本道教育の在り方議論 道教育振興会 50周年フォーラム
(関係団体 2024-12-05付)


150人が参加し、率直な思いに耳を傾けた

 北海道教育フォーラムは「北海道教育会議」と「子育てを深めるみんなの教育フォーラム」を統合したもの。参加型パネルディスカッション形式で本道教育の現状を探り、今後の在り方や展望を語り合う場として、教育関係者約150人が参加した。

 濱田会長はあいさつで、教育現場におけるICTの活用が進み、学びの質を高める教育が前進する一方で「子どもたちの集中力減少を招き、学力低下につながっている課題も耳にする」と指摘。学びの場や内容、従来の枠にとらわれない新たな学校教育を推進する中で「メリットの陰に潜むデメリットを見過ごすことなく、あらためて学校の存在意義を確かめる必要がある」と訴えた。

 北海道教育フォーラムを通して共有化された内容が具現化されることで「持続可能な社会のつくり手となる子どもたちを育むための推進指標となり、家庭や学校、地域がより関わり合いを強くし、つながりが広がっていくことを期待する」と述べた。

◆教員不足解消や 働き方改革急務

 パネルディスカッションは2部構成。第1部は「北海道の教育と子どもの育ちの現状を探る」をテーマに、道小学校長会会長の末原恵蔵氏、道高校長協会会長の宮澤一氏、道国公立幼稚園・こども園協議会副会長の菅原由美氏、道教委社会教育課課長補佐の長岡広之氏、札幌市教委教育課程担当課長の大井一雄氏が登壇した。

 末原氏は、コロナ禍を契機に、ICT環境の整備や教育活動の見直しが進んだことを示す一方で、教員不足が深刻な状況にあることを強調。学校現場の慢性的な多忙化に拍車をかけていることを訴え「学校の疲弊化は、結果として子どもたちのためにならない。対策が急務だ」と述べた。

 宮澤氏は、先行き不透明な時代を生き抜くために①挑戦力②対話力③回復力―の三つを身に付けさせる必要があるとし、幼児教育から高等教育までを接続した系統的な教育の重要性を説いた。

 また「多様な学習ニーズに対応することが高校教育に課せられた課題」と指摘。教員の業務が多岐化する一方で、教員離れが深刻な状況を憂慮し「今こそ行政と学校が一体となって働き方改革に進まなければならない」と訴えた。待遇改善や定数改善などを例に「教員がブラックであるというイメージを払拭しなければ“国家百年の計は教育にあり”という考えが立ち行かなくなる」と警鐘を鳴らした。

 菅原氏は「子どもたちの“やってみたい”をいかに私たちが見つけて、支えてあげるかが大切」として、実体験を通した学びの大切さを説いた。

◆地域や家庭の 理解が重要に

 第2部では「北海道教育のこれからの在り方・展望を探る」と題して、道中学校長会会長の河村克也氏、道特別支援学校長会会長の四木定宏氏、道PTA連合会会長の後藤一樹氏、長岡氏、大井氏が語った。

 河村氏は「“子ども一人ひとりを主語にする”というキーワードを、学校だけではなく家庭や地域にも広げていく必要がある」と強調。本道におけるコミュニティ・スクールの導入率が8割を超えている一方で「熟議がしっかりとできているかを考えて、仕組みを構築しなくてはならない」と述べた。

 教員の担い手不足に触れ、今後15年で教職員が大幅に入れ替わる現状を指摘。教員を志す人材を増やすためには「私たちが今、児童生徒たちに背中を見せることが必要ではないか」と呼びかけた。

 四木氏は、児童生徒数が減少傾向にある中で、特別支援教育を受ける児童生徒が増加し続けている状況を指摘した。「従来の枠組みでは対応できない状況が迫っている」と危機感を示し、インクルーシブ教育の重要性を強調。小・中・高校で障がいのある児童生徒を包括的に受け入れ、共に学ぶ環境をつくるためには「地域や家庭の理解がなければならない」とし、保護者の教育への不安を解消する必要性を説いた。

 後藤氏は、今後、人口減少時代を迎えるに当たって、教師や保護者も多様化していく可能性に触れ「教師や保護者が互いに切磋琢磨する時代が訪れる」と指摘。「子どもたちにとって、教師と保護者の仲が良いことはプラスでしかない」として、効率化だけを追い求めるのではなく「しっかりとしたコミュニケーションを図る環境づくり」の大切さを訴えた。

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道小・末原会長

高校長協会・宮澤会長

幼稚園会・菅原副会長

道中・河村会長

特別支援・四木会長
道P連・後藤会長
道P連・後藤会長

(関係団体 2024-12-05付)

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