【解説】幸福度のパラドックス
(解説 2025-06-06付)

 ユニセフは「レポートカード19~日本の子どものウェルビーイング」を公表した。日本の子どもの幸福度の総合順位は36ヵ国中14位。このうち身体的幸福度は1位、精神的幸福度(生活満足度、自殺率)は32位、スキル分野は12位だった。報告書では身体的健康で首位を維持しながらも自殺率が上昇する日本を「両極端な結果が混在するパラドックス(矛盾)の国」と例えており、メンタルヘルスの改善方法を見いだす課題を提起している。

 各国の比較が可能なデータをもとに経済協力開発機構・欧州連合加盟国の子どもを対象に調査した。

 精神的幸福度は3年前の37位から32位に改善。15歳の71%が自分の生活に満足しており、調査対象国で生活満足度が上昇した唯一の国になった。男子の方が女子よりも生活満足度が高いジェンダー差は諸外国と共通している。

 一方で自殺率は上昇傾向にあり、子ども・若者10万人当たりの自殺者数は10・41人と平均値の6・24人を大きく上回った。心の病気の発症率は10万人当たり6333人、有病者率は1万5241人でいずれも増加。1000人当たりの死亡率は最も低い国になった。

 スキルの分野は27位から12位に改善。読解力・数学的リテラシーが基礎的習熟レベルに到達している15歳の割合は3ポイント上昇して76%になった。一方で、諸外国と同様に社会的・経済的背景による学力スキルの格差が急激に拡大している。

 調査結果を受けて東京都立大学教授で子ども・若者貧困研究センター長の阿部彩氏は、格差拡大と分布の底辺にいる子どもたちの状況に警鐘を鳴らし「コロナ禍を経て悪化した可能性もあり“平均的”な子どもを念頭においた政策だけでは、必要な子どもたちに届かないことを胸に刻むべき」と指摘する。

(解説 2025-06-06付)

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