道教大附属特別支援 公開研 成功体験重ね自己実現 強みや能力引き出す指導(学校 2023-07-28付)
小学部では様々な道具を使って児童が表現する楽しさを味わった
【函館発】道教育大学附属特別支援学校(青山眞二校長)は22日、達成感や自己肯定感を育む「自己実現」をテーマとした公開研究協議会を開いた。小学部、中学部、高等部に在籍する児童生徒の強みや能力を引き出すため「選ぶ」「決める」を繰り返す指導や支援の工夫を展開。制作活動や体育、総合的な学習の時間の集団活動で成功体験の積み重ねに焦点を当てた3授業を通して研究成果を披露した。
「児童生徒一人ひとりの自己実現を目指した授業実践」を主題に据えた研究は、4年度から6年度までの3ヵ年計画。本年度は児童生徒と保護者、教員それぞれの思いを共通理解し、個々の可能性を引き出す授業づくりと、その効果を明らかにすることを目的とした。
各部では「授業のねらいにおける自分の思いを表現する(小学部)」「集団での生活や活動の中で自己実現につなげる(中学部)」「自立と社会参加へ向かう自己実現を図るための授業づくり(高等部)」の研究内容を設定。
公開研究会はオンラインと参集型のハイブリッド形式で道内外から約160人が参加した。
授業公開のうち、小学部(児童数4人)の制作活動「色を塗って表現しよう」は様々な用具や絵の具を使い、立体物に色を塗る体験を通して創作活動の楽しさに触れさせる学習。これまで、画用紙や布の平面に色を塗る活動を行い、児童に筆などの用具や絵の具の使い方を身に付けさせてきた。指導者の小島洋平教諭、日下部佳奈子教諭、金木彩子教諭の3人は段ボールで複数作成した立体的な家、はけ、ローラー、スタンプ、絵の具など様々な道具から好きなものを選べる環境を設定。個々が好きな色を示したり、手に取ったローラーやスタンプを自由に触れるよう促したりして児童の興味を引き付けた。
「手が届かず、色を塗れない部分がある」など困った際を想定し「てつだってカード」を教員に手渡すルールを導入。障がいの特性によって表情を読み取ることが難しい児童に対し、自己選択できる学習環境を工夫することで意思を表現できるように支援した。
中学部では陸上競技のリレーを題材に生徒が望ましいと思うバトンパスの方法を友人同士で考えさせる授業を実施(生徒数9人)。櫻井優歩教諭、長谷川ひかる教諭、中村耕太郎教諭の3人の指導者がグループ活動に入り、生徒がスムーズなバトンパスの方法を他者と相談できるよう、扱いたいバトンを相談させる声かけやタブレット端末で視覚的に確認できることを教えることで生徒の練習を支援。振り返りでは友人の良さをたたえる生徒の様子を褒め、自己肯定感の向上を育んだ。
高等部では飯田悠太教諭をはじめとした12人の指導者が「1学期報告会」(生徒数23人)を公開。生徒が1学期の学習で感じたことをつづる「五感日記」を整理し、一番伝えたいエピソードを参加者に発表した。美術館で特別展を観覧した際の感動や大野農業高校との栽培交流で盛り上がった話題など、生徒が自由な発表形式で他者へのアプローチ方法を学ぶとともに、自身の考えを伝える成功体験を味わえる学習成果を披露した。
授業公開後は部ごとの協議を実施。小学部は道教育大函館校の細谷一博教授、中学部は函館短期大学の藤村敦教授、高等部は道教育大函館校の北村博幸教授が助言した。
基調講演では、筑波大学の野呂文行教授が「自閉症スペクトラム症の児童生徒の行動問題の捉え方とその対応について」と題し、応用行動分析学の知見をもとに指導や支援の在り方を解説した。
(学校 2023-07-28付)
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