後志管内6年度教育推進の重点 子一人一人の幸せを 子に愛され信頼される学校
(道・道教委 2024-05-08付)

後志教育局・6年度教育の推進の図
後志教育局・6年度教育の推進の図(クリックすると拡大表示されます)

 【小樽発】後志教育局の新居雅人局長は4月中旬、後志合同庁舎で行われた後志管内公立小・中学校長会議で、6年度管内教育推進の重点を説明した。「子ども一人一人の幸せの実現を目指す後志教育の推進」のテーマのもと、①子ども一人一人の可能性を引き出す教育の推進②学びの機会を保障し質を高める環境の確立③地域と歩む持続可能な教育の実現―の三つの柱と、子どもを主語にした授業の推進など四つの小テーマを提示。リーダーシップを発揮し、教職員や保護者、地域、関係機関など全ての教育力を結集して、チーム学校として全ての子どもに愛され、全ての人から信頼される学校経営を進めていくよう求めた。

 教育推進の重点の概要はつぎのとおり。

【はじめに】

 前年度、管内教育推進の重点として、重視していただきたい12の視点を示し、各学校の実情を踏まえて戦略的に学校経営を進めるようお願いをしたところであり、その成果として、端末を活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が図られたり、全ての子どもが学びにアクセスできるようオンライン授業を配信したり、校務の効率化に向けてICTが効果的に活用されたりするなど、各学校で様々な優れた実践が行われ、実り多い1年になった。

 各学校で取り組まれている子どもを主語にした教育活動の成果が確実に現れてきていることから、優れた実践が管内に広がることを願い、テーマは、引き続き「子ども一人一人の幸せの実現を目指す後志教育の推進」とし、学校の取組状況や国・道の各種計画、答申、調査結果等を踏まえ、本年度の管内教育推進の重点を作成した。

 本年度の重点は「北海道教育推進計画」に合わせて「3つの柱」「4つの小テーマ」で整理し、それぞれの小テーマごとに「推進いただきたい具体的な内容」と「推進の視点」を設定した。「推進の視点」については、小テーマごとに、本年度、特に推進いただきたい2点を示し、各学校には、小テーマと自校の重点を照らし合わせ、自校独自の推進の視点を1~2点記載いただき、柱とつながる取組として推進いただきたいと考えている。

 本年度の管内教育推進の重点に各学校の推進の視点が加わることで、管内の全ての教職員が、日常的に重点を意識して取組を進めていくことを期待している。

【子ども一人一人の可能性を引き出す教育の推進】

 国が昨年12月に公表した「義務教育に関する意識に係る調査」によると「授業の内容が難しすぎると思う」という問いに対して、「とてもあてはまる」または「少しあてはまる」と回答した子どもは、小学校4年生から中学校3年生までの全ての学年において2割から3割程度おり、反対に、「授業の内容が簡単すぎると思う」という問いに対しては、学年、学校段階が上がるにつれて割合が減少する傾向にあるものの、最も割合が少ない中学校1年生でも約1割が該当するなど、授業の内容が自分にはあっていないと感じている子どもが一定程度いることが明らかになった。

 また令和3年度の調査によると、道内の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、特別な教育的支援が必要と校内委員会が判断した児童生徒の割合は、小学校で7・7%、中学校で2・7%であり、特別支援学級に在籍する児童生徒数は、小・中学校を合わせて、平成30年度の1万3915人から令和4年度の1万8381人へと約1・3倍に増加しており、特に、自閉症・情緒障がい特別支援学級の在籍者数が、同様の比較で7886人から1万677人へと約1・4倍に増加していることから、子ども一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導や支援を行うことが一層求められている。

 このようなことから、小テーマを「子どもを主語にした授業の推進」とし、推進いただきたい具体的な内容を「子ども一人一人の学力、体力・運動能力等の向上のため、“個別最適な学び”と“協働的な学び”の一体的な充実を図り、後志管内の全ての子どもが“この学校で学ぶことができてよかった”と実感できる取組の推進」とした。

▽クラウドを活用した教育活動の推進

 現在、多くの学校で、子どもたちが端末を活用して、調べたり考えたりしたことをまとめ、表現する授業や、子どもが自己の変容を確認したり、学びを振り返ったりする授業が行われている。

 今後は、クラウドを活用し、自分の学びに最適な教材や情報と出会い、子どもたち自身で自分たちの学びを深めていくよう教育活動の推進をお願いする。

▽教育的ニーズに的確に応える指導の充実 

 多くの学校で全ての教員が参加する特別支援教育に関わる研修を実施するなど、教員の指導力の向上に向けた取組が行われ、特別な教育的支援が必要な子どもはもとより、全ての子どもが「分かる・できる」を実感できる授業が行われてきている。

 今後は、障がいによる学習上や生活上の困難の改善・克服に向けて、子どもの実態に応じたICTを活用した授業を一層推進していただくようお願いする。

【学びの機会を保障し質を高める環境の確立】

▼子どもたちの環境

 管内の子どもたちの状況をいじめと不登校の現状で見てみると、4年度のいじめの解消率は、小学校で99・7%、中学校で97・2%となっており、学校が、いじめの解消に向けた丁寧な対応と望ましい人間関係の構築に向けたきめ細かな取組を進められたことが分かる。

 不登校については、登校できるようになった児童生徒が、小学校で52人、中学校で82人いた。30日以上休んでいた子どもが登校できるようになるまでには、学校や関係機関の方々の日々の丁寧な対応があったからだと思う。

 このようなことから、小テーマを「子どもが安心して学ぶことができる環境の確立」とし、推進いただきたい具体的な内容を「子ども一人一人のよさや可能性を最大限伸ばすため、よりよい人間関係の構築に関する取組と誰一人取り残さない多様な学びの機会の充実を図り、後志管内の全ての子どもが“自分が活躍できる場所がある”と実感できる取組の推進」とした。

▽いじめ見逃しゼロ

 多くの学校で、学級担任以外の教員による個人面談や学校独自のいじめの認知に向けたアンケート調査など、学校の規模や子どもの発達の段階に応じた様々な取組が行われている。

 今後は、これまでの取組を継続いただくとともに、学級での生活をより良くするために学級会で話し合い、互いの意見の良さを生かして解決方法を決める取組や小学生と中学生が一緒になってより良い学級や学校づくりについて話し合う取組など、より良い人間関係の構築に向けた取組を進めていただくようお願いする。

▽学びにアクセスできない子どもゼロ

 現在、多くの学校で、「児童生徒理解・支援シート」を作成し、家庭や関係機関等と連携して支援したり、オンラインによる学習指導や教育相談を実施したりしている。

 今後は、国の「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)や道教委が作成した「HOKKAIDO不登校対策プラン」などを活用いただき、不登校により学びにアクセスできない子どもがゼロになるよう取組の充実をお願いする。

▼教員の環境

 各学校では「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現に向けて、教員自身がこれまでの働き方を見直し、子どもと向き合う時間や自らの学びを深める時間を確保することが大切。

 このようなことから、小テーマを「教員の資質能力の向上」とし、推進いただきたい具体的な内容を「子ども一人一人に対して効果的な教育活動を推進するため、教員一人一人が、ワークライフバランスの視点をもちながら、自らの授業を磨き、人間性や創造性を高める取組の推進」とした。

▽学校DXの推進

 教員は、子どもたちの人生に大きな影響を与え、子どもたちの成長を直接感じることができる素晴らしい職業であり、教員や友人との学校生活は、卒業後も子どもたちの心の中に残り続けるもの。そして、これまで、学校教育が大きな成果を上げることができたのは、高い専門性と使命感を有する教員の献身的な取組によるものだと思う。

 一方で、子どもたちが抱える困難が多様化・複雑化し、保護者や地域の学校や教員に対する期待が高まっていることなどから、結果として業務が積み上がり、教員に負担をかけているという状況も見られる。

 今後は、円滑な学校運営の支援と教員の負担軽減を図るためスクールロイヤーによる法務相談を実施するなど、関係機関と連携した取組の充実や、校務の効率化に向けたクラウドを活用した教員間での情報交換の励行や学校と保護者等間の連絡手段のデジタル化などの取組を進めていただくほか、教育課程を編成する責任者である校長の皆さまには、標準授業時数を大幅に上回っているとされる1086時間を超えることのない教育課程の編成と実施に取り組んでいただくなど、これまでの働き方を一歩進めた取組をお願いする。

▽教員研修の充実

 教員には、技術の発達や新たなニーズなど学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて探究心を持ちつつ自律的かつ継続的に新しい知識・技能を学び続け、子ども一人一人の学びを最大限に引き出すという役割がある。昨年度は、両校長会が道外研修を企画し、管理職を含め18人が学びを深め、報告会には100人を超す人が参加し、ShiriBeshi Learning Boxには、16の講座に約300人が自主的に参加し学びを深めるなど、後志の教育を支える強い力を感じた。

 今後も、管内の全ての教員が教員育成指標に示されているキーとなる資質・能力を目安とし研鑚に努めることができるよう、教育局としても教員に求められる研修を企画していくので、所属職員の日常の服務監督を行う校長の皆さまには、国が策定した「研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励に関するガイドライン」等を活用し各教員の実態に応じた研修への奨励をお願いする。

【地域と歩む持続可能な教育の実現】

 保護者や地域住民等が学校運営に参画するコミュニティ・スクールや幅広い地域住民等の参画によって、地域全体で子どもたちの成長を支え地域を創生する地域学校協働活動の推進など、学校と地域の連携・協働が進められてきている。

 このようなことから、小テーマを「学校・家庭・地域の連携体制の充実」とし、推進いただきたい具体的な内容を「子ども一人一人が地域へ愛着・誇りをもつことができるよう、学校、家庭、地域全体が一層連携し、子どもたちと様々な場面で関わることで子どもたちが地域について主体的に考え、後志管内の全ての子どもが“地域や社会をよくするために何かしてみたい”と思える取組の推進」とした。

▽コミュニティ・スクールの取組の充実

 管内では、地域住民等が当事者として学校運営に参画することを通じて、学校と地域の連携・協働体制が組織的・継続的に確立され、「地域とともにある学校づくり」が進められてきている。

 今後は、学校と地域住民等が力を合わせて学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」と学校と地域が相互にパートナーとして行う「地域学校協働活動」の一体的な推進や「よりよい学校教育を通してよりよい社会を創る」という理念を学校と地域全体が共有し、地域と連携・協働しながら、子どもたちに未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む取組が一層充実するようお願いする。

▽学校間連携の推進

 前年度は、EBE協議会において、小中高の校長が12年間を見通した資質・能力の育成の在り方について、教務主任等が各種調査結果等から見えてきた課題と具体的な改善策について協議を行い、連携の充実につなげたり、総合的な学習(探究)の時間の計画を学校間で接続し子どもの学びが深まるよう工夫したりするなど、教育課程を中核に据えた連携が進んだ。

 今後は、中学校区で教職員の合同研修会を開催し、9年間を通して子どもたちに必要な資質・能力を育むことができるよう、各教科等や各学年の指導の在り方を考えるなど、指導の充実を図る取組をお願いする。

【おわりに】

 これまで管内の教育関係者が築いてきた信頼を基盤に、理念を共有し、本年度の推進の重点を基にベクトルを合わせ、管内教育の質の向上を目指すことで、令和6年度が後志管内の全ての子どもにとって、優しい仲間、素晴らしい先生方に出会い、協働的に学びながら、「この学校で学ぶことができてよかった」と心から思い、学級や校内、家庭、地域の中で「自分が活躍できる場所がある」ことで自分に自信を持ち、自分が気付いたこと、仲間と考えたことを「地域や社会をよくするために何かしてみたい」と実行に移すことができる1年になることを願っている。

 そのため、校長の皆さまには、リーダーシップを発揮され、教職員はもとより、保護者、地域、関係機関の人々など、全ての教育力を結集して、チーム学校として全ての子どもに愛され、全ての人から信頼される学校経営を進めていただくようお願いする。

 教育局も、管内の子ども一人一人の幸せの実現に向け、各学校と連携を図り、全力で取り組んでいくので、皆さまの理解と協力をお願いする。

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後志教育局長・新居雅人
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