旭川市西御料地小の挑戦 子主体の複線型授業へ
第8回(道・道教委 2024-12-20付)
それぞれが設定した課題に向かって協働学習する様子
前年度に続き文部科学省のリーディングDXスクール事業の指定校に選ばれた旭川市立西御料地小学校(佐藤聖士校長)。校務DXに注力した前年度の成果を踏まえ、本年度は児童の主体性や自律性を重視する「複線型」による授業づくりに挑戦。試行錯誤を重ねる中、児童の学びや教員の姿に変化が表れている。
複線型授業は個別学習、協働学習、教員による助言など複数の学習内容・活動が同時に展開される授業形態。児童生徒は自身の理解度や興味・関心に合わせて学習方法を選択し、学びの目標に向かう。
同校は視察した愛知県春日井市立藤山台小学校の学習過程を参考に、今春から授業の進度や課題の設定などを児童たちに委ねる授業を実施。グーグルクラスルームで課題、ゴール、授業の流れ等を提示してチャットで予想や見通しを交流するほか、ジャムボードでまとめた情報のグループ分けや関連するものを線でつなげるなど考えをまとめさせた。スライドにまとめた考えを友達と見せ合って考えを深め、スプレッドシートで学びの段階を確認。目標までの進み方を考える授業に取り組んだ。
結果、児童たちは自分の考えに応じて調べ活動やまとめを行うようになったものの、まとめの内容も類似して複線型にならない課題が浮上。このため1学期後半から提示する課題やまとめを子どもたちに委ねる方向にシフトした。授業の趣旨と関係のない課題を設定することがないよう大きな課題を共通とし、ゴールまでの道筋やまとめを委ねるやり方で授業を行った。
児童たちに委ねる授業を意識するあまり、教師が児童を見守るだけになってしまう課題も。つまずいている児童の支援を行ったり、課題のより良い解決方法を示したりと教員の関わり方を模索した。
◆
自走する授業へ
学年・教科越え交流
当初は分からないことが多い教員が大半だったため、石田直也主幹教諭を中心にDX推進委員会を組織。委員の教員が自由進度学習など複線型授業の例を披露することで他の教員に見通しを持たせ、以降の校内研修で各学年・教科の教員が実践し、ブラッシュアップする流れをつくった。
担当の学年・教科の枠にとらわれない実践交流の場を設けたことで効果的事例の交流が活発化。校内研修のみならず、授業の合間、休み時間にも意見を交わし、児童が自走する授業を模索する意識が高まっている。
授業改善を続ける中、児童の様子に変化が表れてきた。一斉型の授業や友達と共通の課題を解決する授業とは違い異なる課題に一人で考える必要性から集中力が向上。リーディングDXスクール事業の中核を担う石田主幹教諭は「子どもたちから“この授業のやり方はとても疲れる”と聞くが、そう言いながらもニヤッとする。一人ひとりが調べ学習などで自身が設定した課題を解決し、ステップアップを実感して、それを交流できているからだ」と成果を話す。
情報分析能力の向上も見られ、重要な部分に線を引くだけではなく文章と資料とのつながりを矢印で表したり、色分けしながら情報を分類・抜き出ししたりできるように。協働学習や個別学習のどちらが適切かを自分なりに分析し、自分に合った学びのスタイルを選択する授業が進められるようになっているという。
◆
トライ&エラーで
失敗恐れず挑戦を
新たなアプリへの対応、タイピング速度、必要な情報を選択してより深く学びを進めることのできる力の育成など、つぎなる課題も見えてきた。
石田主幹教諭は「授業を改善するためにはとにかく挑戦してみること。失敗を恐れないトライアンドエラーの精神が大切だ」と語る。
(道・道教委 2024-12-20付)
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