道教委 全国体力調査分析 データもとに 状況把握・改善を 生活習慣確立へICT活用例も
(道・道教委 2023-06-22付)

 道教委の4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査北海道版報告書では、全国平均や体力合計点が上位の都府県と比較、分析して改善の方向性を明記した。全国と比べ本道の児童生徒は「素早い移動」「筋力・運動の持続」の能力に課題があるとし、バランスの良い体力を育成する授業改善、運動習慣、適正な生活習慣定着に向けた取組が必要と指摘。客観的データをもとにした自校の児童生徒の状況把握や指導の工夫、組織的な取組の充実など改善のポイントを示した。生活習慣の定着を図る取組として1人1台端末による生活リズムチェックシートの活用や、養護教諭や栄養教諭と連携した組織的な取組を紹介している。

 道教委の4年度全国体力調査報告書における分析結果の概要はつぎのとおり。

▼本道児童生徒における体力の現状分析

▽ポイント

・本道の児童生徒は全国の児童生徒と比較し「握力」の結果が上回っている傾向にあるが、小・中学校共に「上体起こし」や「20㍍シャトルラン」などに課題が見られた

・各種目の経年変化においては小・中学校男女共に調査開始当初と比較し「長座体前屈」において記録の上昇が見られる

・元年度と4年度の結果を比較すると、中学校女子においては体力合計点総合評価A・B群の生徒の割合が増加したが、体力合計点を含め各種目のT得点が元年度より減少している

▽まとめ

 「大きな力を出す能力」「大きく間節を動かす能力」においては、高い評価結果であったり上昇傾向であったりするものの「素早く移動する能力」「筋力を持続する能力」「運動を持続する能力」に課題が見られることから、バランスの良い体力を育んでいく必要がある。そのため体育科・保健体育科の授業改善を進め授業の質の向上を図るとともに、運動習慣や適切な生活習慣を身に付ける必要がある。

▼体力向上に向けた体育課・保健体育科の授業改善

▽ポイント

・体育・保健体育授業における指導の手だての工夫によって「できた」「分かった」を実感している児童生徒ほど体力合計点が高い

・体力合計点が上位の都府県に比べ、授業の中でいつも「できた」「分かった」を実感している児童生徒の割合が低い

・体育・保健体育授業における指導の手だての工夫によって「できた」「分かった」を実感している児童生徒ほど体育・保健体育授業において進んで学習している

▽まとめ

 「個別最適な学び」「協働的な学び」を一体的に充実し、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげていくことが重要なポイントとなる。

・自己の課題に応じた活動を選択することができる場面の設定や解決方法の工夫による成功体験の積み重ね

・仲間と共に課題解決に向けて最も適した考えや納得できる考えを生み出し「できた」「分かった」を実感できる協働的な課題解決場面の設定

▼児童生徒の望ましい生活習慣や運動習慣の確立

▽ポイント

・小・中学校男女共に体力合計点総合評価A・Bの児童生徒ほど適切な生活習慣が確立されている割合が高い

・小・中学校男女共に肥満度が高い児童生徒ほど適切な生活習慣の確立に課題が見られる

・運動部等に所属していない児童生徒においては「運動やスポーツが好き」と回答している児童生徒ほど1週間の体育授業以外の運動時間が長く、放課後や学校の休みの日に運動やスポーツをしている割合が高い

▽まとめ

 基本的な生活習慣の確立に向けては、学校の教育活動全体を通じて児童生徒に生活習慣に係る正しい知識を理解させたり、適切な生活習慣を意識付けたりするなど、各学校における組織的な取組を一層充実させていくことが重要。

 適切な運動習慣を形成するためには、運動やスポーツに対する愛好的態度の醸成が重要であることから、体育・保健体育授業における指導の工夫はもとより、学校の教育活動全体を通じた仲間と楽しく運動する機会の確保や自己の課題や興味・関心に応じて日常的に運動に取り組むことができる環境の整備が必要。

▼体力向上に向けた学校の組織的な取組

▽ポイント

・体力合計点が全国平均以上の学校においては、前年度の全国調査を踏まえ、年間指導計画の改善を図ったり、授業等を工夫改善したりする割合が高い

・小学校の体力合計点が全国平均以上の学校においては「苦手(嫌い)」な傾向がある児童生徒向けの取組または能力差に応じた取組を行った」と回答している割合が高い

▽中学校の体力合計点が全国平均以上の学校においては、特に「体育授業以外で、全ての生徒の体力・運動能力の向上に係る取組を行った」「苦手(嫌い)な傾向がある生徒向けの取組、または能力差に応じた取組を行った」と回答してる割合が高い

▽まとめ

 各学校の実態を的確に把握し、全教職員で共通理解を図りながら組織的・計画的な取組を進めていくことが重要。

・新体力テスト分析ツールを活用した自校の児童生徒の体力・運動能力に係る良さや可能性、課題の把握

・学校の実態を踏まえた全体計画や体力向上プランの作成および全教職員による共有

・児童生徒が主体的に運動に取り組む運動機会の創出および運動環境の整備

体力向上の取組

改善の方向性

【体育・保健体育授業】

▼年度当初における組織体制の整備

▽客観的なデータ(新体力テスト、児童生徒アンケート、学校評価、キャリアパスポートなど)をもとにして児童生徒の体力・運動能力の状況や授業改善の状況を把握

▽「体力向上プラン」などを作成・活用した全教職員による現状や課題、解決に向けた方向性の共有

▼単元開始前の指導の見通しの明確化

▽児童生徒の「できる」「分かる」の目指す姿を明確化

▽各単元における学習の流れの明確化

▽いつ、何を、どのように指導し、指導内容をいつ、どのような基準、どのような方法で評価するのかを明確化

▼「導入」場面における指導の手だて

▽「展開」場面の主運動につながる準備運動の工夫

▽児童生徒の前時の振り返りを本時の学びにつなげる工夫(テキストマイニング、デジタル学習カードの活用など)

▽本時の課題(ねらい・目当て)の分かりやすい提示(ホワイトボード、ICT機器の活用など)

▼「展開」場面における指導の手だて

▽自己の課題に応じた解決方法の選択

▽自己や仲間、グループの課題の効果的な解決に向けた役割分担や協力場面の設定

▽効果的・公立的に自己や仲間、グループの課題を解決するためのICT機器の活用

▼「終末」場面における指導の手だて

▽本時の学びや「知識および技能」等の自己変容を振り返る場面設定

▽自己変容を効果的に実感させるためのICT機器の活用

【授業以外の組織的な取組】

▼運動・スポーツの楽しさの実感や運動習慣の定着に向けた全ての児童生徒が参加できる運動機会の創出

▽体力向上プランなどを活用し、自校の体力・運動能力に係る課題の明確化・全教職員による共有、課題に基づく年間を通した取組の計画的な推進

▽児童会や生徒会、地域や近隣の小・中学校等と連携による体力・運動能力の向上や運動習慣の定着に向けた取組の企画など児童生徒が主体的に運動する機会の創出

▼児童生徒が日常的・主体的に運動に取り組むことができる運動環境の整備

▽児童生徒が休み時間等を利用し、自己の課題や目標に応じて日常的に運動に取り組むことができる運動の場の設定

▽児童生徒の意欲を喚起する運動環境の整備の工夫

▼児童生徒の望ましい運動習慣・生活習慣の確立に向けた継続的な取組

▽運動習慣・生活習慣の確立に向けた自己指導能力を身に付けるため、1人1台端末の効果的な活用など継続した取組の工夫

▽養護教諭、栄養教諭、地域の専門家との連携による組織的な取組の充実

(道・道教委 2023-06-22付)

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