教職員の協力を高める学校づくり〈№113〉 学校のリーガルリスクマネジメント② 保護者の“不安”を解消する(教職員の協力を高める学校づくり 2023-04-27付)
保護者対応の相談で最も多いのが、感情の起伏が激しく否定的観念によって一方的に教職員を非難、中傷する保護者の存在です。
当然ながら保護者の感情に呼応し教職員自ら感情的になるのは問題外ですが、感情的になる保護者の心理として言えることは「不安」がそうさせていると考えるのが妥当です。
また感情的な発露は、聴く側である学校(教職員)の立ち位置を取ることができず、一方的にまくし立て自分の感情をさらにヒートアップさせてしまうこともあります。
心理学的解釈をするならば、相手、つまり学校や教職員の価値を認めようとすることができない状況に陥っていると解釈できます。この場合、ただ保護者の感情を受け止めるだけでは、聴く側である教職員のメンタルヘルスを損ねる恐れがあり、正しい傾聴とは言えません。
そこで「〇〇さんの発言は私も悲しく感じます」「〇〇さんの発言に私は心が痛みます」と自分自身の不安な感情を相手に伝え向き合うようにしてください。つまり、自分の感情を適切な言葉で保護者へ伝えることは、教職員の側に立つことを気付かせ、保護者の態度を諭す意味が込められています。
つぎに保護者の不安を解消するため①いつの出来事で②どのようなことについて③どう感じて④今どのようなことが不安なのか。さらに⑤保護者として何を願うのか―について発言を整理しながら聞き取ることです。
出来事の感じ方は、性格や感性の違いや日によって変化します。またどう話を聞いても事実とは思われない主張を繰り返す方もいます。
さらに保護者によっては「改善」よりも「感情や本能」を優先させ合理的な行動を取れなくなる「バイアス」(傾向・偏向・先入観といった思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因や得られる情報が偏っていることによる認識のゆがみ)となり、言わば白黒理論(選択の限定あるいは誤ったジレンマであり非論理的で、実際には他にも選択肢があるのに、2つの選択肢だけしか考慮しない状況)に陥る方もいます。
この場合、保護者の不安な感情を受け止め整理しながら、事実関係をつぎのようなポジショニング・ペーパーを作成し、その内容に従い説明することです(公文書扱いとして、保護者に請求されても渡さないでください)。
残念ながら学校で作成する学校事故の報告書は具体性がなく、保護者や行政関係部署への理解にかなわない弁明や弁解が随所に記述され、抽象的で具体性に欠ける報告書を散見します。
つぎの事例を参考にしてただければ幸いです。
▽散見する不十分な作成例
3月12日(金)の5時間目の授業中、他の児童への暴言や蹴るなどの行為があり静止させようとしたが教師への暴言もあり、他の児童への被害を避けるため、やむを得ず机に押し付け頭を平手で殴打した。
▽正しい作成例
令和4年3月12日金曜日の5時間目(13時10分から13時22分)〇〇小学校の右手2階階段より2番目の4年〇組の教室の後方入口より、2列目の前列3番目の児童Aが13時20分経過時に、同列4番目に座席している児童Bへ、左足先により下腿部1回、上腿部1回を蹴った。児童Aの暴行を発見したC教諭は、13時21分に暴行を静止させるため、児童Aを両手で拘束したが「うるせい」との発言があり、左手にて頭部1回、頸部1回殴打した。その後、直ちに児童Aの保護者へ連絡し謝罪するとともに、被害児童の保護者へ連絡し―と以降の対応を説明した(事故発生現場の写真を場合によって添付による)。
不十分な作成例では「やむを得ず」など主観的な記述がされていますが、事実関係を記載する報告書にはその必要はなく、事情を聴取された際に説明する内容です。
また報告を求められない事例であっても、面倒がらずに、正しい作成例にあるようなペーパーを作成、保管し以降の教育活動に教訓として活用します。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-04-27付)
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