釧路市 5年度教育行政方針 学力向上など施策推進 小中ジョイントPJ基軸に(市町村 2023-04-07付)
岡部義孝教育長
【釧路発】釧路市教委の岡部義孝教育長は、5年度教育行政方針において、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を目指し、義務教育段階9年間の連続性と系統性を意識した取組「小・中ジョイントプロジェクト」を基軸に据え、学力向上や不登校への対応、特別支援教育の充実等に向けて計画的に施策を進めていくとした。このほか、学校教育と生涯学習双方における今後5年間の施策推進の指針となる「釧路市教育推進基本計画」と「釧路市社会教育推進計画」を始動する。
教育行政方針の概要はつぎのとおり。
【生きる力を育む学校教育の推進】
▼確かな学力の確立
先行き不透明な未来社会を生きる子どもたちに必要な「生きる力」を育む上で義務教育段階9年間を見通した基礎学力の確実な定着を欠くことができない要素の一つとして位置付け、このため、小・中学校それぞれの教職員が目指すべき子どもの姿を共有。戦略的に連携・協働を図るべく、4年度から着手した「小・中ジョイントプロジェクト」による小中連携の取組を、より強力に推進していく。
子どもたちの学力向上に向けては、教員全体の授業力向上が不可欠であり、授業マイスターによる授業公開や動画配信等の内容充実を通して「主体的・対話的で深い学び」の視点に即した授業改善を促すとともに、小・中学校の教員が相互に乗り入れを行う「ジョイント授業」を定期的・継続的に実施。学びの連続性を踏まえた授業力向上に努めていく。また、教育研究センターの研修講座を活用し、校内研修の見直しを進めるとともに、中学校区を対象に小中連携による授業実践をテーマとした公開研究会を新たに設けるなどその質的向上を図っていく。
このほか、様々な施策を通して交流を続けている秋田県大館市から授業マイスターとして認定されている教員を招聘。授業公開や講義等を行うことによって、教員個々の意識改革につなげていく。
特別支援教育については、個別の教育的ニーズのある子どもたちに対し、自立と社会参加を見据えた合理的配慮に基づく学びの保障を進めていくこととした上で、全ての教職員が医療的ケア児も含めた個々の特性を理解し、それぞれに応じた適切な支援が図られるよう、新たに配置する2人の「特別支援教育授業力向上指導員」を各校に派遣。初任段階教員の実践的指導力の向上を中心に、教職員全体の資質向上につなげていく。
▼豊かな心の育成
自己有用感や自己肯定感の体得につなげるために、各学校において朝読書をはじめとする読書活動の充実に向けた取組を引き続き進めていく。このほか、子どもたち自身がタブレット端末活用に係るメリットとデメリットの双方を理解した上で、安全かつ有効に活用できるよう情報モラルや情報リテラシー等の醸成を図る。
不登校への対応については、各校において「不登校対応コーディネーター」を選任する中で、リーフレットを活用した教員研修を継続的に実施。また、従来の適応指導教室を再編するとともに、新たに西部地区に分室を設置するなど支援の充実を図っていく。加えて、特別な教育課程を編成し柔軟な指導や支援が可能となる不登校特例校について、国の調査研究の動向等を注視するとともに、公立夜間中学の設置については、多様で適切な教育機会の確保の観点から引き続き検討を進めていく。
▼健やかな体の育成
各学校においては、体力向上計画に基づき授業や体育的行事等において発達段階に応じた適切な運動機会の確保に努めるとともに、運動の楽しさや喜びを実感し進んで運動に親しむことができるよう、家庭や地域と連携した特色ある「1校1運動」の充実に努めていく。
また、7年4月の供用開始を目指している新給食センターについては、安全で安心な学校給食提供の基盤となるよう建設工事に着手していく。
【育ちと学びを支える教育環境の充実】
▼充実した学びを支える教育環境の整備
「釧路市がめざす学校のすがた基本計画」の策定を踏まえ、施設整備の優先度等を見直すとともに、個別の改修工事として、5校のトイレ洋式化を進めるほか、防火設備更新や遊具整備等を行っていく。
このほか、高校を選択する上で通学費用を理由に進学の選択肢を狭めることがないよう、遠距離通学を行う高校生に対する通学費助成制度を新設する。
▼信頼に応える学校づくりの推進
「釧路市がめざす学校のすがた基本計画」に基づき、小中連携の効果が最大限に発揮されるよう、6年度に同一の小学校卒業生は基本的に同一の中学校に進学する校区の見直しを実施すべく、準備を進めていく。また、8年度の「仮称・大楽毛義務教育学校」「仮称・音別義務教育学校」の開校に向け、学校や保護者、地域の方々からな開校準備協議会をそれぞれに設置。説明会開催を通して、小中一貫教育や義務教育学校に対する市民周知に引き続き取り組んでいく。
教職員の働き方改革については、学校ごとに、その中核となる「コアチーム」を設置。より実効性の高い取組の推進を図るとともに、新たに導入する統合型校務支援システムを活用し、児童生徒の出欠管理や通知表・指導要録の作成等、校務の効率化を計画的に進めていく。
釧路北陽高校においては、国際的な視野を有する人材を育成する観点から、ALTの活用や英語資格試験への助成を通して、英語によるコミュニケーション能力の育成を積極的に図るとともに、コロナ禍にあって見送らざるを得なかった台湾への見学旅行を実施し、現地校との生徒同士の交流を中心に文化や価値観の違いを肌で感じる機会として、国際理解教育の推進につなげていく。
▼健康な育ちを支える連携・協働の強化
新たに小学校3校、中学校1校でコミュニティ・スクールを導入。学校運営に保護者や地域の声を積極的に生かした学校づくりをより一層推進するとともに、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部事業の双方が、学校運営を支える両輪として機能するよう体制の充実を図る。
中学校における部活動の地域移行については、スポーツ系・文化系それぞれの関係団体に対し、休日の部活動受け入れに対する考え方や指導者の状況を調査するとともに、各学校において、教員による継続指導の意向を含めた外部指導へのニーズの確認を行うなど作業を進めていく。
【人づくり・地域づくりに向けて】
▼主体的な学びの推進
デジタル技術の高度化や環境問題等リアルタイムな課題にも対応した学びを推進するとともに、自治体の刊行物として高い評価を誇る釧路叢書(そうしょ)・釧路新書を活用し、地域の歴史や文化、産業、自然等をテーマとした講座を開設するなど、地域を知り、地域を学ぶ機会の充実を図っていく。
また、安全・安心かつ快適な施設環境の中での活動が可能となるよう生涯学習施設の機能維持・向上に努めるとともに、オンラインを活用した文化交流や施設利用のキャッシュレス化に取り組み、利用者の利便性向上を推進する。さらに、生涯にわたる学びを根底から支える読書活動を推進すべく、中央図書館では「読書週間」に合わせた啓発イベントを実施するとともに、学校ブックフェスティバルでは、本の魅力を紹介し合う「ビブリオバトル」を導入。その内容充実に努めるなど、これまでの学校や家庭と連携した読書活動の取組をさらに強化していく。
▼自然との共生と文化芸術の振興
5年度が、ラムサール条約第5回締約国会議の釧路市開催から30年の節目を迎えることから、博物館では共同研究を行っている九州大学との共催によるシンポジウムの開催等を通して、釧路湿原の意義と役割を広く市民に発信し、動植物への理解と知識を深める取組を進めていく。
釧路市文化団体連絡協議会との連携によって、児童生徒に郷土の文化芸術を伝承する小・中学校文化芸術活動支援事業を継続するほか、市民が身近に文化芸術に触れる機会として、70年超の歴史を誇る釧路市芸術祭の開催を支援する。また、友好都市出水市との文化交流事業については、出水市の文化団体を迎えた郷土芸能発表会を6年ぶりに開催。相互の交流を深めるとともに、文化芸術活動への市民の関心を高める機運を醸成していく。
▼健康な心と体を育むスポーツの推進
指導者不足という課題解消を図るべく、総合型地域スポーツクラブの設立支援に取り組んでいく。
また、スポーツ施設の環境整備として釧路市陸上競技場の写真判定装置を更新するとともに、湿原の風アリーナ釧路をはじめ各施設へのキャッシュレス端末機の導入を進め、さらなる利用者の利便性向上を図る。
(市町村 2023-04-07付)
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