北広島の山口校長と工藤校長 コロナ禍を振り返る デジタル化進行 交流再開に期待(市町村 2023-08-03付)
山口歩校長
新型コロナウイルス感染症は令和2年1月に国内で初の確認以来、学校現場に多大な変化をもたらした。コロナ禍における3年余りの間、感染拡大防止と学びの保障に追われた学校現場の苦労は計り知れない。北広島市立広葉中学校の山口歩校長と大曲小学校の工藤雅人校長の2人に、感染症の影響による学校現場の変化を聞いた。
2人は学校全体の変化として、運動会や学校祭など主要な学校行事のオンライン化や地域との連携の疎遠化を挙げる。授業等での対策では、音楽の合唱、理科の机を囲むグループ実験、家庭科の調理実習の一部の内容を取りやめたことに言及。学びを止めない工夫を続けたことを語った。
人的支援の面では両校長共に「スクールサポートスタッフの存在が非常にありがたかった」と口をそろえる。学校施設の消毒作業、検温、トイレや玄関口の掃き掃除などの業務が大きな負担となる中、教職員が本来の業務に専念できることで負担軽減の効果を大いに実感したという。
教育活動では端末を使った対話型活動や遠隔授業が拡大。大曲小ではICT機器に不安を持つ教職員に対するフォローアップ研修を実施したほか、広葉中では教職員の提案をもとに生徒総会もリモートで開催した。山口校長は議案書のデジタル化によって「印刷や帳合の手間が省けた」と実感の声を上げる。
一方、急速に進んだICT化やオンライン授業についても警鐘を鳴らす。工藤校長は離島・へき地、不登校・長期入院などの場合における「生徒指導の特例」として有効な手段としつつも、現行の法律・制度上での課題を指摘。義務教育の授業時数は対面授業を基本としていることを根拠に「配信による授業を認めると、通学区域に基づき地域の子どもを就学させることが前提である義務教育が成り立たなくなる危険性がある」とし、既存制度に改善を加えて教育課程における遠隔授業の位置付けをより明確化する必要性を訴える。
5類への移行を経て生徒・教職員共にマスクの着用を個人の判断に任せることとなったが山口校長は「マスクを外すことに抵抗を覚える生徒も少なくない」という。工藤校長は「各自の判断に差別や偏見を持ってはいけないよう徹底周知している」と語る。
給食時の黙食も取りやめ、児童生徒にとって大切な交流の場に。大半の学校行事がコロナ以前と同等の規模・頻度で再開しており、疎遠になっていたコミュニティ・スクール活動も本年度から本格的に展開する方針だ。
校内アンケート調査では交流の場を望む声が多数あったこともあり、山口校長は交流活動の活性化に期待を寄せる。5類移行を契機に授業や学校行事が従来の形式に戻りつつある流れに「下級生にとっては先輩の姿を見て学習することも多い」とうなずく。
工藤校長は、コロナ禍を経て、教育活動の本来の目的に立ち返り学校教育を見直す契機になったと振り返る。「形式的に全てを前年踏襲するのではなく今一度、業務を精選するきっかけになった」とし、コロナ禍における発見を取り入れながら新たな手法で学校経営に取り組む。
ことし6月3日に行われた同校の運動会ではコロナ禍で実施した3部制を改変し、初の2部制での開催に至ったが「保護者にとっても場所取りなどの負担がなく、教職員にも負担が少なく好評だった」と手応えを語る。
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工藤雅人校長
(市町村 2023-08-03付)
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