Pick Up2023 No.2 道・道教委
(道・道教委 2023-12-08付)

◆猛暑でエアコン設置が加速

 各地で連日熱中症警戒アラートが発令されるなど、今夏の本道は酷暑に見舞われた。道教委によると、今夏、熱中症の疑いで搬送された児童生徒数は小学校3件、中学校11件、高校22件、特別支援学校1件の37件。中でも8月の4週目が最も多く、13件あった。学校現場でも臨時休業や下校時刻を繰り上げたり、体育授業や部活動を中止したりするなど、異例の対応に追われた。

補助制度拡充へ 緊急要望

 道・道教委など6団体はことし10月、文部科学省に対し、学校等における冷房設備設置への財政支援や補助制度拡充を求めて緊急要望。国の5年度補正予算には空調設備を含めた学校施設整備費として2333億円が計上され、当初予算の2倍以上に上る国庫補助が盛り込まれた。これを機に多くの自治体が対策を加速化させている。

業者確保が課題 工事時期の懸念も

 各自治体が冷房設備設置を急ぐ一方、ある関係者は「工事業者の人材確保」を課題に挙げる。冷房設備は冷媒配管工事が必要で、従来冷涼とされていた道内には冷媒配管を専門とする業者が少ないことが背景にある。

 人口規模の大きい自治体では学校数が多く、全校配置まで長期を要することも見込まれる。

 空調設備業界では、学校が希望する冷房設置の時期が夏休みなどに集中することを懸念。一方、教育現場では、学校の稼働日などを避ける工期の調整なども必要で、学校と工事業者の綿密な工程管理が不可欠となる。

 冷房設置に伴う電圧工事も課題だ。設定する電気量や空き教室の数など、学校施設の状況によって左右されるが、設置に伴う費用が高額になる可能性もある。普通教室へのエアコンの設置は、1教室当たり5~6㌔㍗が見込まれており、大量の電気に耐えられる電気設備への改良も必要で、大幅にコストがかかることが想定される。

 道教委の道立学校管理規則の改正に伴い、道内においても夏休みの延長の動きが広まることが予想される。気候変動によって来夏以降も酷暑が懸念される中、児童生徒の安全・安心を担保するための対策は待ったなしと言える。

◆教員の専門性向上が急務

 通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要な道内児童生徒の割合は、小学校で8・8%、中学校で3・1%と年々上昇傾向にある。一方、道教委がまとめた調査によると、道内の教職員全体の6割以上が通級による指導や特別支援学級の担任などの教職経験がない現状にあり、教員の専門性向上が喫緊の課題となっている。

 国は、全ての教員が10年目までに特別支援学級や特別支援学校の教師を複数年経験することを求めている。

 これを受け道教委は本年度、学校管理職の専門性向上に向けた取組に力を注ぐ。管理職を対象とした特別支援教育に関する研修会を年間3回実施し、校内体制や特別支援教育コーディネーターの育成の在り方など専門的な視点による研修を進める。

 研修に参加した特別支援教育の教職経験がない小学校管理職は「今後、全教職員と自校の課題について話し合い、全職員に自分事として考える体制をつくりたい」と話すなど、道内で専門性向上に取り組む醸成が高まっている。

専門性継承に課題 校内研で共通理解

 一方で、教職員の人事異動による専門性の継承が課題に挙がる。道央圏の小中高の特別支援教育コーディネーターを対象とした研修会でも、参加者から異口同音にこうした話題があり、通常学級での指導に困り感を感じている姿が見られた。

 全教職員の共通理解を深めるための取組も進む。道央圏の小学校では、他害傾向のある児童や落ち着いて授業に参加できない児童など実例をもとに、管理職を含めた教員間で障がいの疑いのある児童について考え合う校内研修も始まっている。

 ある特別支援学校の管理職は、特別支援学校の教員が小・中学校等の教員に学習指導の進め方等を助言する道教委の特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業の活用も「有効な手だての一つ」と話す。

 国では、特別支援教育の基本的な知識・技能を養うため、全教員を対象とした研修等の実施を推奨している。障がいのある子とない子が共生する“インクルーシブ教育システム”の実現が叫ばれる中、全教員が専門性を定着させる校内外での研修体制を整えていくことが一層求められる。

(道・道教委 2023-12-08付)

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