札幌市教委 4年度人間尊重の教育 多様性に向き合う 学校教育の推進⑥ 問題行動の予防で成果 MプロやUDLで環境整備 札幌豊明高等支援
(札幌市 2023-07-10付)

【課題1 「多様な学び」「多様な性」を切り口にした教育活動や学校施設利用等の見直しと推進】

▼児童生徒・学校の実態

 本校は中学校を卒業した軽度知的障がいのある生徒対象の学校で、情緒障がいや発達障がいを併せ持っている生徒も多く通っている。5つの職業学科を設置し、卒業後はほとんどが社会人として企業や福祉事業所で働く。

 本校に入学してくる生徒の多くが、小・中学校時代に不登校やいじめなどのネガティブ体験をし、対人関係やコミュニケーションに対して苦手意識を持っており、対人トラブルも多い。

 これまで対人関係トラブルに対しては「距離を置きなさい」「近づかないようにしなさい」という指導が中心で、コミュニケーションの機会を奪うことで、トラブルを回避させてきた。

▼ねらい(目標)

 良質なコミュニケーションを大量に提供し、意図的・計画的なプログラムによってコミュニケーション力を付け、社会性と思いやりを持った生徒を育む。

▼活動内容

▽Mプロ(MLA)の実践

▽UDL(学びのユニバーサルデザイン)による学習環境の整備

▽先行的・常態的な生徒指導による発達支持的な4つのプログラムを全ての生徒に提供

・SEL(社会性と情動の学習)

・PBIS(ポジティブな行動介入と支援)

・ピア・サポート

・協同学習

▽徹底した生徒理解のためのアセスメント

・アセス(学校適応感尺度)アンケートの実施により、緊急性の高い生徒の早期介入を図る

・B―SAFE(より良い学級のための尺度)アンケートの実施によって、いじめの予防と早期発見を行う

▽上記を実践するための質と量を伴う教員研修の実施

▼成果

▽生徒のポジティブな行動の増加

 プログラムの実践によって問題行動の未然防止・予防につながった。また、UDLを取り入れたことで、これまで授業参加に消極的だった生徒が積極的に発言するようになった。

▽学校への期待の高まり

 中学生と保護者が学校見学に訪れ「うちの子にはMプロが必要」などの声が寄せられている。

▽生徒指導案件の減少

 学校評価保護者アンケートの自由記述欄では、生徒指導に関する問い合わせが減り、逆に励ましや感謝の言葉が増えた。

▼課題

▽教職員の賛同をどのように得るか

 プログラムを順序性を持たせて段階的に導入したことで、準備時間の確保と負担軽減につながった。

▽実践の成果の積み重ね

 Mプロによる効果を感じたことは全体に情報発信した。それが実績として積み上げられた。

▽Mプロ成功のカギは教員研修

 質の高い教員研修の提供によりMプロの有効性についての疑問を解消した。試してみたいと思う収穫があり、発見があり、役立つため、続きをもっと聞きたくなり、研修を続けられた。

▼これからの取組の方向性

▽UDLの研究推進

 文部科学省から、多様な子どもたちを「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」を実現すること、が示されている。UDLの研究を深め、その枠組みを取り入れることで実現可能と考える。

▽4つのプログラムの進化

 「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、4つのプログラムをさらに進化さる必要がある。特に、毎日の学習において協同学習を充実することができれば実現に大きく近づける。

(札幌市 2023-07-10付)

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