リーディングDX校の帯広柏葉高 生成AI 利点生かして 校内研で東大院・吉田氏講義(学校 2024-06-14付)
リーディングDX校内研修
【帯広発】文部科学省事業「リーディングDXスクール事業」の指定を受けている帯広柏葉高校(鈴木究校長)は5日、同校を主会場に校内研修を実施した。同校教職員に加え、オンラインを通じて全道の教育委員会や学校等が参加。東京大学大学院工学系研究科准教授で、学校DX戦略アドバイザーを務める吉田塁氏が、個別最適な学び・協働的な学びの一体的な充実や、学校における生成AIの活用方法などに関して講義した。
同校は5年度から文科省「リーディングDXスクール事業」の指定を受け、6年度は生成AIパイロット校として取組を推進。生成AIを活用した授業の開発や、教員や生徒の情報活用能力を測定する実態調査の実施などを予定している。
事業の一環として、学校DX戦略アドバイザーを招いた校内研修を年3回開催する。5日に初回が開かれ、東大大学院工学系研究科准教授の吉田氏が「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」「生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の2テーマのもと講義した。
令和の日本型学校教育の要点をまとめ「個別最適な学び、協働的な学びに向けてICTの活用が重要」と説いた。効果的な学習デザインに必要な「技術」「教授法」「内容」の三つの要素からなる「TPACK」を踏まえ「技術に関する知識も必要になってきている」と解説。先行研究から、教員のテクノロジー統合の進捗状況を示す指標の6段階を示し「最終的には、ICTを活用した創造的な授業づくりが実現できる」「教員間で学び合う環境が大切」と伝えた。
個別最適な学び、協働的な学びについては、国内外の研究事例をもとにポイントを解説した。協働的な学びにおいては、双方向性のある授業によって、上位から下位まで全ての層で成績が上昇する研究結果が示されており「一人ひとりに責任を持たせ、一人ひとりが取り組み交流できる環境づくり」の重要性を示唆。実現に向けては、組織的体制づくり、ビジョン共有によって、教職員のアクティブ・ラーニングに対する理解を深める必要があることを示した。
生成AIに関しては「学習データをもとにコンテンツを生成できる人工知能」「関連技術やサービスの進展が早い」と、2点の特徴を示した。児童生徒には、フィードバック作成や相談相手としての活用など、個別学習支援やグループ学習支援の面、教職員には資料作成や評価の補助など、授業支援や校務支援の面でメリットがあることを説明した。
一方で、出力が不正確な場合があり、バイアスが存在するなどのデメリットもあるため「生成AIを信用しすぎず、人の目でチェックする必要がある」と強調した。
ガイドラインを踏まえ「限定的な利用から始める」「情報活用能力を育む教育活動を一層充実させる」「教員研修や校務等での適切な活用を推進する」と、生成AI活用の方向性を提示。「新たな技術のリスクを把握しながら、リスクをできるだけ抑えてプラスの要素を使うことが大切」と伝えた。
参加者が「技術活用に向けた教員のモチベーション向上を図る方策」を問うと「自身の業務負担軽減や、教育の質向上につながることなど、メリットを感じてもらうこと」と回答。「授業の効果を測定する方法」に関しては「アンケート調査や授業前後のテスト、教員相互の授業参観による評価」を挙げた。
「教員養成課程でICTの活用を学ぶ可能性」に関しては、5年度から東大の教職課程科目に「ICTを活用した効果的な授業づくり」が新設され、吉田氏が教壇に立っていることを説いたが「1単位扱いの選択科目であり、生成AIの取り扱いなどを含めて必修化されるには年数がかかるのでは」と伝えた。
(学校 2024-06-14付)
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