【解説】自殺背景調査指針の改訂案

（解説 2025-07-04付）

　文部科学省は２日の児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議で、児童生徒の自殺が起きた時の背景調査の指針改訂版の骨子案を示した。前回改訂の平成２６年から約１０年ぶりの見直しで、調査事項の具体化や遺族に寄り添った対応を促すための記載の充実を図る。

　自殺の背景調査は、自殺の再発防止や事実に向き合いたい遺族等の希望に応えることを目的とし、事案発生後に学校が着手する「基本調査」、外部専門家を加え自殺に至る過程や心理を解明する「詳細調査」がある。

　一方、詳細調査の希望の有無を遺族に説明した件数は全体の約６割、詳細調査に移行した件数は約１割にとどまる。このため改訂案では、調査全体の流れを示すフロー図、対応のチェックリスト、遺族への説明の様式例、詳細調査に移行すべき具体例などを追記。相談体制の充実をはじめとする未然防止の対応、都道府県教委の取組も示す。

　会議では、６月に成立した改正自殺対策基本法について有識者が意見。自殺防止に取り組む学校の責務が盛り込まれたことから、人員の補充やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの常勤化など学校現場を支援する施策の充実を求める声が上がった。

　特定の市販薬を過剰摂取する「オーバードーズ」が１０代で急増・深刻化している現状も報告。９割が女性、７割以上が中高生とのデータもあり、行政、医療機関、薬局など地域全体で対策に取り組む必要性が指摘された。

　１人１台端末を活用した「心の健康観察」の導入が進む一方、相談対応の業務が膨大になっている点も指摘され「秘密を守らなくてはならないケースもあり、難問が続いている。学校だけで対応することは現実的ではない」と支援の必要性を訴えた。

(解説 2025-07-04付)