後志管内5年度教育推進の重点 一人一人の幸せ実現 子に愛される学校経営進めて
(道・道教委 2023-04-25付)

後志教育局長・新居雅人
新居雅人局長

 【小樽発】後志教育局の新居雅人局長は14日、後志合同庁舎で行われた後志管内公立小・中学校長会議で、5年度管内教育推進の重点を説明した。「子ども一人一人の幸せの実現を目指す後志教育の推進~Shi信頼を基盤に Ri理念を共有 Beベクトルを合わせて Shi質の向上」をテーマに①子ども一人一人の可能性を引き出す教育の推進(成果に結び付ける)②学びの機会を保障し質を高める環境づくり(寄り添う)③持続的で魅力ある教育活動を実現させる環境づくり(保障する)④成長を支える学校間連携と家庭・地域との連携・協働(つながる)―の4点を提示。全ての教育力を結集して、チーム学校として子どもに愛される学校経営を進めるよう要請した。

 教育推進の重点の概要はつぎのとおり。

【はじめに】

 前年度は、管内教育推進の重点として、重視していただきたい11の視点と具体的な方向性を示し、実情を踏まえて戦略的に学校経営を進めるようお願いをし、その結果、確実な進展があったと実感している。

 校長の皆さんには、自校の強みや弱みを見極め、目指す方向性を明確に示した上で、教職員の参画意識を高めながら創意ある学校経営を進めていただいたことに、心から感謝を申し上げる。

 各学校で取り組まれている子どもを中心に据えた教育活動の成果は、すぐに現れるものばかりではなく、中・長期的な視点に立ってじっくり考え継続して取り組んでいく必要があるものもあることから、本年度は、継続性を重視し、テーマは引き続き「子ども一人一人の幸せの実現を目指す後志教育の推進」とした上で、学校の取組状況や先般策定された「新たな北海道教育推進計画」、各種指針等を踏まえ、後志の教育のさらなる前進に向けた視点と取組の方向性を示すこととした。

またテーマの下段には、Shi Ri Be Shiを頭文字に、子ども一人ひとりが夢や希望にあふれ、健やかに成長するために必要な資質・能力を確実に育成するという義務教育の責務を果たすことができるよう、教職員、家庭、地域の方々など、子どもの成長を支える方との(Shi)信頼を基盤に(Ri)理念を共有し(Be)ベクトルを合わせて(Shi)質の向上を常に求め続ける後志の教育であることを願いサブテーマを設定した。

 校長の皆さんには、視点や方向性を参考としながら、これまでの成果への誇りと自信を基盤に自律的な学校経営を進めていただくようお願いする。

【子ども一人一人の可能性を引き出す教育の推進】

 急激に変化する時代の中で、子ども一人ひとりにその状況を前向きに受け止め、自ら豊かな人生を切り拓くための資質・能力を確実に育む必要がある。

 そのため、特に「好循環を創出する検証改善サイクルの充実」「子どもを主語にした授業づくり」「体力向上や健康リテラシーの育成」「特別支援教育の充実」の4つの視点について、キーワードを「成果に結び付ける」として取組の方向性を申し上げる。

▼好循環を創出する検証改善サイクルの充実

 管内においては、校長が示した経営方針や重点の実現に向け、学力向上ロードマップに独自の手法や工夫を加えるなどして、課題分析や解決策の検討をチームで行い、全体で共有・実践するなど、組織的に検証改善サイクルの確立に取り組む学校が増えてきている。今後は、さらに充実・発展させ、教育活動の質の向上へとつなげる好循環を生み出すことが大切。このため―

▽検証改善サイクルの確立により明らかになった効果的な取組の教育課程への位置付け(カリキュラム・マネジメントにつなげる)

▽ミドルリーダーの役割の明確化と全教職員の課題解決への参画意識を高める協働体制組織の整備や柔軟な見直し

 ―などによって、サイクルの連続化に努めていただくようお願いする。

▼子どもを主語にした授業づくり

 管内においては「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が進められている。今後は、さらに、子ども一人ひとりが何を学んだかを自覚し、自分の良さや可能性を認識できたかという視点で、教員自身が授業を見直すことが大切。このため―

▽誰一人取り残すことのない「個別最適な学び」と多様な考え方に触れより良い学びを生み出す「協働的な学び」の一体的な充実

▽授業のねらいを踏まえ、子ども一人一人が学びの成果や過程を振り返り、次の学習への意欲を高める「振り返り」の時間の意図的な設定

▽「時間」「字数」等の条件に応じて書く活動を日常的に行うなど、言語能力を育成する機会の充実と言語環境の整備

 ―などによって、子どもたちに必要な力を確実に育むようお願いする。

▼体力向上や健康リテラシーの育成

 体力は、人間の活動の源であり、意欲や気力など精神面の充実にも大きく関わることから、生涯にわたって心身共に健康な生活を送るための資質・能力である健康リテラシー等を育成する必要がある。このため―

▽新体力テスト等の結果等を活用し、子ども自身が目標を設定して運動したり、望ましい生活・食習慣を意識したりする取組

▽ICTの効果的な活用による自己の変容を確認し、運動に対する意欲や挑戦する心を育成する体育・保健体育の指導の充実

 ―など、家庭や専門家等とも連携した取組を進めていただくようお願いする。

▼特別支援教育の充実

 特別支援教育においては、障がいのある子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、一人ひとりの教育的ニーズを踏まえた指導および支援を行うことが一層重要。このため―

▽個別の指導計画の不断の見直しによる指導内容・指導方法の工夫改善や個別の教育支援計画の日常的な活用による組織的・継続的な支援の充実

▽特別支援学級担当教員の免許状取得促進など専門性の向上や全ての教員が特別支援教育への理解を深める研修機会の充実

 ―など、学校全体で取り組んでいただくようお願いする。

 【学びの機会を保障し質を高める環境づくり】

 学校は、全ての子どもが伸び伸びと元気に過ごすことができる楽しい場であり、豊かな人間関係の中で安心して自分の力を発揮できるようにすることが求められる。

 また長期にわたるコロナ禍によって制限された生活に起因する子どもたちの対人関係等への影響も踏まえたきめ細かな支援に努める必要がある。

 そのため、特に「いじめ防止の取組の充実」「不登校児童生徒への支援の充実」「安全・安心と学びの保障」の3つの視点について、キーワードを「寄り添う」として方向性を申し上げる。

▼いじめ防止の取組の充実

 管内においては、いじめの積極的な認知が進んでいるものの、引き続き、いじめを見逃さないという姿勢を教職員間で共有し、いじめを生まない環境づくりを進めることが大切。このため―

▽全教職員による、いじめの定義の再確認と「学校いじめ対策組織」による早期発見の徹底、迅速かつ適切な対応

▽多様性に配慮した学校づくりと子どもが主体的にいじめ防止に取り組む活動の推進 

 ―など、常に意識し、継続して取り組むようお願いする。

▼不登校児童生徒への支援の充実

 管内においては、不登校の子どもの割合が全国よりも高い状況が継続しており、全ての子どもが安心して学ぶことができる「居場所づくり」や不登校の子どもへのきめ細かな支援が必要。このため―

▽児童会・生徒会活動等における人間関係や仲間づくりを促進する取組

▽不登校の子ども一人一人への支援方針の明確化と関係機関との連携・協力によるきめ細かな指導の充実(ICTを活用した学習支援を含む)

 ―など、継続した取組をお願いする。

▼安全・安心と学びの保障

 人命や社会生活に被害が生じる事態の恐れがある中で、子どもたち自身が起こりうる危険を的確に捉え、安全・安心を確保する取組をいつでも確実に実践できるようにする必要がある。このため―

▽保護者や地域の方々、関係機関との連携・協力による体験的な活動を通した子どもが自ら命を守ろうとする意識と態度を醸成する取組の充実

▽災害等不測の事態や感染症の拡大などによって登校できない場合でも、子どもとつながり学びを止めない取組の充実(ICTの活用を含む)

 ―などに努めていただくようお願いする。

【持続的で魅力ある教育活動を実現させる環境づくり】

 教職員が心身共に健康を保ち、誇りとやりがいを持って働くことができる環境づくりを進め、子どもにとって真に必要な教育活動を持続的に行うことが重要。

 そのため、特に「働き方改革の推進」「将来の後志の教育を担う人材の育成」「服務規律の厳正な保持と危機管理の強化」の3つの視点について、キーワードを「保障する」として取組の方向性を申し上げる。

▼働き方改革の推進

 管内においては、ICTの活用による業務改善や「コアチーム」等の組織を機能させた改善策の検討などが進められており、今後は、学校の教育目標の実現に向けたマネジメントと一体的に働き方改革を進めることが重要。このため―

▽「Road」に掲載の「チェックリスト」等を活用した、定期的な自校の働き方改革の実施状況の確認と成果の検証

▽主幹教諭や事務職員等との役割分担の見直しなどによる教頭への支援

 ―などによって、教職員が主体的に業務改善に取り組めるようにするとともに、中学校においては休日の部活動の地域移行に向け地域の実情に応じた検討を進めていただくようお願いする。

▼将来の後志の教育を担う人材の育成

 管内の将来を見据え、求められる資質・能力を有する管理職を計画的に育成し、継続して安定した学校運営を保障する必要がある。このため―

▽「後志管内公立小中学校管理職育成方針」を踏まえた中堅教員の学校経営参画意識の醸成や教頭候補者への継続的な働きかけ

▽「自己診断シート」等を活用した主体的な研修意欲の醸成や教員一人一人の職責や経験等に応じた意図的・計画的な研修機会の提供

 ―など、より良い教育活動の推進につながる人材育成に取り組んでいただくようお願いする。

▼服務規律の厳正な保持と危機管理の強化

 教職員の不祥事は、言うまでもなく学校教育への信頼を大きく損ねるものであり、職場全体で綱紀の厳正な保持に取り組む必要がある。また学校は、子どもたちにとって安全で安心できる場所でなければならない。このため―

▽事例研修や演習など教職員の心に響く取組と日常的な風通しの良い職場づくり

▽憶測や思い込みに依らない、管理職の適切な判断の下での慎重かつ誠実な初動対応など、クライシスマネジメントの充実

 ―など、組織的な取組を進めていただくようお願いする。

【成長を支える学校間連携と家庭・地域との連携・協働】

 幼児教育から大学等までが連続性・一貫性を持ち、社会のニーズに応える人材を育成していくためには、小・中学校9年間を見通した指導体制を構築し、義務教育で培った資質・能力をさらに発展させていく高等学校教育など、学校種間が連携・接続し、教育効果を高める具体的な取組を一層進めることが重要。

 また学校・家庭・地域が、子どもたちの状況や地域の課題を共有し、その解決策を共に考え、実践していくことを通して、子どもたちの健やかな成長を促し、地域への愛情や主体的に地域に関わる意識を醸成することが大切。

 そのため、特に「学校間の連携」と「家庭や地域との連携・協働」の2つの視点について、キーワードを「つながる」として取組の方向性を申し上げる。

▼学校間の連携

 管内においては、義務教育学校等の設置に向けた準備も含め、市町村の実情に応じた小中連携の取組などが着実に進んでいる。今後は―

▽授業改善や子ども理解など、具体的なテーマに基づく小・中学校の教職員同士の意見交換の機会の充実

▽地域課題や地域の魅力を学び、発信し、行動する力などを育むSDGsの実現にも資する総合的な学習(探究)の時間の系統的な指導

 ―など、子どもの学びを円滑につなぎ、豊かな成長を促す取組を一層進めていただくようお願いする。

▼家庭や地域との連携・協働

 管内においては、地域の様々な専門性を有する方の協力による学習支援が進められるなど、子どもの学びの充実に向けた取組が行われている。今後は―

▽分かりやすいグランドデザインや学校ホームページの充実などによる、目指す子ども像の家庭や地域との共有

▽コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的な推進

 ―など、将来の地域のリーダーとしての役割が期待される子どもたちの成長を共に支える取組の充実に努めていただくようお願いする。

【おわりに】

 学校の主語は子どもである。校長の皆様には、(Shi)信頼を基盤に(Ri)理念を共有し(Be)ベクトルを合わせて(Shi)質の向上を常に求め続ける学校づくりにリーダーシップを発揮いただくことを期待している。

 そして、後志の全ての子どもが「皆さんの学校で学べること」「皆さんの学校を卒業できること」「後志の市町村に生まれ育てたこと」を喜び、自信に思えるよう、教職員はもとより、保護者、地域、関係機関など、全ての教育力を結集して、チーム学校として子どもに愛される学校経営を進めていただくようお願いする。

 私たち教育局職員も一丸となって、各学校を支えるパートナーとして力添えできるよう、教育局の機能のさらなる充実に努めていく。

 本年度も、後志管内の子ども一人ひとりの幸せの実現に向け、全力で取り組んでいくので、皆さまの理解と協力をお願いする。

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5年度後志管内教育推進の重点
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