札幌旭丘高 数理DS学校設定科目 SS統計学を位置付け 適合度検定など発展的内容
(札幌市 2024-10-09付)

市立札幌旭丘国研調査官来校
収集したデータと計算に基づく考察を発表する生徒たち

 市立札幌旭丘高校(尾﨑茂樹校長)は本年度、数理データサイエンス科2年生の学校設定科目に「SS統計学」を位置付けた。文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の一環として導入したもので、生徒は「適合度検定」など現行の高校数学を発展させた内容を学習している。国立教育政策研究所の指定事業で視察に訪れた文科省の小林廉教科調査官は「批判的思考力を養う観点は、情報化社会において正しい判断を養う意義が大きい」と話しており、物事を多面的に捉え、本質を捉える力を育む統計学の重要性が高まっている。

 2日、数理データサイエンス科2年生の教室で行われたSS統計学の授業。適合度検定を用いた学習のプレゼンテーションが行われた。

 生徒は「本科は普通科と比べて理系教科を得意とする傾向が強いか」「学科内におけるコロナ禍の感染状況」など日常的な疑問から課題を設定した。

 あるグループは「本科の女子生徒は通常の女子生徒と得意教科の傾向が同じである」「得意教科の傾向が異なる」といった仮説を立て、得意教科の傾向などを観測した上で、適合度検査の計算で用いる期待値度数、カイニ乗値を計算。有意水準で仮説棄却の有無を判断し「理想値と比較すると、得意科目がないと回答した割合が少なかった。この結果から、それぞれが自分の特性を理解していると言える」「入試の配点が理系科目重視の傾斜配点になっていることが影響しているのではないか」と考察した。

 4年度に設置された数理データサイエンス科は、理数科のカリキュラムを基盤とした学科。1年生の数学科では「回帰直線」などのデータ分析単元を設け、統計に関する素養を育む。学んだ知識は同校の課題研究「さっぽろ探究」に生かすことで、統計的な課題解決の手法や課題探究の見通しを持てるようにしている。

 本年度からは学校設定科目として「SS統計学」を2年生で1単位設定した。その中で扱う「適合度検定」は、一般的な事象と身の回りの集団のデータを比較し、特性や影響要因を検証する手法。現行の高校数学における学習指導要領には盛り込まれていないが、科学的根拠に基づいた結果が導き出せるため、主張や考察の説得力を高める効果が期待できる。

 本年度は、国研の実践検証協力校に選ばれ、同日、文科省の小林教科調査官が同校を訪れた。現行の学習指導要領の実施状況を確認するとともに、次期学習指導要領の検討に向けて授業の様子を視察した。

 授業者の田村淳教諭との意見交換では、適合度検定に対する生徒の理解度や数学科と情報化のすみ分けが話題に。

 田村教諭は学習指導要領に盛り込まれていない分野を指導する難しさについて言及し「指導の経験がない教員も多い中、教育課程上の位置付けを早い段階から行うべきか、今後模索していきたい」と統計に触れる機会の拡充に意欲を示した。

 令和2年度以降、小・中学校、高校で順次導入が進んだ現行の学習指導要領では、各校種でデータを読み解き、考察する数学的見方・考え方を働かせる教育の充実が図られた。

 高校では、情報化社会において生徒が統計を読み取り、正しい判断をするスキルの育成が求められており、小林教科調査官は「一般的な視点とは異なる角度で仮説を立てる“批判的思考力”の育成は、今求められている教育の一つとして重要視されている。正しい情報を見抜く手段として、統計学を知る必要は大きい」と意義を強調する。

(札幌市 2024-10-09付)

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