胆振管内28年度教育推進の重点 質の高い充実した教育へ 実践力育成、信頼される学校づくりを(道・道教委 2016-04-18付)
【室蘭発】胆振教育局は十三日、むろらん広域センタービルで二十八年度管内公立小・中学校長会議を開催した。阿部清明局長=写真=が「社会で活きる実践的な力の育成」「豊かな心と健やかな体の育成」「信頼される学校づくりの推進」「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」「北海道らしい生涯学習社会の実現」を柱とする、管内における教育推進の重点=表参照=を説明した。
阿部局長による説明の概要はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
新年度のスタートに当たり、管内教育推進の重点について申し上げる。
「管内教育推進の重点」については、北海道教育推進計画の五つの基本目標に沿って、管内で重点的に取り組むべき施策項目を「胆振の重点」として位置付け、様々な教育課題の解決に向けた、効果的な施策について示している。
説明に入る前に、昨年度は、「すべての授業の質的向上」をはじめとする九つの項目を「胆振の重点」とし、市町教委、学校、地域の方々とともに取り組んできたところであり、皆さんの理解と協力に心から感謝申し上げる。
さて、人口減少や少子高齢化、グローバル化の進展など変化の激しい社会において、子どもたちがふるさとに誇りをもち、互いに支え合いながら生涯にわたってたくましく生き抜く力を身に付けるためには、教育に携わるすべての関係者がそれぞれの果たすべき役割と責務を自覚し、社会全体で子どもたちの学びを支える取組を進めることが求められている。
道においては、「北海道総合教育大綱」の中で、すべての子どもたちに社会で自立して生き生きと活躍できる力を培うことなどを本道教育のめざす姿とし、道民全体で子どもたちが夢や希望を実現できるように支える「ほっかいどう“学力・体力向上運動”」を推進するとともに、先般、道教委と知事部局が連携していじめ根絶のメッセージを発信するなど、子どもたちが安心して学校生活を送ることができるよう取り組んでいるところである。
このような状況を踏まえ、教育局としては、特に管内として取組が必要な十の項目を本年度の「胆振の重点」と位置付けるとともに、新たに学校における取組を示し、管内の教育課題の解決に取り組んでいく。
皆さんには、これまでの成果を生かしつつ、さらに質の高い充実した教育が提供できるよう取組をお願いする。
それでは、順次説明させていただく。
【社会で活きる実践的な力の育成】
まず、一つ目の柱の「社会で活きる実践的な力の育成」についてである。
子どもたちが変化の激しい社会を生きていくためには、基礎的・基本的な知識・技能と、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力などに加え、主体的に学びに向かう力や人間性などを総合的に育んでいくことが重要である。
「全国学力・学習状況調査」の管内の結果については、ここ数年全国との差が縮まりつつあり、また、「授業のはじめに目標が示されていると思う」と回答した児童生徒の割合が全国平均よりも高い傾向を示すなど、着実に授業改善の成果が表れてきているが、一方では、正答数が著しく少ない、いわゆる「下位層」の割合がすべての教科で全国平均よりも多い状況となっている。
また、家庭での学習時間が少なく、テレビを見たりゲームをしたりする時間が長いという結果が引き続き顕著となっている。
このような状況から、教育局では、「学びの質を高め深める授業の実現」「望ましい生活習慣と学習習慣の確立」「特別支援教育の充実」を胆振の重点として位置付けることとした。
具体的には、(一)の「学びの質を高め深める授業の実現」については、
▽学校の課題やニーズに応じた学校訪問の実施
▽学校力向上に関する総合実践事業や授業改善推進チームの成果の普及による学校全体での授業改善の促進
▽学力向上推進セミナー等の機会を通じた授業改善の具体的方策の積極的な周知
▽小中連携・一貫教育や土曜授業による教育課程改善の事例の普及
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「学力にかかる徹底的な現状分析による数値目標の設定と検証改善サイクルの確立」「身に付けさせたい力が明確な“めあて”と学習内容の確実な定着を図る“振り返り”を位置付けた授業の推進」「主体的に学び、考えを深めるための言語活動の質の向上」」「小中九年間で育成したい力の明確化と小・中学校間での共有」などに取り組んでいただきたいと考えている。
また、(二)の「望ましい生活習慣と学習習慣の確立」について、教育局としては、
▽「どさんこアウトメディアプロジェクト」による「ノーゲームデー」の推奨
▽生活リズムチェックシートの活用促進
―などを進めていくこととしているので、各学校においては、「子ども自身が生活を改善しようとする意識を醸成する取組」「宿題の内容や分量の一層の工夫と家庭学習方法の改善に向けた具体的な指導」などに取り組んでいただきたいと考えている。
さらに、(三)の「特別支援教育の充実」については、ことし四月にいわゆる「障害者差別解消法」が施行されたことも踏まえ、特別な教育的支援を必要とする子どもたちの学習面や生活面での困難な状況に対応できるよう、教育局では、
▽特別支援教育コーディネーターの資質向上のための研修の工夫改善
▽個別の教育支援計画の作成・活用を促す指導資料の作成
―などに取り組んでいくこととしているので、各学校においては、「“校内研修プログラム”を活用した実践的な指導力を高める校内研修の実施」「個別の教育支援計画の作成と引継ぎでの活用」などに取り組んでいただきたいと考えている。
【豊かな心と健やかな体の育成】
つぎに、二つ目の柱の「豊かな心と健やかな体の育成」についてである。
子どもたちが互いに尊重し合い、社会の一員として成長していくためには、心と体の健やかな発達が重要である。
豊かな心の育成について、管内の各学校では、道徳教育推進教師を中心とした学校全体での道徳教育の推進に努めているが、道徳が「特別の教科 道徳」と位置付けられたことを踏まえ、授業の質の向上に努める必要がある。
また、いじめの問題に関しては、管内のすべての学校で「学校いじめ防止基本方針」を策定し、いじめの未然防止をはじめとする様々な対策に取り組んでいただいているが、特に、小学校でのいじめの認知件数が増加するなど、いじめに苦しんでいる子どもがなくならない状況にあり、スマートフォンなどのソーシャルメディアを使ったいじめなどネットトラブルも後を絶たない。
体力については、昨年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の管内の結果は、小学校男子が二年連続全国平均を上回ったのをはじめとして、小学校女子は全国平均とほぼ同様、中学校は男女とも全道平均を上回るなど、各学校での取組が着実に成果となって表れてきている。
このような状況から、教育局では「道徳教育の充実」「いじめの未然防止に向けた組織的な取組の充実」「体力の向上」を重点として位置付けることとした。
具体的には、(一)の「道徳教育の充実」については、
▽管内独自で作成した『できる!道徳教育推進教師ハンドブック』の活用促進
▽道徳教育推進教師研修の内容充実
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「道徳の時間の全学級での授業公開と道徳教育に関する校内研修の実施」「道徳教育の指導計画の改善」など、「道徳科」への円滑な移行に向けた取組を確実に進めていただきたいと考えている。
(二)の「いじめの未然防止に向けた組織的な取組の充実」については、
▽管内いじめ問題等対策連絡協議会の協議を踏まえた関係機関との連携によるいじめの未然防止の取組強化
▽「胆振児童生徒仲良しコミュニケーション月間」の内容充実
▽望ましいインターネット利用に向けた環境醸成推進事業の成果の普及
―などに取り組むこととしている。
各学校においては、「学校いじめ防止基本方針の見直しと実効性が伴う活用」「“いじめ未然防止プログラム”の作成による意図的・計画的ないじめ防止の取組の推進」などに取り組み、すべての子どもが安心して過ごせるいじめのない学校づくりを進めていただきたいと考えている。
(三)の「体力の向上」については、これまでの取組を一層加速させるため、教育局としては、
▽体力向上先導的総合実践事業における効果的な取組の普及
▽体力向上のための指導力を高め、体育の授業改善を促す研修会の実施
▽子どもたちが運動やスポーツに親しむ環境づくりを行う強調月間の設定
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「新体力テストの全学年での実施と体力向上にかかる数値目標の設定」「体育の授業改善と日常的な体力向上の取組」「家庭や地域と連携した運動やスポーツに親しむ機会の充実」などについて学校全体で取り組んでいただきたいと考えている。
【信頼される学校づくりの推進】
つぎに、三つ目の柱の「信頼される学校づくりの推進」についてである。
学校教育の成否は、子どもたちと直接ふれあう教職員の人間性や指導力によるところが大きく、子どもたちの模範となるべき教職員全員が服務規律の保持と個々の資質・能力の向上を図っていくことが大切である。
管内においては、昨年度も依然として、教職員の交通違反や児童生徒への体罰、信用失墜行為などの不祥事が発生しており、より一層の危機感をもって対応する必要がある。
このようなことから、教育局としては、「服務規律の徹底」と「教職員の資質・能力の向上」を重点として位置付けることとし、具体的には、(一)の「服務規律の徹底」については、
▽教育委員会と連携した服務指導の充実
▽コンプライアンス出前講座の実施
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「教職員の適正な勤務管理の徹底」「不祥事防止に向けた効果的な取組や校内研修の充実」など、教育公務員としての自覚を高める指導を心がけていただきたいと考えている。
(二)の「教職員の資質・能力の向上」については、教育局では、
▽中長期的な視点に立った人材育成とミドルリーダーの計画的な育成
▽多様な経験を積むための人事交流の促進
▽初任段階教員研修等の教員研修の内容充実
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「校内の職場環境の改善や適切な校務分掌の決定と運用」「管理職による授業参観と個々の教職員への具体的な指導」「日常授業の改善に直結するワークショップ型研修の実施」など、指導力の向上につながる取組を進めていただきたいと考えている。
【地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進】
つぎに、四つ目の柱の「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」についてである。
社会が急激に変化する中、学校・家庭・地域・行政が連携協力して子どもたちを守り育てることが重要であり、家庭や地域での教育の充実を図るとともに、社会の幅広い教育機能を活性化していくことが大切である。
管内では、安平町、登別市、壮瞥町においてすべての小・中学校をコミュニティ・スクールに指定しており、また、導入に向けて積極的な検討を進めている市町もあるなど、地域とともにある学校づくりが着実に進められている状況である。
このようなことから、教育局では、「地域で子どもを育てる機運の醸成」を重点と位置付けることとし、
▽PTA研修、「子ども朝活」事業などの場を活用した保護者への学習機会の提供と学習をリードする地域人材の養成
▽家庭教育サポート企業の拡充と取組の促進
▽「学校支援地域本部事業」や「放課後子ども教室」等の取組の促進と各活動のネットワーク化に向けた支援
▽コミュニティ・スクールの導入促進と導入済市町への支援の充実
―などに取り組んでいくこととしている。
各学校においては、「保護者が子育てや家庭教育について日常的に相談、学習、交流できる環境整備」「サポート企業や地域が有する教育力を活用した活動の充実」などに取り組んでいただきたいと考えている。
【北海道らしい生涯学習社会の実現】
最後に、五つ目の柱の「北海道らしい生涯学習社会の実現」についてである。
子どもたちも含めすべての道民が潤いのある生活を送るとともに、持続可能な地域づくりを進めるためには、生涯を通じて学び、その成果を生かせる環境づくりを進めていくことが必要である。
道では、目指す生涯学習社会の姿を「社会で活きる力を身に付け、持続可能な潤いのあるふるさとづくりを進める社会」として、北海道ならではの生涯学習を進めているところである。
教育局としては、こうした考えのもと、
▽保護者や地域住民を対象とした学習機会での情報提供
▽社会教育関係職員の研修機会の充実などに取り組む
―とともに、子どもたちの郷土を愛し、発展させようとする気持ちを育むため、
▽「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」の成果の普及
―などに取り組みながら、引き続き生涯学習の推進に努めていく。
【むすびに】
以上、本年度、教育局として進める重点について説明したが、皆さんにおかれては、各市町において、こうした道の施策や教育局の取組を踏まえながら、管内教育の充実発展のため、様々な課題の解決に向けて取り組んでいただきたいと考えている。
この記事の他の写真
説明する阿部局長
(道・道教委 2016-04-18付)
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