10年間見据えた連携へ 小中高の英研3団体が研究会
(関係団体 2023-12-04付)

小中高英研開会式と提言
小中高英研開会式と提言

 第65回道小学校・中学校・高校英語教育研究会(小中高英研)が11月24日、ホテルライフォート札幌で開催された。研究主題「小・中・高連携を踏まえた英語教育をどう進めるか」のもと、提言発表と意見交流、授業公開、講演会を行った。10年間を見据えた小中高連携による本道の英語教育発展に向けて、研鑚を積んだ。

 主催は、道小学校英語教育研究会(北小英研、関敏明会長)、道中学校英語教育研究会(北中英研、木村嘉宏会長)、道高校英語教育研究会(道高英研、志知芳彦会長)。

 大会は従来、北中英研と道高英研が合同開催していた。2年度に小学校外国語を教科化した学習指導要領が実施されたことを受け、4年10月12日に創立した北小英研が今回初めて参画した。

 この日は、全道各地から英語教育関係者ら162人が出席した。

 開会式では、主催者を代表して大会長の西川勤小樽桜陽高校長があいさつ。3校種が一堂に会するこの機に「これまで積み上げてきた成果をもとにして、様々な課題について情報交換する有意義な大会にして」と期待した。

 来賓として、道教委学校教育局高校教育課の加藤洋平主査があいさつ。明確な目的や具体的な状況を設定した音読などの言語活動やALTを積極的に活用した授業を目指して「各校種が持つ課題や困り感を共有する機会。小中高一貫した英語教育の推進を図ってほしい」と述べた。

 続いて、3本の提言発表。

 提言1では、札幌市立宮の森小学校の平山伸正専科教諭が「生涯にわたる英語学習の土台づくり~理論と実践から見えてきた小学校英語の実際」と題して、音声を中心とした指導法に基づく小学校英語教育の“カタチ”を共有。

 TeacherTalkやT―Sインタラクション、中間指導交流などの言語活動を通じて、発話を中心に自己表現しようとする児童の積極的な態度を育成している。

 提言2は、札幌市立北野台中学校の中井あやめ教諭による「発信力をつけるためのインプット」。教科書本文で学習した内容を活用して英語を書いたり話したりする自己表現能力を定着させるための日常的な実践例を発表した。

 電子黒板のフラッシュカード機能を活用した単語学習をはじめ、キーセンテンスを用いた会話練習や本文のディクテーションを繰り返すことによって、即興対応力を育んでいる。

 提言3として、鹿追高校の吉田織江教諭が「英語を“体感”する環境づくり」について紹介した。姉妹都市であるカナダ・ストニィプレイン町との相互の留学生派遣、フィリピンやニュージーランドとのオンライン交流、海外向けに日本文化をプレゼンテーションする探究活動の設定など、生徒の国際理解・海外交流を支援する教育体制を構築している。

 指導助言では、小学校について札幌市教委の髙橋文指導主事が難しい単語にも触れさせたり、自己関連性の低い単元で学習意欲が低下する児童の対応方法を検討したりする必要性を指摘した。

 中学校に向けては、札幌市教委の丸山未来指導主事がアウトプットを前提にしたインプットの重要性を説き「思考を促す発問も投げかけて」と伝えた。

 加藤主査は、高校を中心に小中高が一体化した英語教育の有用性を強調し「留学を志す生徒にとって英語の授業が最重要。活発に英語でコミュニケーションできる場にして」と講評した。

◆発信力育成の実践披露 札幌国際情報高が公開授業 質問&応答ゲーム等言語活動通し

 公開授業として、札幌国際情報高校(志知芳彦校長)普通科の1年2組「論理・表現Ⅰ」(木村準一教諭、生徒数40人)を実施。質問&応答ゲーム「Find someone who」とスキット・トレーニングによる言語活動を通じて、英語での発信能力を育成する実践例を示した。

 1年次の必修科目で、話すこと(やりとり、発表)と書くことを中心とした発信能力の育成を指導するもの。

 2単位のうち1単位はALTと協力したチーム・ティーチングで行うほか、プレゼンテーションやショートスピーチなどのパフォーマンステストを課すなど、充実した言語活動を通じて自己表現の幅を広げさせることを重視している。また、木村教諭は、生徒たちにより多くの英語を浴びせる手だてとしてオールイングリッシュで授業を展開している。

 単元をみると、関係代名詞を扱う授業を構成。本時は8時間扱いの2時間目。前時では、中学生内容の復習と関係代名詞の基礎知識を導入し学習を進めてきた。

 この日は、質問&応答ゲーム「Find someone who」とスキット・トレーニングなどの言語活動を行った。

 はじめに、木村教諭は文法4択クイズで既習内容を復習させたあと、勤労感謝の日になぞらえて「Who do you respect?」「Did you thank your parents for working hard everyday?」などと10の質問を投げかけた。

 生徒たちは質問文の音読練習を通じて、正しい発音と内容を確認し、回答を英作文。このとき、木村教諭は「Please answer with full sentence」と完全文で答えるよう念を押した。

 つぎに質問&応答ゲーム「Find someone who」として、先ほど作成した回答をもとに、たくさんの人にインタビューしてみるよう指示。

 会場内の誰にでも質問を投げかけていいこととし、来賓や参観者も巻き込んで、あいさつ、質問、受け答えの一連の流れを練習させた。

 自分の回答と一致した場合は署名をもらうよう呼びかけ、何度も会話練習に挑むことを促した。

 生徒たちは「Who named you?」「I was named by my father」や「Please tell me what you had for breakfast today」「I ate cereal」など、意欲的に英語で自分の考えを発し、コミュニケーション活動にいそしんだ。

 スキット・トレーニングでは、誕生会を企画する文章を扱った。本文の内容を理解したあと、複合関係代名詞と複合関係副詞も紹介。「~でも」と表現することや主語と動詞を携えて用いることを学んだ。

 授業後は、道教委高校教育課の加藤洋平主査が講評。単元を通して、明確な課題設定や情報整理が行き渡った授業を展開することの重要性に触れたほか、まとめ活動の一例として、前単元「比較」と一体化した「“尊敬する人に手紙を送ってみよう”という活動を行ってみては」と示唆を与えた。

◆定型表現定着へ連携を 北海学園大・田中教授が講演

 講演会では、北海学園大学人文学部の田中洋也教授が「定型表現から考える小中高英語教育の連携~定型性と可変性の視点から」と題して講話した。小中高の英語教科書に用いられる定型表現を分析し、児童生徒に定型表現を定着させる重要性を説いた。小中高連携した英語教育について「3校種一貫した授業の中でコミュニケーション活動がもたらす学習効果に期待が集まる」と伝えた。

 はじめに、言語学者アリソン・レイによる定型表現の定義を解説し、英語母語話者が頻繁に使用する定型表現として「What are you doing?」「How was your~?」「What would you like to~?」などを具体例に挙げた。教科書で使われる定型表現と見比べて「実際の日常会話で頻出する定型表現であっても教科書で取り扱われているとは限らない」と分析した。

 つぎに、教科書に掲載のある定型表現を概観。

 イディオムでは、小学校教科書に掲載のある「a piece of cake」「It,s raining cats and dogs」を例示した。直訳では意味を解釈できないことや使用範囲が限定的である可能性を考慮して「学校での指導・学習で取り扱うかどうか検討すべき」と訴えた。

 句動詞として、中学校教科書に「pick+人+up」「work out」などが取り上げられていることを紹介。日常的に使用頻度の高いフレーズが多いことを踏まえ「リスニングで聞き取れることが重要。日々の授業で特に指導すべき」と強調した。

 「have/make+a+名詞」などのコロケーションについては、チャートで示したり補助資料を作成したりして、頻出する組み合わせを提示することを助言した。

 定型表現を用いる利点として、依頼や謝罪、感謝などの意をスムーズに表現でき、会話を維持できる有用性を説明。また、因果関係や抽象・具体関係などを簡単に明示できたり、決まった受け答えの中で語彙・表現の再確認やリスニングに集中できたりすることを伝えた。

 続いて、英語教科書の特徴として、セクションタイトル、キーセンテンスなどをはじめ、多くの定型表現が繰り返し登場し、小・中学校で重複するものも多いことを解説。重要表現を何度も目に触れさせる大切さを説いたあと、定型表現を用いて自己表現させる指導を推奨した。

 「Do you have~?」を例にとって「後続する目的語によって意味を拡大できる」と可変性を指摘した上で、アウトプットを前提とした音読練習も提案。

 高校の教科書においても「Do you want to」「for the first time」「you know what」などの日常的な対人コミュニケーションに密着する表現が頻出することから、学術的場面・高次的認知思考に係る表現に触れさせるには「教科書以外の教材を活用することが必要」と示唆した。

 また、英検2級ライティングの模範解答を精読。英作文能力を育成する上では、文法やスペルを検討する習慣付けや書き換え表現を持たせるよう話した。

 口語的な語彙がより使用されるようになってきた現代英語の傾向を踏まえ、英語授業での外国語活動においても、会話上での縮約形・省略形に触れることや「very+形容詞」に加えて「so+形容詞」にも配慮するよう呼びかけた。

 教室内インタラクション・インプットを通じて「児童生徒に定型表現を定着させる責務がある。3校種一貫した授業の中でコミュニケーション活動がもたらす学習効果に期待が集まる」と締めくくった。

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小中高英研公開授業
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小中校英研講演会
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(関係団体 2023-12-04付)

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