子中心の学校、授業を 道教組が第36回中央委員会(関係団体 2023-09-20付)
道教組(中村哲也執行委員長)は9日、第36回中央委員会を開いた。2023年度後半期の運動の重点課題に「子ども中心の学校づくり授業づくりを学び、実践を進める取組」など5点を据え、オンライン学習会の定期的な開催、本年度から始まった新たな研修制度に関する職場での状況把握を進めることなどを確認した。
1号議案「当面闘争の推進」では、ICT教育の急速な進行による教育の個別最適化や、教員未配置、教職員の超勤多忙化、定年延長などの課題を確認。給特法の改正要求を入り口に「教員に人間らしい働き方を取り戻す」「子どもたちの発達成長を保障する教育と学校を守る」ための取組を推進することを決意した。
その上で、後半期の運動の重点課題に「労働者・国民とともに教職員の生活と権利を守る」「子ども中心の学校づくり授業づくりを学び、実践を進める」「憲法に立脚し、保護者や地域とともに民主教育を進める」など5点を設定。
教員の長時間労働解消や、定年延長に伴う60歳以上の働き方、春休み延長要求に関する取組を進める。
また、オンライン学習会のコンスタントな開催、新たな研修制度に関する職場での状況把握を進め、問題点や課題などを明らかにすること、教員未配置に関する実態把握に努めることなどを確認した。
◆中村執行委員長あいさつ
道教組第36回中央委員会における中村哲也執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。
日々の教育活動の取組など、多忙な中で代表として参加いただいたことに心より敬意を表する。
中央委員会は、半年の取組を振り返り2023年度後半に向けて、私たちの到達点と展望を確認し合う重要な役割をもって開催される。充実した討論によって道教組・方針を練り上げていただくことをお願いする。
私からは、3点について取り上げる。
一つ目は、情勢である。23年度、今、私たちはどんな地点に立っているのだろうか。
学校はどう進んできたのだろうか。「GIGAスクール構想」を入り口にした「教育DX」による教育内容の変質である。社会全体のデジタル化を急ぐ政府によって、GIGAスクール構想、「教育DX」が大波のように子どもたちや学校・教職員に襲いかかってきた。
これらは全て、経済産業省が主導する財界・産業界の意向に沿った「学校改革」からきている。一気に1人1台端末整備を進め、全員にタブレットやPCを持たせ、学校や家庭で使わせることを日常化した。AIの積極的な活用は、管理する方向へと流れ、温かみのない無機質な学校空間と個別具体的に孤立して生きる子どもの兆候が出てきている。子どもたちが一層スマホ・タブレット漬けになり、健康面や精神面で不安の声も広がっている。
全国学力・学習状況調査CBT化、デジタル教科書・教材導入促進、プログラミング学習導入など、矢継ぎ早に打ち出されている。教育デジタル化によって、改訂学習指導要領で学習内容が増やされ、ことし検定合格した「英語」教科書では、5・6年生の単語数700超、中学校では1200語から1800語程度まで増加。文法事項も高校の学習事項が下りてくる。全国学力・学習状況調査は競争的な教育へと傾向し、子どもたちをも苦しめている。1点を競う平均点争いに、小5や中2の春休みの課題が全国学テの過去問を、進級早々に小6・中3は授業で全国学テ対策を行わないのかと駆り立てられている。
私たちが大事にしたいのは、「グローバル化」を優先した授業や教育ではない。子どもたち一人ひとりが生き生きと成長・発達する権利を保障し、豊かな教育を行うことである。それは、子どもたちが希望をもって生きていけるよう、生活の中から子どもたちの声を聴き、語り合い、寄り添うことではないか。
道教組は、第14回定期大会で確認された学校教育の基本についてこううたっている。
▽学校教育は、子どもたちが真理と真実を学び、人格の完成をめざし、平和的な国家および社会の形成者として育てるという教育の目的を実現する国民的事業において、大きな役割をになっている営みである
▽教職員は、国民の負託を受けてそれぞれの専門的な職務を通して、子どもの成長、発達する権利を保障する責務をになう
―とあります。
教育は政府がねらう学校改革・「人材」育成の場ではない。私たちは、しっかり立ち止まって、学ぶとは何かを考え、じっくり時間をかけて取組を進めていくことが大切なのではないか。
二つ目は、不登校について。
3月の定期大会で、12年ぶりに改訂された「生徒指導提要」について触れたが、私は今の教育を何とかしたいと考えている教職員、子どもや保護者に基づいた学校をつくりたいと考えている管理職、教育委員会をはじめ教育に関わる多くの方々には手を休めてでも一読していただきたいと呼びかける。
特に、不登校を巡る状況に一石を投じる生徒指導・生活指導の指針がある。不登校の要因は多様であり、複雑に絡み合っているものだが、子どもの目の前で指導している私は、その一因が教育の指導の在り方にもあると痛感している。
それは、文部科学省が調査している不登校の要因が、学校・教員側が考えていることと、児童生徒が「行きづらいと感じ始めたきっかけ」が大きく異なっている、すれ違っているという事実からも読み取れる。
私は、8月に東京で開催された「教育の集い2023」に参加して、分科会のレポート報告で、不登校の子どもをどう支えたのかという実践に出合うことができた。その実践の基調には、生徒指導提要の第10章、不登校に載っている文章と重なった。文章には「本人としてどうありたいのかという主体的意思(希望や願い)、本人がもっている強み(リソース)や興味・関心も含め、不登校児童生徒の気持ちを理解し、思いに寄り添いつつ、アセスメントに基づく個に応じた具体的な支援を行うことが重要である」とある。レポートには、苦悩しながらもその子を理解していく追求が実践され、学ぶことができた。私は、学ぶことで、今大切なことがはっきりした。
一方で、増え続ける不登校を生み出した政策を、文科省は反省に立っていない。社会の在り方や学校の競争的・管理的な教育から転換しなければ、苦しむ子は少なくならない。そのような政策が学校の空気(風土)に及ぼし、その要因が不登校の背景にあるのではないかと考える。
三つ目は「働き方改革と先生をふやそう」である。
全教の教職員勤務実態調査や文科省の教員勤務実態調査の結果から、どちらも超過密勤務の実態が明らかになった。今、私たちの周りにも病休や退職する先生が相次いでいる。
私たちが要求する健康で元気な姿で教育したいという勤務条件の改善は、子どもの教育条件の改善に直結する。不登校問題をはじめ、一人ひとりに応じたケアが必要で、気の張る安全指導も怠ることはできない。
今こそ、教職員を増やすときである。子どもの成長・発達を保障するために、教育予算こそ抜本的に増やすべきだ。教職員の要求を束ね、運動する楽しい組合を大いに見せようではないか。同時に、組合に加入することは教職員の権利である。全ての教職員に組合に入ってほしいと、正面から呼びかけていこう。
私は全ての皆さんに教職員としての尊厳を、守るためにも組合に入ってほしいと訴える。1人の苦悩や要求は決して個別のものではない。教育者として、真理を語り、誇りをもって仕事をするために、また働き続けられる職場にするために、全ての教職員に「組合に入りませんか」「全教共済に入りませんか」と、気がまえずに楽しく声をかけていこう。
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中村哲也執行委員長
(関係団体 2023-09-20付)
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