日教組第73次教研全国集会 瀧本委員長あいさつ概要
(関係団体 2024-01-30付)

日教組瀧本委員長①

 日教組第73次教育研究全国集会における、瀧本司日教組中央執行委員長の開会あいさつ概要はつぎのとおり。

 集会開催に当たり、地元北海道、札幌市、教育関係者の皆さまに、心よりお礼申し上げる。

 1月1日、石川県能登半島においてマグニチュード7・6の地震が発生し、最大震度7が観測された。あらためて亡くなられた方々、被災された多くの皆さまにつつしんでお悔やみとお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く復旧されることをお祈りする。

 徐々に被災状況が明らかになる中、学校も再開しているとの報道もあるが、一方で、集団避難をせざるを得ない地域があり、避難生活の長期化などによる子どもたちの心身への影響が懸念される。

 日教組として、被災地の子どもたち、教職員に寄り添いながら、全国連帯で教育復興支援活動に取り組んでいく。さらに、東日本大震災・東電福島原発事故の復興への道のりもいまだ半ばである。私たちは、子どもの心のケア等の被災地支援や、震災を風化させない取組を継続するとともに、防災・減災教育を全国で進めていく必要がある。

 全国各地で教職員不足が問題となっている。日教組調査によると、年度当初から未配置者が100人を超える県が複数報告されている。担任がいない学級、管理職までが担任をしている学級、教科の担当者がいない学級など、子どもの教育への影響は深刻なものとなっている。

 この状況は、月を追うごとに悪化し、未配置者の授業や業務を教職員同士で分担し、業務量はさらに増大している。自分が休むことで周りに負担がかかると無理を重ね、体調を崩す教職員が後を絶たない。12月に公表された文部科学省調査では、教員の精神疾患による病気休職者数は過去最多となっており、学校現場の勤務環境が一層厳しくなっていることが浮き彫りになった。

 教職員の勤務環境は、子どもが主体となる学びと表裏一体の関係にある。子どもが主体となる豊かな学びには、子どもと向き合う時間や教材研究・授業準備の時間、子ども一人ひとりの学習状況の把握や支援等、時間的・精神的なゆとりが必要不可欠である。だからこそ、学校における働き方改革が重要と言えるのである。

 2019年の給特法の改正によって、勤務時間管理は進んでいるものの、長時間労働が改善されているとは言えない。現在、中教審特別部会で議論されているが、真に学校の働き方改革に資するのかは予断を許さない。

 日教組は「持続可能な学校のための7つの提言」を公表し、学校現場の勤務環境が改善されたと多くの教職員が実感できるよう、広く社会に訴える運動に取り組んでいく。引き続き「給特法の廃止・抜本的見直し」を求めるとともに、教職員定数増と大胆な業務削減による、さらなる学校における働き方改革の前進を求めていきたい。

 昨年4月にこども家庭庁が発足し、こども基本法が施行された。子どもの権利条約を批准してから30年が経とうとしている。この間、国連・子どもの権利委員会から再三にわたって国内法の整備を求められていたものの、政府は極めて消極的な態度に終始してきた。しかし、こども基本法に規定された「子どもに関する政策を決める際、当事者らの意見を聴くことを国と地方自治体に義務付けられた」ことは大きな一歩と言える。

 12月22日、こども基本法に基づく「こども大綱」が閣議決定され、「こどもまんなか社会」の実現に向けた数値目標が盛り込まれた。数値目標の項目には「“こども政策に関して自身の意見が聴いてもらえている”と思うこども・若者の割合」があり、23年度の20・3%を5年後には70%まで引き上げようとしている。

 ここで言うこども政策には当然、学校教育も含まれる。校則の見直しだけではなく、教育課程や日課などについても子どもの意見を聴くことが重要になる。

 今の日本の教育制度は、国連・子どもの権利委員会から再三にわたって勧告されているように競争主義的と言える。「点数学力向上」を追い求めるあまり、個人の尊厳や子どもの権利、人格の形成といった、本来教育で大切にすべきものが忘れられているように思えてならない。子ども一人ひとりの個性や違いを尊重し、多様性を認め合い、互いに支え合い、助け合うような人間関係づくりが学校教育にとって重要である。

 本集会のテーマでもある「憲法・子どもの権利条約を生かす教育改革の実現」のためにも、私たちも子どもの権利条約をあらためて確認し合い、日常の教育活動や教育実践につなげていこう。

 ウクライナへのロシアの侵攻、そしてイスラエルとハマスの軍事衝突、アフガニスタンやミャンマーをはじめ、紛争や迫害が絶えない。世界で平和と民主主義が危機的状況となっている。また日本においても憲法の危機、そして教育の危機が一層緊迫度を増している。そのような時だからこそ、「平和を守り、真実をつらぬく民主教育の確立」のため、私たちの先輩が営々と積み上げてきた教育研究活動の歴史と成果を学び、年々増加している若い世代の教職員にも継承していく重要性が高まっている。

 日教組は、子どもの学ぶ意義や楽しさ、学び合いによる人間関係づくりを基盤とした豊かな学びを提唱している。豊かな学びの出発点は子どもたちだ。私たちは、目の前の子どもと向き合い・語り合い、子どもの思いや考えを受け止め、子どもが何を求めているかを大切にした教育研究活動、子どもを中心に据えた教育実践を引き続き進めていきたい。

 20年1月に広島県で開催した第69次教育研究全国集会以降、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、3年間ウェブ開催という特別な対応を図ってきた。そして本集会は、実に4年ぶりに感染症流行前の形態に戻し、対面で開催することができた。あらためて、多くの仲間が集い、熱い議論を繰り広げられることを心から喜びたい。

 本集会は、全国各地で取り組まれている、子どもが主体となる教育実践をもとに、参加者が互いに学び合う教育研究活動の集大成の場である。教職員自らが、その力量や専門性を高め合う活動や実践は、国際的にも高い評価をいただいている。平和・人権・環境・共生を基調に、子どもたちから出発する豊かな学びについて討議を深めていただければと思う。

 本集会を契機として、子どもの学び舎教育のありようについて社会的対話を進めながら、子どもを中心に据えた教育研究・授業実践をより一層充実・発展させていこう。

(関係団体 2024-01-30付)

その他の記事( 関係団体)

ほっかいどう学連続セミナー 十勝再発見テーマに 3月9日帯広で開催

ほっかいどう学連続セミナーver  認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム(新保元康理事長)は、3月9日午後3時から帯広市内のとかちプラザで第9回ほっかいどう学連続セミナーを開催する。「十勝再発見」をテーマに、開発局帯広...

(2024-02-05)  全て読む

へき地・小規模校教育研究センター 少人数の利点生かして 教材の工夫 フォーラムで共有

へき地フォーラム  道教育大学へき地・小規模校教育研究センターは1月中旬、「どうしたらいい?へき地・小規模校の教材・教具」フォーラムを対面とオンラインのハイブリッドで開催した。増毛町立増毛小学校の深井幸恵教諭...

(2024-02-02)  全て読む

十勝管内いじめ問題等対策連絡協 相談しやすい環境を 学校・家庭・地域一体で取組

管内いじめ問題等対策連絡協議会  【帯広発】第2回十勝管内地域いじめ問題等対策連絡協議会が18日、十勝総合振興局で開かれた。関係者約20人が出席し、実践発表や協議を通して学校・家庭・地域等が一体となった、いじめや不登校等へ...

(2024-01-31)  全て読む

帯広市教育研究所 冬期研修講座

帯広市教育研究所・冬季研修①  【帯広発】帯広市教育研究所は1月上旬の4日間、市内各所で冬季教員研修講座を開いた。生徒指導提要改訂の方向性や授業改善のポイント、児童生徒の実態に応じた特別支援教育など、時宜にかなった内容で...

(2024-01-31)  全て読む

釧路管内教委連 教委委員研修会 教育課題解決へ研鑚 釧路局・角田社教班主査ら講演

釧路管内町村教育委員会連絡協議会・管内教育委員研修会  【釧路発】釧路管内町村教育委員会連絡協議会(辻川尚志会長)は24日、釧路市内の釧路センチュリーキャッスルホテルで5年度管内市町村教委教育委員研修会を開いた。関係者約30人が参加し、釧路教育...

(2024-01-31)  全て読む

日教組第73次教育研究全国集会 木下委員長あいさつ概要

北教組木下委員長①  日教組第73次教育研究全国集会における、北教組の木下真一中央執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。  元日に発生した能登半島地震によって、多くの人命が奪われた。被災された方々も多くいる...

(2024-01-30)  全て読む

日教組 第73次教育研究全国集会 子主体の豊かな学びへ 瀧本委員長 働き方改革等

日教組教研集会全景  日本教職員組合(日教組、瀧本司中央執行委員長)の第73次教育研究全国集会が26日から3日間、札幌市内で開かれた。全国教研の道内開催は2005年1月の第54次集会以来19年ぶり4回目。対面開...

(2024-01-30)  全て読む

全国・道の女性校長会が研究大会 8月1、2日、札幌市で 未来に向けた学校経営究明

 全国公立小・中学校女性校長会(小池夏子会長)、道公立小・中・特別支援学校女性管理職会(山下尊子会長)は、8月1日午後1時から2日間、京王プラザホテル札幌で、第74回全国公立小・中学校女性校...

(2024-01-26)  全て読む

道公立小中事務職員協がセミナー 学校づくりの一翼担い 佐々木会長講話等通し研鑚

小中事務職員協冬季セミナー  道公立小中学校事務職員協議会(佐々木一会長)は12日、札幌市内の道教育会館で経験年数の少ない事務職員のための冬季セミナーを開催した。道内の若手事務職員30人が参加。佐々木会長による講話や本...

(2024-01-24)  全て読む

ほっかいどう学檜山地区検討会 独自のみち学習確立へ 厚沢部中 実践発表など

ほっかいどう学檜山地区検討会  【函館発】認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム檜山地区検討会が17日、厚沢部町立厚沢部中学校(玉置英樹校長)で開かれた。新保元康理事長による話題提供や実践発表を通して、外部人材を活用...

(2024-01-24)  全て読む