【社説】質の高い教職員集団へ(国 2024-01-01付)
教員不足が全国的な課題に挙がる中、優秀な人材の確保には、教職が「若者にとって魅力ある職場」でなければならないことは論を待たない。
本道の教員採用倍率は近年、3倍を割り込む。特に小学校教員は平成26年度の5・8倍をピークに下落。令和元年度以降は5年連続で2倍を切っており、深刻な状況が見て取れる。
道教育大学の教員養成課程卒業者が教職に就く割合は6割程度。多くが教員の道を選んだ時代と比べ、学生の進路が多様化した近年の傾向を如実に示す。
若者の多くが奨学金返済に苦悩する中、盛山正仁文部科学大臣は9月の会見で、平成10年に廃止された教員の奨学金減免制度の復活に触れた。民間企業でも導入の動きが見える。与野党を問わず聞こえてくる議論は、質の高い教師の確保が喫緊の課題にあることを示す何よりの証左だろう。
国は中教審の提言を踏まえ、働き方改革に本腰を入れる。学校・教師が担う業務の適正化推進、定数改善、なり手確保に資する施策など、新年度予算での拡充や新規計上などをねらう。
年末の閣僚折衝では、小学校高学年の教科担任制をはじめとした定数改善を了承。一方で、教師を取り巻く環境整備は、給特法など法的枠組みを含めた処遇全体の見直しとして「7年度予算で整理すべき」とした。多くの関係者が「現場判断でできる働き方改革は限界」とする学校の窮状に正対した対応を切に願う。
課題は教員採用という“入り口”だけではない。道教委の調べでは、30歳未満の小・中学校教諭等の自己都合退職は平成27年度以降30人前後で推移したが、令和2年度以降は増加。4年度は100人を超えた。
関係者からは、学校現場の多忙化が極まる中で行う教育実習や、初任段階における校内外の支援体制を憂う声が聞こえてくる。ある道教委幹部は、全国でも先駆的な草の根教育実習などを体験し、目を輝かせる“教員の卵”の意欲を持続させる大切さを訴える。「教職に就く意欲や、現場のやりがいを育む“孤立させない”環境が必要」と説く。
質の高い教職員集団の形成は「教師を取り巻く環境整備の充実」の上に成し得るものだ。教員のウェルビーイング確保が叫ばれる今、より良く変わろうとする学校現場を後押しする、国を挙げた施策の推進が求められる。
(国 2024-01-01付)
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