函館聾のボランティアバンク 地域人材が教育活動支援 聴覚障がいへの理解深める
(学校 2024-06-19付)

函館聾学校ボランティアバンクの取組
絵本の読み聞かせを行う学生ボランティア

 【函館発】函館聾学校(門眞義弘校長)は5年度から教育活動の協力者を募るボランティアバンクを始めた。登録者は約半年で倍増し、高大生や地域住民が手話を学びながら遊び相手や学習補助に携わることで聴覚障がいに対する理解を深めている。少子化を背景に子どもたちの交流機会が減少する中、多様な他者と触れ合う契機にもつながっている。

 13日、同校幼稚部の朝の会。道教育大学函館校の櫛引七純さん(2年)が覚えた手話で絵本の読み聞かせを行うと、1人の園児が笑顔で駆け寄った。櫛引さんは教職員の手話を参考にしながら園児と談笑し、共に交流を楽しんだ。

 櫛引さんは4月から週1回、学生ボランティアとして同校の幼稚部で支援に当たる。同校の教職員が講師を務めた大学の講義でボランティアバンクの取組を知り、応募した。「手話を覚えなければならないことにハードルを感じていたが、子どもたちとの交流を通して徐々に覚えていける。様々な障がいのある子どもたちへの理解を深めたい」と意欲を示す。

 同校は昨年4月、門眞校長の「聴覚障がいに対する理解の普及・啓発につなげたい」との思いをきっかけに、コミュニティ・スクールでボランティアバンクの立ち上げを決定した。大学、町内会の回覧板、学校ホームページ等で広報活動を行った結果、ことし1月時点で10人だった登録者は6月時点で27人に増加。地域の手話サークルに加入している住民の呼びかけもあり、現在は10~50代までの高大生や卒業生、地域住民らが協力している。

 希望者は校内の授業参観や手話・指文字体験など聴覚障がいに対する理解を深める約90分間の講習を受けたあと、絵本の読み聞かせや町内の奉仕活動などのほか、子どもたちが受ける発音明瞭度検査の支援ができるようになる。

 手話を知らない人や登録者が増加した場合のバックアップ体制も整備。相互の理解を深めるため、7月にワールドカフェ形式の交流会、11月に子どもや教職員、保護者、学校運営協議会委員らが体育館に集まって食事を楽しむバイキング給食を取り入れる予定だ。

 ボランティアが必要な背景の一つに学校規模の縮小がある。同校によると、近年は人工内耳や補聴器の性能向上など医療の高度化が進み、通常学級への通学を希望する保護者も増えたという。子どもたちのコミュニケーション活動に限りがあり、交流機会の創出も課題となっている。

 また、聾学校の教員として働く際は、特別支援学校教諭免許状の聴覚障がい者に関する教育の領域を取得する必要があるが、道内で資格を取得できる大学はゼロ。ほとんどの教員が人事異動で聾学校に転任した際に道教委の認定講習で免許を取らなければならず、専門性の維持・継承の観点からも聴覚障がいに対する理解の啓発や普及は急務となる。

 同校では「母校の力になりたい」という卒業生や過去に聾学校での勤務経験がある教職員も制度に登録。手話ができる人とできない人が共に子どもたちの活動を見守っている。平日の教育活動のため、日程調整が難しい課題もあるが、橋谷利崇教頭は「部活動や学習発表会の練習など様々な場面で子どもたちの活動の幅を広げられれば」と期待する。

(学校 2024-06-19付)

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