帯広市教育研究所 冬期研修講座(関係団体 2024-01-31付)
【帯広発】帯広市教育研究所は1月上旬の4日間、市内各所で冬季教員研修講座を開いた。生徒指導提要改訂の方向性や授業改善のポイント、児童生徒の実態に応じた特別支援教育など、時宜にかなった内容で全8講座を展開。講座によってはオンライン配信による受講枠を設け、より多くの教職員に学びの機会を提供した。
◆いじめ等防止研修 指導提要と照合を
市立大空学園義務教育学校の村松正仁校長が「改訂生徒指導提要から学ぶ今後の生徒指導の在り方」と題して、いじめ・不登校・非行防止研修を展開した。
「かつては教員の感覚や経験に頼られやすいものだった」という生徒指導に関して、平成22年から施行されている生徒指導提要の概要を説明した。令和4年12月に改訂され「“させる”生徒指導から“支える”生徒指導に転換し、子どもの成長を支えることが本質となる」と強調。その背景には、変動社会や子どもたちの多様な背景などの現状があることに触れ「児童生徒の心の叫びを組織的に把握し、データをもとに解決策を探る必要がある」と、不登校児童生徒数やいじめ発生状況等の推移を示した。
また、生徒指導を巡る法令の成立・改正を示し「教職員は法の理解をベースにした職業だと認識することが大切」と示唆。生徒指導提要には各問題につき関連法が記載されていることを説いた。
このあと、各校の生徒指導に関する取組を2軸3類4層構造に当てはめて交流。「生徒指導提要と照らし合わせることで、取組の厚みが確認でき、意義や指導の焦点化につながる」と呼びかけた。
◆国研・笠井調査官 学び合いへ問いを
国立教育政策研究所の笠井健一教育課程調査官は「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に向けて」と題して講義。
「急激な社会的変化の中で、未来の創り手となるために必要な知識や力を確実に備える」など、生徒指導提要改訂の背景を確認。「人工知能が飛躍的に進化する中、未知の状況を解決するために工夫できることは人間の強み」とし、問題発見・解決能力を育む授業が求められていることを説いた。
過去の全国学力・学習状況調査の結果から、応用問題の正答率が低いことを示し「深い理解が必要」と強調。令和の日本型学校教育の概要を示し「協働的に学び合える環境がすぐそこにあることが学校の良さ」と説いた。
また、子どもが自ら学び合うためには「教える」より「問いかける」必要があることを説明。「教室内に分からない子どもがいることを見逃さないように」「分かるようになるためにその時間頑張るのは先生だけではなく、教室にいる子どもたち全員」と伝えた。
◆子のSOSサイン 見逃さず寄り添い
帯広保健所の岡﨑奈穂美主任保健師、市健康推進課の原尾かおり主任補は「こどもたちのSOSに気付き、耳を傾けるための実践研修」と題して、ゲートキーパー研修を実施した。
うち原尾主任補はゲートキーパーを「悩んでいる人に気付き、声をかけ、話を聴いて、必要な支援につなげ、見守る人」と説明し、道教委の生徒指導資料をもとに、子どものSOSサインを紹介。「心のSOSは自分では気付かない場合もあり、周りの気付きが支えになる」と説いた。
「相談を促すが強要しない」「いつでも相談できることを伝える」など、声かけのポイントを解説した。「自分を気にかけてくれる存在がいると感じられることが、相談しやすい環境づくりにつながる」とし、相談を受ける際や相談窓口につなぐ時の留意点を確認。市が発行している「相談窓口ハンドブック」の活用や日頃の確認を推奨した。
このあと、中学生への声かけをテーマにしたシナリオに沿ってロールプレイを実施。悪い対応・良い対応の2種を3人一組で実践し、悩みを抱える子どもに対する寄り添い方を学んだ。
◆特別支援教育研修 心の困難を考える
特別支援教育研究大会を兼ねて研修講座が開かれ、市教委等でスクールソーシャルワーカーを務める高谷みゆきさんが講演した。
対人関係の土台となる親子間の「愛着」に関わり、愛着関係が築けなかった場合に、学校現場等で見られる児童生徒の心理発達上の困難をテーマに据えた。事例をもとに、当該する児童生徒や保護者の様子、学校の対応など、高谷さんが実際に見た現場やカウンセリングで気付いた点を説明した。
登校を渋る子どものカウンセリングを担当した際は、保護者の過干渉が一つの要因だと判明したことを振り返った。
子どもへの質問に保護者が答える姿勢などから、母子関係や距離感を推察。「過干渉は相互依存を引き起こし、支配まで達すると子どもの主体性を奪ってしまう」と伝えた。
このほか未就学児や小学生、大学生の事例を示した。
当該者とスクールソーシャルワーカーをつないだり、校種ごとに記録された情報を共有したりするなど、協働して支援に臨む学校の対応も併せて紹介。また、対象物への態度を相手と共有する「共同注意」、人と人がモノを媒介にしてやりとりする「三項関係」がコミュニケーション発達や愛着形成の基盤となることを解説した。
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(関係団体 2024-01-31付)
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