教職員の協力を高める学校づくり〈№110〉 いじめ問題再考⑤ 子に寄り添う教師と学校
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-03-13付)

 今号では、いじめに対応する教師について記述します。

 いじめは児童生徒の問題と解釈できますが、子どもたちを取り巻く親や教師の姿勢が重視されます。それは単に厳しい、優しいなどの二極論ではなく、子どもの側に立ち、寄り添うことができる大人としての姿勢であり、児童生徒に安心感を付与することです。

 教職の皆さんのいじめへの取組や呼びかけについて、児童生徒はどのような印象を持ち、どう感じているのでしょうか。例えば「担任の先生は日ごろからいじめのない協力し合う学級づくりのため必要な話をしてくれる」、また「みんなの相談を受け止め、親身になって指導・対応してくれる」などの印象を持っているでしょうか。

 「学級担任としていじめだけを取り組んでいるのではない」との意見があるかも知れませんが、いじめは許されない行為であり、子どもたちと共にいじめ、からかい、無視などが起こらない学級を築くこと自体が望ましい学級集団づくりであり、子どもたちの健全な発達を促す機会であると言えます。

 つぎに、児童生徒と接する教師の姿勢について。

①相談しやすい教師の姿勢

 子どもたちの心配な様子を一方的に「〇〇君は友達がいないから」「〇〇さんはいつも元気がないから」など子どもの様子に疑問を持つことなく決め付けていると、子どもたちの変化を読み取ることができません。また「たいしたことはないだろう」「大丈夫だろう」などの安易さや、厳しさが必要とばかり、子どもたちへの理解はさておき叱り、威圧するような態度では、子どもたちは心を開き相談することができません。

 特に、子どもたちを受け入れる意識が不足している場合は「〇〇先生に怒られないようにするために」という意識が先行し、教師の見えないところで再びいじめを繰り返した事例もあります。子どもたちの話を聞き「納得」できるように指導するとともに、「いつでも話を聞くよ」という相談しやすい教師の姿勢が望まれます。

②学校体制を見直し、問題を抱え込まない

 いじめの重大案件を探ると、必ずと言って良いほど学校の体制がどうであったのかが話題となります。いわばヒューマンエラー(人間が原因となって起こる失敗や過誤)の問題です。ヒューマンエラー(参考文献『ヒューマンエラーの心理学』一川誠著、筑摩書房)には、事実を正しく認識できないために起こる状況認識の問題、誤った認識で誤判断をする場合、認識は正しいが経験や能力不足によって誤判断する場合、さらに誤った判断で誤行動・誤操作する場合などがあります。

 いじめ問題で例えると、ヒューマンエラーが起きやすい職場には、いじめ問題に関わる報告・連絡・相談などのマニュアルの整備や、整備されたとしても活用されていない、または校内的なルールが明確ではないなどが挙げられます。

 また、担任や部活動の顧問は、自分の学級や部活動で起きたいじめの対応に冷静さを欠き、感情的な対処に向かうこともあり、保護者から問題とされる場合もあります。さらに児童生徒にとって適切な対応を図るためには、問題を抱え込み、一人で解決しようとしないことです。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2023-03-13付)

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