害者である児童生徒は「そのようなつもりはなかった」「〇〇君もそうしたので…」など、自己を正当化します。つまり、集団になってしまうと悪いことだと分かっていてもつい調子に乗り、責任感や罪悪感が薄れ、人を傷付けることに抵抗を感じにくくなる傾向があります。
凝集性の高いグループ集団の特徴として、学校生活の中でグループのメンバー以外とは親しく話をしない、他の人を非難中傷することが中心話題になるなど、グループ外の児童生徒を排除する傾向が見られ、グループ内でのいじめやグループ同士の対立になる場合も見られます(参考文献『集団と群衆の心理学』萩原直樹著、有斐閣)。
教師はグループ内の仲が良いことを否定するのではなく、仲が良いことの意味を児童生徒に説明し、理解させる必要があります。
また、誰とでも協力して高め合う学級づくりの例として、生活班づくりを挙げると「仲の良い人で生活班をつくる」のではなく「1年間を通じて普段話をしない人など、誰とでも親しくなれるよう、みんなが仲の良い学級をつくりたいと思います」「普段仲の良い人以外の人とグループになってください」「人数は男子〇人、女子〇人です」「戸惑っている人がいたら、声かけしてください」などと事前説明し、グループづくりをさせてはどうでしょうか。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-02-24付)
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