新春インタビュー 4種校長会長に聞く① 北海道小学校長会会長・森田智也氏(関係団体 2024-01-16付)
◆つながりを大きな力に
―校長会としての新年展望をお聞かせください。
現在、教育の世界、学校では、ウェルビーイングの実現を目指すという大きな方向性があります。あくまでも、この主語は「子ども」です。しかし、子どもの学びが充実するためには、教職員の働きがいが担保されることが前提となると思います。
働きがいで一番に想起されるのが、働き方改革ではないでしょうか。在校時間削減の取組は一定の前進はあるものの、私たちの目の前の仕事が大きく減ったわけでもなく、今以上の成果を上げるには、別の次元の対策対応が求められると考えます。この点につきましては、現在、中教審の「質の高い教師の確保特別部会」で出されている提言や審議の内容について、北海道として何ができるかを考え、道教委と共に汗をかきながら進めてまいりたいと思います。
北海道にはほかにも様々な課題があります。このような状況下ではありますが、全道の校長は自校の教育の充実と、さらには本道教育の発展を目指し、未来を担う子どもたちの成長のために全力で学校経営に取り組んでいます。
―校長会の抱える課題と対応についてお願いします。
北海道の小学校としては、大きな課題、小さな課題、地区ごとの課題、さらには学校課題とそれぞれに課題があるかと思います。私たちはそれぞれの課題には真摯に耳を傾け、共に解決策を練っていくことが肝要と考えております。
各地区、各学校に課題があるように道小にも課題はあります。ここでは校長会としての課題ということで現状をお話しいたします。
真っ先に思い浮かぶ課題は学校数の減少に伴う諸課題です。本年度の道小の会員数は955人です。学校数として最多だった年が昭和35年度で2343校ということですから、半分以下になっております。
諸課題の1点目が地区ごとで見たときの会員の減少についてです。札幌市には197人の会員がおります。オホーツク地区が71人。以下、石狩と胆振がそれぞれ60人、十勝57人、空知55人、上川53人、旭川48人となっております。オホーツク地区、空知地区、上川地区は、特に非常に広い地区です。隣の学校は隣の市町村ということも珍しくはありません。この状況で会員数が多いということは言えません。
逆に、少ない地区です。小樽地区、留萌地区、檜山地区が17人、根室地区が20人。ほかにも20人台の地区が三つあります。これらにつきましては、それぞれの地区としての歴史があり、また、地区として管内や局の教育を担ってきたという自負があろうかと思います。ですから、軽々に地区を再編という考えはありません。ただ、どのようにしたならば、地区の負担を減らすことができるかということは、勇気を持って副会長の皆さんや各地区の理事の皆さんと意見を交わしていかなければならないと思っています。
二つ目の課題は、会員数の減少からの課題、会費収入の減少と会議等の精選です。これについては、前年度の企画研修委員会において「会議や旅費等の精選・削減については、4年度から始まったことを受けて、その推移を見守ること」と答申を受けております。今後も会費の運用につきましては、慎重に行っていく所存です。例えばズームを利用した諸会議については、理事研修会は5回のうち2回、会長研修会、分科会運営者研修会は4回あるうちの3回をウェブ利用しての会議を行っています。
反面、参集して研修会等を行うことはとても大切なことと考えています。大字弘一郎前全連小会長の一言です。「最近の校長は、教頭化してきている。会議なんかウェブでいいんじゃないかと言い出す者がいる。自分の学校のことしか考えていない。校長は物事を判断する時に、様々な状況を分析する必要がある。そのような知見は、実際にみんなが集まって意見を述べ、高め合う場所で生まれるものだ」と述べております。この考えは、大切な考えとして、私の胸に刻まれております。
広域分散型と言われる北海道にとっては、ウェブでの会議は大きな力になります。それは参集しての研修や会議で人とのつながりがあってこそのものです。参集しての会合経験が少ない若手の校長先生が増えてくることを考えますと、つながりをつくることも各地区でも大切にしていただきたいと思います。
―新年度の重点的取組を伺います。
▼いじめ不登校への取組
生徒指導上の課題については校長会としても重く受け止めなければなりません。いじめについては、組織的な対応と言われますが、なかなか組織的な対応になっていない例があり、結果、解決が長引くということがあります。これまで道教委から「いじめ対応ガイドブック・支援ツール“コンパス”」や「子ども理解支援ツール“ほっと”」が示されています。さらには、各自の端末から直接道教委につながる相談窓口「おなやみポスト」、いじめ問題緊急支援チーム派遣などの事業が展開されております。
いじめは、未然防止が最も重要ですが、いつどこでも起きると考えれば、学校だけで悩まない、小さなことでも市町村教委や道教委に相談できることで組織的な対応と解決につながると考えます。
不登校については増加傾向が止まらない状況です。これについても組織的な対応、他職種の専門家、関係機関との連携が求められていますが、これら自体の壁が高いと感じております。
また、先日の報道で「令和8年度には不登校の児童生徒が希望した場合、全校でオンライン授業を提供できるようにする」というものがありました。今後はこのようなことが普通のことになっていくことが考えられますが、担任の負担が増えることがないように配慮しなければなりません。
▼働き方改革
働き方改革については全国的にも教職員の意識改革は進んできており、さらには学校でできることについては、ほぼ出そろっていると言われています。
今、これからできることと言えば、標準時数の1015時間を強く意識することです。例えば、月に1度は午前授業の日を設け、午後は会議なしで授業の準備のために集中する日をつくってはどうでしょうか。働き方改革とは、単に在校時間を減らすだけではなく、自分が教師として、子どもにやってあげたいことに時間を使うということも大切にしたい視点です。
▼人材確保と人材育成
人材確保について、学校現場でできることは、教育実習にきた学生たちを正しく育てることではないかと思います。甘やかすことでも厳しく指導することでもなく、教師という仕事は、未来を生きる人材を育てるもので、いかに崇高なものかを示すことです。
また、夢を持って教師人生を歩み始めても、その思いと現実にギャップを感じ、早々に退職する者も少なくありません。
昨年11月末の報道で、奈良県天理市教委が小・中学校や幼稚園などの保護者対応を一元的に担う窓口として、校長経験者や心理士らを配置した「子ども応援・相談センター(仮称)」を新設するとの発表を目にしました。日常的に対応に追われる教職員の負担軽減がねらいで、教師が精神的な余裕を持って仕事に打ち込むための試みです。問題が複雑化したり、過度な要求を突き付けたりする保護者の対応は、若手教師ではなくとも不安なものです。このような動きが広がることは働き方改革にもつながるし、退職者を出さない効果もあろうかと思います。
さらに、前年度から研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励が始まっています。始まったばかりで手探り的なところもあるかと思います。今後は情報交流することで効果的な面談の在り方を共有する必要があると思います。
▼研修活動の充実
昨年は、4年ぶりに道小教育研究渡島・北斗大会をフルスペックで行うことができました。参集した方からは、対面で話し合うことの良さに関わる声を多数いただきました。完全会同大会は、令和元年度の胆振・苫小牧大会以来であり、渡島の実行委員会の皆さま方のご苦労は大きなものだったと思います。
6年度は、空知・岩見沢大会、7年度は、根室大会、そして8年度は、全連小研究協議会北海道大会が札幌で開催されます。私たちが毎年行う地区大会の研究発表の質の高さは、全国大会でも生かされています。各地区が地区としての研究を行ってくださっていることへ感謝申し上げます。
会員数の減少は、研究大会を開催することにも大きく影響します。大会運営規程には「開催地区は持ち回りであること。開催地区は、そのブロック内で決めること」としています。この規定を柔軟に受け止め、地区が単独で請け負うのではなく、ブロック内で分担するという方法も検討していかなくてはなりません。
▼要望活動
道小では、毎年5月に北海道文教施策・予算に関する要望書を道教委に提出しています。各地区から寄せられた声を束ね、道中、道公教と連携して要望しております。また、道小は全連小とも密接に連携し、北海道の状況や課題を常任理事会等で説明しております。それらについては、文部科学省、関係行政機関、文教関係国会議員や地方議員への意見表明や要望活動に盛り込まれています。
▼終わりに
今後も私たち道小学校長会は、「正論をもって正道を歩む」という理念のもと、全国連合小学校長会、道中学校長会、道公立学校教頭会との連携を大切にしております。さらには、道教委や各市町村教委との連携を図り、北海道の教育振興のために尽力していく所存です。
◆略歴
もりた・ともや
昭和63年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立篠路西小に赴任。平成24年札幌市立百合が原小教頭、28年道公立学校教頭会会長、29年札幌市立篠路西小校長、令和2年円山小校長、4年北園小校長、5年道小学校長会会長、札幌市生活科・総合的な学習教育連盟委員長も務める。
昭和38年9月10日生まれ。60歳。三笠市出身。
(関係団体 2024-01-16付)
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