胆振管内5年度教育推進の重点 子の可能性引き出す学校 オール胆振で組織的に取組
(道・道教委 2023-04-20付)

胆振局管内校長会議
胆振局管内校長会議

 【室蘭発】胆振教育局の針ヶ谷一義局長は12日、管内小・中・義務教育学校長会議で5年度管内教育推進の重点を説明した。推進テーマは「子どもの可能性を最大限に引き出す学校づくり~“学び”のつながりを支える学校経営」。重点では「学力・体力の向上」など6点を設定した。学校を巡る厳しい状況が続く中でも、効果的な取組を「オール胆振」の旗のもと、組織的に進め、管内教育の一層の充実に努めていく。

教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 本年度の推進テーマは前年度の「子どもが真ん中の学校づくり」から「子どもの可能性を 最大限に引き出す学校づくり」と変更した。新型コロナウイルス感染症の拡大や気候変動、ICTの急速な進展など、社会情勢の変化の激しい時代において、また未来の予測不可能な危機の時代を迎えたとしても、子どもたちが夢や希望を持ち、様々な困難に向き合い、多様な人々と協働しながら、共に課題を乗り越えていこうとする、持続可能な社会の創り手となることが期待される。

 そのためには、子ども一人ひとりが自分のよさや可能性を認識するとともに、自ら主体的に目標を設定し、振り返りながら、責任ある行動が取れる力を身に付けられるよう、様々な特性を持つ子どもが存在することを踏まえ、子どもの発達や学習を取り巻く個別の教育的ニーズを把握し、一人ひとりの可能性を伸ばし、発揮させていくことが求められることから、テーマを「子どもの可能性を最大限に引き出す学校づくり」とした。

 また、子どもたちの学びは、今だけで完結するものではなく、これまでとも、これからとも続き、広がっていくものであり、学校の一単位時間、教科、学年、学校間、授業と授業外、学校と家庭での「学び」を途切れることなく、つなげていくことが欠かせないことから、副題を前年度の「組織的で活力ある学校経営」から「“学び”のつながりを支える学校経営」とした。

 重点は前年度に引き続き6つとし、各重点には2つの「柱」と達成に向けた「具体の取組」を示している。

【重点1 学力・体力の向上】

 1つ目の「柱」は、これまで各市町・学校が行ってきた、学力・体力の向上に向けた授業改善などの取組の成果は着実に表れてきているが、さらに組織的な取組を徹底・継続していくことが必要。また、各学校の取組が学校間で十分に共有されていないという実態が各種調査結果から見えている。各学校における「身に付けさせたい資質・能力」やそれらを「身に付ける、活用させる、発揮させる取組」などについて学校間で共有を図り、校種を越えて子どもの「学び」のつながりを支えていくことが必要と考え、「学力、体力・運動能力向上に向けた各学校の組織的な取組の徹底及び学校間の連携強化」とした。

 2つ目の「柱」は、各学校で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた組織的な授業改善が進められているところだが、「身に付けさせたい資質・能力」が意識されていない、「身に付けた資質・能力」を活用・発揮することにつながっていない状況も見られることから、学校で目指す資質・能力をどう育成し、どう活用・発揮させていくか、教育活動全体で検討・実践していくことが必要と考え、「資質・能力の育成に資する主体的・対話的で深い学びの視点による教育活動の工夫改善」とした。

 「具体の取組」では、授業で育成した資質・能力を子どもたちが授業外でも活用・発揮・伸長していくことができる学びを工夫すること、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援を組織的・継続的に行うこと、ICTを効果的に活用して学校と学校外での学びにつながりを持たせること、組織的・系統的・発展的な指導が可能な教育課程によって情報活用能力を育成すること、新体力テストの実施・検証による体力向上に向けた授業改善や運動の日常化を進めることを目指す。

【重点2 豊かな心の育成】

 1つ目の「柱」は、これまで各市町・学校では、全教職員でいじめの未然防止、早期発見・早期対応とともに、いじめの定義に沿って積極的な認知を行うよう努めているところ。だが、今なお、いじめアンケート等で「嫌な思いをしたことがある」との回答が相当数あっても、認知件数が「0」、「極端に少ない」学校が複数あり、いじめが見逃されているのではないかと懸念される状況が見られる。また、当初、いじめと認知せずに組織的・継続的な対応をされなかったものが、いわゆる「重大事態」に至っている事案も複数起こっていることから、あらためて法にのっとった対応を全ての学校で再確認して進めていくことが必要と考え「全ての教育活動を通して取り組むいじめ防止に向けた取組の促進」とした。

 2つ目の「柱」は、各市町・学校では、不登校児童生徒に関する関係機関等との連携やICTを活用した「学びの保障」などの相談・指導・支援の取組が進められているところだが、不登校児童生徒数が増加傾向にあることから、全ての子どもにとって安心感と充実感が得られる魅力ある学校づくりの推進と不登校児童生徒へのさらなる支援の充実を図ることが必要と考え、「不登校に関する基本方針を踏まえた不登校児童生徒への支援の充実」とした。

 「具体の取組」では、改訂された「生徒指導提要」を踏まえた組織的・計画的な課題の未然防止の教育、各種ツールを活用した課題の予兆・初期段階および深刻な課題への切れ目のない指導・援助を行うこと、全教職員がいじめについて正しく理解し、いじめの未然防止・早期発見・適切かつ迅速な対処を行うこと、子どもたち自らが社会的に自立する方向を目指せる支援を充実すること、子どもの心に寄り添いその命を守りきる指導と支援を行うことを目指す。

【重点3 生活習慣の確立】

 前年度の「生活習慣の改善」から、子どもたちがこれまでの自分の生活・学習の取組や姿勢を振り返り、今後必要となる、望ましい習慣を自ら考え、身に付けるための取組を進めていくことをより重視し、「改善」から「確立」に変更した。

 1つ目の「柱」は、これまで各市町・学校・家庭において、子どもたちの望ましい生活習慣の定着に向けた各種の取組が進められているが、全国学力・学習状況調査などの各種調査結果から、テレビ視聴やテレビゲームに関わる時間は下位層になるにつれて多くなる傾向が見られるなど、生活習慣と学力や学習意欲には一定の相関関係が見られる。子どもたちの主体的に学ぶ力を高めるためにも、子どもたちが自らにとって必要な、望ましい生活習慣を考え、身に付けていく取組とともに、学校における取組だけではなく家庭も巻き込んだ取組が必要と考え、「家庭と連携した生活習慣の確立に向けた取組の推進」とした。

 2つ目の「柱」は、長引くコロナ禍において、学校におけるICT活用の急速な進展とともに、家庭における電子メディアの活用頻度も高くなっており、今後も一層の活用が見込まれることから、学校・家庭における情報モラルの指導において、子どもたちが電子メディアの望ましい利活用についての理解を深め、適切に活用していくことができるようにすることが必要と考え、「望ましい電子メディアの利活用に向けた啓発活動の推進」とした。

 「具体の取組」では、子どもたちが電子メディアを学習で利用するのか、趣味・娯楽で利用するのかなど、使用目的を考え適切に利活用していくこと、家庭での学習習慣や生活リズムを見直し、より良い習慣を身に付けていくこと、それらの取組を家庭やPTAと連携して組織的に進めていくことを目指す。

【重点4 地域との連携・協働】

 1つ目の「柱」は、これまで各市町・学校において、いぶり五大遺産などの地域素材を活用したふるさと教育の取組を展開していただき、それらの実践事例・資料も提供いただいており、その中の振興局と連携した取組では、壮瞥町・壮瞥中学校に協力をいただき、岩手県の釜石中学校の修学旅行での現地ガイドの他、事前・事後のオンライン交流を実施し、互いの「防災」についての考え方・取組を理解し合い、意識を高めていく生徒の姿が見られた。

 また、高校における探究活動の成果の発表・交流会を実施し、地域の課題を自分事として捉え、解決に向けて考えた取組を自ら行動・実践していく生徒の姿が報告された。今後も、こうした取組を含めた管内の様々な取組を一層充実していくとともに、それらを広く発信し、共有・活用していくことで、さらに効果を高めていくことが必要と考え、「いぶり五大遺産などの地域素材を活用し“地学協働”の推進及び情報発信」とした。

 2つ目の「柱」は、各市町・学校で取り組んでいる「ふるさと教育」の学習を、ふるさと・地元の「地域理解」だけで終えるのではなく、子どもたちが将来、ふるさとや自分が住んでいる町をより良くしていこうとする思いを持って行動していく「ふるさと(地域)」を担う人材として成長していくためには、より多くの町のふるさと・地域の良さ・魅力を知り、ふるさと・地域を支えている人々の思いや願いに触れることのできる機会、そして触れ合いを通して感じたことや考えたことを発信・交流・行動できる機会を提供していくことが必要と考え、「まちづくりにかかわる人材を育てるふるさと教育の推進」とした。

 「具体の取組」では、学校や地域の取組を理解し合う場、地域と学校をつなぐ役割となるコミュニティ・スクールや地学協働推進体制を確立すること、各市町の地域人材や文化財などを活用した「○○学」等のふるさと教育を一層充実するとともに学習成果を継続的に発信していくこと、学校・地域のために、力を合わせ、支え合う地域住民との触れ合いの機会を充実していくことを目指す。

【重点5 教員の人材育成】

 1つ目の「柱」は、学校における課題が複雑化・多様化する中で、活力ある学校づくりを推進するには、教員一人ひとりの果たす役割が大きくなっているものの、今後、経験豊富なベテラン教員の大量退職期を迎え、教員採用選考検査の低倍率傾向が継続している状況で、これまで教員が体得・蓄積してきた知識や技能が若い教員に受け継がれることが困難となることが予想される。

 また、管内では、改善傾向にはあるものの、教頭受検者の不足や女性管理職の割合が低いなどの課題も生じていることから、子どもたちに質の高い教育を継続的に提供できるよう教員育成を進めていくことが必要と考え、「学校の総合力を高めるための中・長期的かつ計画的な人材育成」とした。

 2つ目の「柱」は、各市町・学校では、これまでも教員育成指標に基づいた教員育成の取組を進めてきたところだが、今般改訂された教員育成指標と教員免許制度の発展的解消に伴う新たな研修制度を効果的に活用し、教員個々のライフステージやキャリアプランに応じて、自らの学びを振り返り、必要な資質向上に資する研修の受講を促進していくことが必要と考え、「北海道における教育育成指標を活用した取組の推進」とした。

 「具体の取組」では、ミドルリーダーや若手・女性教員を含めた教員個々の特性を生かしつつ、様々な校務分掌・役割を計画的に経験させる校内人事を工夫すること、面談時における指導助言でOJT(学校内)、OffJT(学校外)、SD(自発的な学習、自主研修)の意図的・計画的な推進を促すこと、子どもの学びのロールモデルとなる教員の個別最適・協働的な学びを促進すること、教育公務員としての自覚を持ち服務規律の徹底を図ることを目指す。

【重点6 働き方改革の推進】

 1つ目の「柱」は、各市町・学校では、これまでの働き方を見直し、効果的な教育活動を行うことができるよう、各種取組を進めており、時間外在校等時間も減少しているが、より教育活動の質を高め、子どもに対して効果的な教育活動を持続的に行っていくためには、今後も一層の継続的・組織的な取組を進めていくことが必要と考え、「教育活動の質を高めるための学校における働き方改革の推進」とした。

 2つ目の「柱」は、これまでの取組により、全ての市町で時間外在校等時間の公表や、全ての学校でコアチームの設置等の取組が実施されているが、働き方改革に係る指標の全ての目標を達成するとともに、取組の実施による業務の改善、効率化と教育活動の質の向上が図られ、さらに今後も持続・継続されていくことが必要と考え、「北海道アクション・プランに基づく学校、市町教委と連携した取組の推進」とした。

 「具体の取組」では、「Road」等を活用して自校に必要な業務改善を焦点化し、計画的・組織的に取組を進めること、ICTの効果的な活用により校務の可視化・効率化を徹底して進めること、会議や学校行事等の目的・ねらいを明確化し、その達成・実現に向け効率的・効果的に進めること、教頭の業務改善を切り口に学校全体の業務・組織の役割・分担の見直しを進めること、本年度から始まる部活動の段階的地域移行に向けた取組を計画的・組織的に進めることを目指す。

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胆振教育局長・針ヶ谷一義
針ヶ谷一義局長
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