上川局 高・特校長会議 まなびフォーカス推進 管内教育推進の重点説明
(道・道教委 2024-04-25付)

上川局管内高・特長会議

 【旭川発】上川教育局は18日、上川合同庁舎で管内高校・特別支援学校長会議を開催した。今村隆之局長が6年度管内教育推進の重点を説明し、「学びを伸ばす」「学びを守る」「学びを支える」の三つのキーワードに「ICT利活用の推進」を加えた「上川まなびフォーカス」を推進していくとした。本年度は、四つのキーワードからさらに推進を図る「上川スポットライト」を設定し、検証改善サイクルの充実などの推進を呼びかけた。

 教育推進の重点はつぎのとおり。

【はじめに】

 前年度に引き続き「道教育推進計画」を基盤とし、特に推進すべき取組を「学びを伸ばす」「学びを守る」「学びを支える」の三つのキーワードによって整理した11項目18点に「伸ばす」「守る」「支える」の質を高める「ICTの利活用の推進」を加えて「上川まなびフォーカス」として示す。

 本年度は、キーワードごとに四つの「上川スポットライト」を設定し、より重点化を図った取組を推進する。

【学びを伸ばす~学力・体力向上に関わる取組】

 生徒の学力と体力の向上に係る取組については「学力を伸ばす」のキーワードで5項目7点を示す。

▼上川スポットライト

 「学びを伸ばす」のキーワードから「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」を設定した。

 各学校においては、自校の教育課程の編成、実施、評価および改善に関する課題がどこにあるのかを明確にして、教職員間で共有し改善を行うことによって、学校教育の改善を図り、カリキュラム・マネジメントの充実に努めることが大切になる。

 前年度においては、エビデンスによって学校問題を可視化し、目標を設定する取組は進んだが、一方で、ショートスパンで取組を検証し、改善につなげる実効性のある検証改善の取組とすることに課題が見られた。

 こうした状況を踏まえ、新しい時代に必要となる資質・能力の育成に向け「教科等横断的に資質・能力を育成する校内体制の構築」「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」について取組を推進するようお願いする。

 教育局としては「検証改善サイクルや授業改善において、エビデンスに基づく取組の検証・改善を図ること」について、取組を大きく推進してほしいと考えており「EBE協議会」を中心とした、エビデンスに基づく生徒の資質・能力の育成に向けた取組が充実するよう努める。

▼SDGs・ESDの推進

 自然環境や資源の有限性、貧困、イノベーションなど、地域や地球規模の諸課題について、子ども一人ひとりが自らの課題として考え、持続可能な社会づくりにつなげていく力を育むことが求められている。

 こうした状況を踏まえ、SDGs・ESDの推進に向け、特に「持続可能な社会の創り手を育む主体的・対話的で深い学びの実現」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、地域の施設や人材等の教育資源を活用した体験的な学習活動を促進するとともに、指導主事の指導助言のほか、道内外の実践事例や校内研修に役立つ資料の提供などに努める。

▼STEAM教育の推進

 AIやIoTなどの急速な技術の進展により、社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日においては、これまでの文系・理系といった枠にとらわれず、各教科の学びを基盤としつつも、様々な情報を活用してそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けられるよう、その資質・能力を育成する教科等横断的な教育であるSTEAM教育の推進が求められる。

 こうした状況を踏まえ、特に「教科等横断的な学習や探究的な学習等の実践」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、総合的な探究(学習)の時間における教科等横断的な学びに関する指導方法など、道内外の実践事例や校内研修に役立つ資料の提供に努める。

▼体力・運動能力の向上

 体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか、意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わり、まさに生きる力を支える重要な要素である。

 こうした現状を踏まえ、特に「課題や子どもの実態を踏まえた体力向上の取組の充実」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、学校や地域の特色を生かした「1校1実践」を促進するとともに、生徒同士が協働的に関わる中で楽しさや達成感を感じ、自ら進んで運動に親しむことができる資質・能力を育成する体育・保健体育授業の改善のため、道内外の実践事例や校内研修に役立つ資料の提供などに努める。

▼特別支援教育の推進

 特別支援教育に関する理解の高まりや、障がいのある子どもの就学先決定の仕組みに関する制度の改正により、特別支援学級や特別支援学校に在籍する生徒のほか、通常学級に在籍しながら通級指導を受ける生徒の数が増加している。

 こうした状況を踏まえ、特に「切れ目のない一貫した指導や支援の充実」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き「上川管内特別支援連携協議会」の協議内容も踏まえながら、特別支援学校などと連携し、市町村教委に対して、きめ細かな就学相談体制の充実に向けた支援のほか、多様な学びの場における個々の障がいの状態に応じた指導や支援の充実に努める。

【学びを守る~安心な学校に関わる取組】

 生徒が安心して学ぶことができる安心な学校づくりについて「学びを守る」のキーワードで、2項目4点を示す。

▼上川スポットライト

 「学びを守る」のキーワードから「不登校生徒への支援の充実」を設定した。

 不登校生徒への支援の充実については「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」等に基づき、学校、市町村教委、関係機関等において様々な努力がなされ、生徒の社会的自立に向けた支援が行われている。

 一方で、近年、不登校生徒が増加し、4年度の「生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、本道の公立小・中・高校を合わせると約1万3000人に上り、生徒指導上の喫緊の課題となっている。

 こうした状況を踏まえ「魅力あるより良い学校づくりの推進」「不登校の子どもを支援する体制の強化」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては「不登校によって学びにアクセスできない子どもをゼロ」にすることを柱に、取組を大きく推進してほしいと考えており、困った時や不安な時にいつでも「SOS」を発信できる雰囲気のある学級・学校づくりの促進や関係機関と連携した「生徒理解・支援シート」の作成による予兆への対応を含めた初期段階での支援の充実、校内教育支援センターやICTを活用した学習支援、教育相談等、多様な教育機会の確保に向けた取組の推進等「誰一人取り残されない学びの保障」に努める。

▼いじめ防止の取組の充実

 いじめへの対応については、初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けて取り組まれているが、いじめの重大事態については件数の増加傾向が見られる。

 こうした状況を踏まえ、特に「未然防止の促進」「早期発見・早期対応に向けた生徒指導体制の充実」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、生徒会活動での主体的ないじめ防止活動の促進や、道徳科を要とした学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の充実、「からかい」や「嫌がらせ」なども含めていじめを積極的に認知し、その解決に向けた学校いじめ対策組織による早期発見・早期対応の徹底、学校と教育委員会のいじめ対応に係る責務理解を深める研修の充実などに努める。

【学びを支える~地域連携に関わる取組】

 社会に開かれた教育課程の趣旨を踏まえ、学校と地域の連携について「学びを支える」のキーワードで2項目3点を示した。

▼上川スポットライト

 「学びを支える」のキーワードから「地域と学校の連携・協働の推進」を設定した。

 核家族化、共働き家庭やひとり親家庭の増加など、家庭を巡る環境が変化するとともに、都市化や過疎化等によって地域の社会関係資本が失われ、家庭や地域の教育力の低下が危惧される中、「令和の日本型学校教育」の実現に向けては、家庭、地域等を含め、学校教育を支える全ての関係者が、それぞれの役割を果たし、互いにしっかりと連携することが重要となる。

 こうした状況を踏まえ「主体的に地域に関わる生徒の育成」「学校と地域をつなぐ人材の配置・育成の推進」について、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、地域の課題解決や地域創生に係る学習成果の情報提供、地域課題探究型の学習活動の推進および「STEAM教育推進事業」における「探究チャレンジ上川」の実施によって、地域や実社会で問題発見・解決につなげる教科等横断的な取組や探究のプロセスを踏まえた学習活動への支援を行うとともに「学校を核とした地域づくり」を通し、未来を担う子どもたちの豊かな成長を支える地域社会の実現に積極的に貢献する。

▼生涯学習・社会教育の振興

 地域と歩む持続可能な教育を実現するためには、道民が生涯を通じて活躍することができるよう、必要な時に必要な知識や技術を身に付けて成長し、他者と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えて、自らの可能性を最大限伸ばしていくことが必要となる。

 こうした状況を踏まえ、特に「生涯にわたる学習活動の推進」について、各地域の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、社会人の学び直しや多様な背景を持つ人々のニーズに応じた学習機会の充実のほか、社会教育主事による関係団体の活動、人材育成、組織マネジメント、方向性などへの指導助言の充実に努める。

【学びを守る、支えるに関わる取組】

 「学びを守る」「学びを支える」のどちらにも関連する項目として、2項目4点を示す。

▼安全安心な教育環境の構築

 近い将来に発生が懸念される巨大地震や激甚化・頻発化する自然災害のほか、学校における活動中や登下校中の事件・事故、SNSの利用による犯罪など、生徒の安全を脅かす様々な事案も次々と顕在化している。

 こうした状況を踏まえ、特に「交通安全・防犯・防災教育の推進」「安全確保や災害対応体制の確立」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、家庭、地域防災関係機関との連携による避難所設営体験のほか、非常食調理などの体験活動を核とする「1日防災学校」の取組の推進や「学校安全計画」「危機管理マニュアル」に基づく安全体制の見直しと構築の促進に努める。

▼働き方改革の推進

 学校における働き方改革の目的は「教員のこれまでの働き方を見直し、自らの授業を磨くとともに日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、生徒に対して効果的な教育活動を行うことができるようになること」となる。

 こうした状況を踏まえ、特に「本来担うべき業務に専念できる環境の整備」「部活動指導に関わる負担の軽減」について、各学校の状況を踏まえ、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、引き続き、働き方改革の手引「Road」の積極的な活用を促進するとともに、義務教育指導監や指導主事による指導助言のほか、道内外の実践事例などの提供、「北海道における部活動の在り方に関する方針」に基づく取組の推進、休日の部活動の地域移行に向けた取組の支援、校務における教育DXの促進に努める。

【ICT利活用の促進】

 学びを「伸ばす」「守る」「支える」の質を高める取組をつなぐ項目として、1項目2点を示す。

▼上川スポットライト

 「ICT利活用の促進」のキーワードから「ICTを適切に活用した個別最適・協働的な学びの充実」を設定した。

 コロナ禍を経て、世の中全体のデジタル化・オンライン化は大きく促進され、今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所でICTの活用が日常のものとなっている。

 Society5・0時代に生きる子どもたちにとって、1人1台端末環境は、もはや、令和の時代における学校の「スタンダード」であり、PC端末は、鉛筆やノートと並ぶマストアイテムとして、特別なことではなくなった。

 未来の社会を見据え、生徒の資質・能力を育成するに当たっては、学習指導要領の趣旨を踏まえ「個別最適な学び」と「協働的な学び」という観点から学習活動の充実の方向性をあらためて捉え直し、これまでに培われてきた工夫とともに、ICTの新たな可能性を指導に生かすことで、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげていくことが重要となる。

 前年度においては、多くの学校で、授業場面でのICTの利活用や校内研修の充実が図られたが、一方で「ICTを使うことが目的化」してしまい、ICTを効果的に活用した個別最適・協働的な学びの一体的な充実に課題のある学校も見られた。

 こうした状況を踏まえ「ICTを適切に活用した個別最適・協働的な学びの充実」について、取組を推進するようお願いする。

 教育局としては、特に、本年度は、高校の全ての学年において、1人1台端末の環境が整うことを踏まえ「ICTを利活用した探究的な学びの充実」「子どもがICTも活用しつつ、自ら学習を調整しながら学んでいく授業づくり」について、取組を大きく推進してほしいと考えており「新しいかたちの学び授業力向上推進事業」におけるICTを効果的に活用した授業実践事例の作成および管内への普及に係る研修等の実施、局独自事業「上川プロジェクトIPPO」を発展させた管内コンソーシアムの充実等、ICTの利活用による学習指導要領の趣旨を踏まえた授業改善・授業改革の促進に努める。

【むすびに】

 高度情報化やグローバル化の進展など、社会の変化は一層加速度を増し、複雑で予測困難になっている。

 このような未来を生きていく子どもたちが、より良い社会と幸福な人生の創り手となっていくためには、確かな学力や豊かな人間性、健康や体力で構成される「生きる力」を身に付けていく必要があり、中でも、「健康」はその基盤になるものとなる。

 加えて、子どもたちの多様化が進み、様々な困難や課題を抱える生徒が増える中、生徒指導上の課題が深刻化する現状においては、何より子どもたちの命を守ることが重要となる。

 「健康」「命を守る」の二つを基盤とし、四つの「上川スポットライト」について、引き続き、理解と協力をいただくようお願いする。

(道・道教委 2024-04-25付)

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