札幌市立高・特校長会 4年度事業報告 研究紀要から 第6回 (札幌市 2023-05-15付)
教育相談・特支推進委員会②
▼質問⑧
▽校内環境の整備について、トランスジェンダーの方の場合、トイレや更衣室について配慮があると良いとのことだったが、トイレは多目的トイレを利用するということで良いのか
▼回答
▽方策の一つとしては良いが、これも人によって感じ方が異なる。個室の更衣室等を別に用意することで安心できる人もいれば、特別扱いはされたくないと感じる人もいる。その当事者とよく話をして、どうしたらその人らしく学校生活を送ることができるのかを考えてあげてほしい
▼質問⑨
▽LGBTQ当事者が学校在籍中にカミングアウトし、その生徒に学校で対応した事例があったら教えてほしい
▼回答
▽女子の制服がスカートだけの学校で、ジャージ登校や多目的トイレの使用を認めた例がある。また別の学校では、生徒だけではなく保護者や教職員も含めたLGBTQへの理解に取り組んだところ、自然にカミングアウトできる生徒が増えたという例もある
▼質問⑩
▽LGBTQ当事者であると本人が分かっている場合は良いが、本人が「自分はLGBTQではないか?」と相談に来た場合、LGBTQかどうかの判断をしてあげることはできないため、その悩みを理解してあげるほかに何かできる手だてはあるか
▼回答
▽他人が決めつけることではないので、もしLGBTQ当事者だったとしても幸せに生きていくことはできる。「先生や学校は理解者になるから何でも相談しに来て良い」ということを伝えてほしい
▼質問⑪
▽LGBTQ当事者が11人に1人いるということで、今後、高校入学前の健康調査等で性についての困りを聞くような項目を作った方が良いか
▼回答
▽そういった項目があるとありがたいとは思うが、そこに書き込むことで不利益を被るのではないかと心配になる場合もあるので、個人情報は守られることも同時に記載されている方が良い
▼質問⑫
▽これまで「自分はマイノリティーです」「自分はゲイです」「男になりたくて卒業後は手術する予定です」などカミングアウトしてくれた生徒が何人かいたが、「パートナーとの三角関係が原因でネットで干された」「カミングアウトしていない級友からの心ない言葉が傷つく」という相談を受けた場合、どのように答えてあげたら良いか
▼回答
▽「ネットで干された」ことについてはLGBTQに限った話ではないので、一般的な三角関係解消に向けたアドバイスで良いのではないか。「心ない言葉が傷つく」ことについては「そのままで良い」「自信を持って」など、ポジティブなアドバイスをたくさんしてあげてほしい
▼質問⑬
▽「性のゆらぎはあるものの、まだどちらとは言えない」という生徒から、自分の名前のこと等について相談を受けた場合、どちらかの性に急いで決めようとして、あとで後悔することのないよう見守りが必要だと思うが、親や関係教員に「今は見守ってほしい」などの説明をするときに気を付けることや必要なことがあれば教えてほしい
▼回答
▽自分だけがこんなことで悩んでいるのではないか等といった不安を抱えているはずなので、その子に十分寄り添う姿勢を示してほしいのと、その子らしく学校生活を送るためにはどうしたら良いのか、子どもの目線で一緒に考えてあげてほしい。また、保護者がわが子のセクシュアリティーを受け入れられないこともあるので、必要に応じて保護者にも適切な情報提供は必要である
▼質問⑭
▽学校側として、学校祭で女装男装を禁止することも考えた方が良いのかを考える時代だが、このことで事例など参考になる事例があれば教えてほしい
▼回答
▽これまでの「ミスコン」のような外見の美しさを評価するのではなく、評価の視点を変えて、それぞれの人間性を評価する「ヒューマンコンテスト」を実施するなどといった流れをつくるべきだと思う
【まとめと今後の課題】
昨今、LGBTQ当事者を理解する風潮が広まってきているとは言え、まだまだ学校現場での理解が浸透しているとは言い難い現状があるため、動画によるスキルアップ研修を市立高校と特別支援学校だけではなく、市立の各中学校にも広く視聴を呼びかけた。
講師からは、個々の実態や本人の希望等によって対応の仕方が異なるが、その子の特性を理解し、その子らしい学校生活について考えようとする姿勢が学校としての基本となることを教示いただくことができた。
今回の研修をきっかけに市立高校や特別支援学校等において、LGBTQへの理解が進んでいくことを願ってやまない。
今後も、研修の実施方法や内容も含め、本委員会のメンバーの協力で創意・工夫を加えながら、生徒の健やかな育ちに資する取組を継続していく必要がある。
(札幌市 2023-05-15付)
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