道高校長協会 後期研究協議会 子のウェルビーイングへ 北大院・篠原氏講演や分科会等
(関係団体 2024-01-12付)

道高校長協会後期研・全国高校長協会北海道ブロック研
道高校長協会後期研・全国高校長協会北海道ブロック研

 道高校長協会(宮澤一会長)は10日から2日間、ホテルライフォート札幌で5年度後期研究協議会・全国高校長協会北海道ブロック研究協議会を開催した。北海道大学大学院教育学研究院の篠原岳司准教授による講演や実践発表、調査研究部の各分科会による研究報告などを実施。開会あいさつに立った宮澤会長は、子どもたちのウェルビーイングにつながる学力の向上に向けて、探究的な学習・対話型授業やICTの効果的な活用によって授業改善を道内全体で進める必要性を示した。

 開会式で宮澤会長は協会として会員と同じ観点で共に取り組み、解決を図っていきたい課題等として①子どもたちのウェルビーイングにつながる学力の向上②いじめ・不登校等への適切な対応、命を大切にする教育の推進③人材確保・人材育成④教職員における不祥事の根絶⑤学校における働き方改革の推進―の5点を提示。うち①では、探究的な学習・対話型授業を推進するとともに、ICTを効果的に活用するなどして主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を北海道全体で取り組んでいく大切さを説いた。

 来賓として道教委の大鐘秀峰委員が祝辞を述べたあと、篠原准教授が「教育ガバナンスから捉える北海道の高等学校経営の現在と未来」と題して講演。専門職の学び合うコミュニティーとしての学校組織を構築する必要性を指摘。そのための戦略として「教員の多忙状況の改善を図るために、喜び・達成感を共有すること」「過去・現在・未来を一つにつないで語り合い、聴き合う機会をつくること」「授業研究会等での焦点を教師の指導から子どもの学び、子ども理解へ向けること」などを挙げた。

 研究協議では、石狩翔陽高校の渡邉祐美子校長が「“選ばれる学校”を目指して~生徒・地域とともに歩む学校づくり」、白老東高校の小川政博校長が「“地学協働、新たなフェーズへ”~“社会に開かれた教育課程”の視点から」をテーマにそれぞれ実践発表。また、調査研究部の各分科会による研究報告も行った。

 2日目は、全国情勢報告や生徒指導委員会の研究「豊かな心を育む教育の推進~新しい社会に対応した生徒指導の在り方」に関する研究協議を実施した。

 宮澤一会長のあいさつ概要はつぎのとおり。

 昨年を振り返ると、3月に北海道における教員育成指標が改訂され、4月から新たな研修制度が始まった。5月には、新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、本来の学校生活を取り戻しつつあるが、7月・8月と猛暑に見舞われ、臨時休業や授業カットを行った学校も少なくなかった。

 また、教員離れという今後の学校教育を揺るがす大きな課題が顕著になり、8月には「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」の緊急提言があった。

 そして、インフルエンザが流行した11月から12月にかけて、長期休業日に関する学校管理規則が改正され、PISA2022の調査結果も公表された。

 そこで、年頭に当たり、本協会として会員の皆さんと同じ観点を持って共に取り組み、解決を図っていきたい課題等について、5点申し上げる。

▽子どもたちのウェルビーイングにつながる学力の向上

 OECDによる15歳対象の2022年学習到達度調査の結果が昨年末に発表され、日本の順位は読解力が大幅に上昇し、科学的応用力、数学的応用力に関しても上位を保持し、国際的なトップ水準を維持した。

 調査によって明らかになった日本教育の課題を精査しつつ、義務教育段階におけるこの成果を確実に引き継ぐことが高校教育に求められていると考える。

 そのために、探究的な学習および対話型授業を推進するとともに、ICTの効果的な活用をするなどして「令和の日本型学校教育」の姿とされている「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実による「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を北海道全体で取り組んでいくことが大切であると考えている。

▽いじめ・不登校等への適切な対応、命を大切にする教育の推進

 私は、教員採用試験の面接で「高校の教師になって何をやりたいですか」と問われ「いじめを撲滅したいです」と答えた。当時、全国的に学校が荒れており、いじめによる事件や自殺の報道が増えていたからだと思う。子どもたちの安全・安心な学校生活を保障することはもとより、最も大切と言える「命」を守ることは、われわれ教職を預かる人間としての重要な使命。そこで、私たち校長は、生徒に直接関わり対応する教職員個々の資質・能力の向上を図るとともに、校内の協働体制を構築し、学校として組織的な生徒指導を実践することが肝要である。

 また、家庭や地域の力も借りつつ、学校全体の教育力を高め、子どもたちの自己肯定感・自己有用感を育成することで、自他共に大切にする心が育まれると考える。

 さらに、校長は「いつ何があっても、帰れるところがある」という子どもたちのセーフティネットづくりをいつも念頭においた教育活動の推進を図ることが重要であると強く考える。

▽人材確保・人材育成について

 5年8月に、中教審質の高い教師の確保特別部会から緊急提言があり、国や道において実効性のある具体的な取組を推進していただくとともに、教育現場においても校長がリーダーシップを発揮し、働きやすく働きがいのある学校を創造していくことが必要。

 「教育は人なり」。この言葉の重みを行政と現場が再認識し一体となって質の高い教師の確保に努めなければならないと考える。

 また、われわれは「校長により学校は良くなる」「教頭により職員室は良くなる」「行政により北海道教育が良くなる」と信じて、教頭や指導主事等、管理職候補の確保および管理職の質の向上を果たすべく力を尽くしていこう。

 そのために、各校長がハラスメントのない学校体制を構築するとともに、校長協会としては、管理職の処遇改善や60歳以降の人事異動の優遇措置など管理職のインセンティブを高めるよう、引き続き道教委に意見具申をしていきたいと考えている。

▽教職員における不祥事の根絶

 各学校は信頼される学校づくりに日々真摯に取り組んでいる。信頼を得るためには多大な時間や労力をかけなければならないが、信頼を損ねることは一瞬であり、築き上げた信頼を瞬く間に失墜させる教職員の不祥事が後を絶たない。

 本年度は昨年12月末現在で、公立学校教職員において、飲酒運転、わいせつ行為および金銭事故による12件の懲戒免職処分が行われている。

 また、個人情報漏えいの事故も多発している。教職員に対し、事故を起こすことによって学校の信頼を大きく損ねるだけではなく、自分のみならず家族の幸せを断ち切ることにつながることを、常日頃から伝えていくことは所属職員を監督するわれわれ校長の務め。校長は、教職員一人ひとりに教育公務員としての自覚を促し、服務規律の厳正な保持に努めることが大切であると考える。

▽学校における働き方改革の推進

 道数委は6年度から3年間を計画期間とする「北海道アクション・プラン」(第3期)に向けて、広く道民からの意見募集を実施したが、私も道民の一人として意見させていただいた。

 今後も、校長協会として、行政に学校現場の現状を的確に伝え、現場の実情に即した実効性のある働き方改革を推進していただくよう意見具申を重ねていきたいと考えている。同時に、働き方改革推進に最も必要と考えられる教職員定数の抜本的見直しや支援スタッフ等の拡充についても、全国高校長協会等を通じて国へ、北海道高校長協会として道に、引き続き申し入れを行っていく所存である。

 また、働き方改革を推進するためには「教育行政による抜本的改革」に加えて「各学校における業務の削減等に関する抜本的改革」「われわれ管理職も含めた教職員の意識の抜本的改革」が必要不可であると考える。「元気で活力あふれる教員が、生徒を元気に生き生きとさせることができる」と考え、各学校において働き方改革を推進することが肝要であると思う。

 結びに、全国高校長協会会長石崎規生氏は「教育へのリスペクトを取り戻すことが大切である」と述べている。ここで言う「教育へのリスペクト」とは、決して教員に敬意を払ってほしいということではなく「社会全体で教育を大事にしよう、子どもを育てよう、教育にお金をかけようということを共通理解していく」ということであり、私は心から賛同している。

 私はその理念を胸に秘め、北海道教育の推進・質の向上のために、会員の皆さまと一体となって精力的に協会運営に尽力していく所存であるので、皆さんの引き続きの理解と協力をお願い申し上げ、年頭のあいさつとする。

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北海道高等学校長協会宮澤一会長
北海道高等学校長協会・宮澤一会長

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