桧山管内28年度教育推進の重点 ふるさとに誇りもって 創意に満ちた学校経営期待 桧山局が公立学校長合同会議(道・道教委 2016-04-19付)
【江差発】桧山教育局は十四日、桧山合同庁舎で二十八年度桧山管内公立学校長合同会議を開催した。毛利薫局長=写真=が本年度「管内教育推進の重点」を説明。本年度からテーマを新たに「ふるさと桧山に誇りをもち、互いに支え合いながら桧山の発展に貢献する人を育む」と設定した上で、「桧山の未来をつなぐ自立した人づくり」などを柱とした二ヵ年の方針、ならびに「管内すべての学校において〝全教科〟で全国平均以上を目指す」「管内すべての〝学校〟において体力合計点の全国平均以上を目指す」などを目標とした五つの重点を説明した=表参照=。
二十八年度管内教育推進の重点はつぎのとおり。
【はじめに】
二十八年度公立学校長合同会議に当たり、本年度の管内教育推進の重点を申し上げる。
昨年度は、「ふるさと桧山に学び、ふるさと桧山を愛し、次代を担う人を育む」のテーマのもと、五つの重点を掲げ、校長には、この重点の実現に向けて、学校経営を推進していただき、学力や体力の向上、生徒指導上の諸問題の解決などをはじめ多くの成果を上げることができた。
特に、学力や体力の向上にかかわっては、全国調査における中学校国語A・B、数学A、理科の平均正答率が全国以上、小学校算数Aの平均正答率、小学校および中学校の男女とも体力合計点が道内トップなど、学力・体力ともに、管内の結果が全道的に注目された年となった。
各学校における真摯な取組が実を結ぶ結果となり、日ごろの各校の努力に心から感謝を申し上げる。
本年度も、皆さんの理解と協力のもと、管内教育の一層の充実に努めていくので、よろしくお願いする。
【教育施策の動向】
さて、本道においては、グローバル化の進展とともに、全国を上回るスピードで進行する人口減少や少子高齢化社会の到来など、現在と将来を取り巻く環境は、きわめて不透明な状況にある。
こうした中、本道が持続的に発展し、地方創生を実現するためには、地域の発展を支える教育の役割がますます重要となっており、地域に誇りをもち、互いに支え合いながら、生涯にわたって生き抜く力を身に付けた人材の育成が最も重要な課題となっている。
また、道では、昨年十月に、二十七年度から二十九年度までの教育施策等の総合的な目標や方針を示した「道総合教育大綱」を定め、重点的な取組として、「すべての子どもたちに、社会で自立するために必要な学力を身に付けさせる取組を進めること」「生活困窮世帯等の子どもたちへの教育支援に取り組むこと」、そのために、「地域全体で子どもの学びを支援する取組を進めること」を掲げたところである。
教育局においても、こうした動向や、これまでの成果と課題を踏まえ、ことし三月に、二十八年度・二十九年度の新たな教育推進計画を策定した。
新たな教育推進計画は、これまで以上に、地域に対する愛着をもち、地域の発展を支える人材の育成が重要であることから、「ふるさと桧山に誇りをもち、互いに支え合いながら桧山の発展に貢献する人を育む」をテーマに、「桧山の未来をつなぐ自立した人づくり」「家庭や地域とつながり、信頼される学校づくり」「ふるさと桧山を愛し、誇りがもてる地域づくり」の三つを柱とした二十八年度・二十九年度の方針と、二十八年度の重点からなるものである。
教育局としては、これらに基づき、管内の特色を生かしつつ、各学校や地域の実態を踏まえた、より細やかで実効性のある施策の展開を進めるとともに、各学校の個々の課題の解決に向け、全力で支援していきたいと考えている。
それでは、はじめに、管内教育推進の方針について申し上げる。
【管内教育推進の方針】
これまでの管内教育の状況を省みると、着実に成果が表れてきていることから、方針については、これまでのものを引き継ぎつつ、「道総合教育大綱」を踏まえたものとすることにした。
そのため、これまでの方針の文言を、大綱に合わせたものにするとともに、これまで以上に、ふるさと桧山への愛着や貢献を意識したものに変更している。
また、特に、女性管理職の登用拡大が求められていることから、女性教職員の活躍を支援する取組について、新たに設定している。
二十八・二十九年度は、本方針をもとに、各年度で特に重点的に取り組む項目を「管内教育推進の重点」として示す。
それでは、本年度の管内教育推進の重点を申し上げる。
【管内教育充実に向けた取組】
▼確かな学力の育成を目指す教育の充実
一つ目の重点は、「確かな学力の育成を目指す教育の充実」についてである。
この重点は、管内教育推進計画の基本目標一の①、②、④と⑥、および基本目標四の①を重点化したものである。
昨年度の管内における学力の状況については、中学校の四教科において全国平均を超えるなどの成果を出したところである。
しかしながら、昨年度掲げた「管内すべての学校において全国平均以上」については、達成することができず、特に、学校間や教科間による学力差がみられること、依然として、家庭学習の時間や望ましい生活習慣の定着に課題が残ることなどが明らかになった。
教育の機会均等という義務教育の趣旨を踏まえると、管内のすべての子どもたちに社会で自立するために必要な学力を身に付けさせなければならない。
このようなことから、特に、本年度は、「管内すべての学校において〝全教科〟で全国平均以上」を目指し、各学校においては、一点目の「学力向上に向けた適切な教育課程の編成・実施」について、
▽学校種間の指導内容の系統性・関連性を踏まえた教育課程の充実
▽英語を使ったコミュニケーション能力を育むための英語教育の工夫
―など五点に重点的に取り組んでいただきたい。
二点目の「確かな学力を育成する学習指導の工夫・改善」について、
▽知識・技能の習得と、それらを活用し探究する学習活動の充実
―など四点の取組を通して、学習指導を工夫・改善していただきたい。
三点目の「ネット利用も含めた望ましい生活習慣の定着を目指す取組の充実」について、
▽どさんこアウトメディアプロジェクトの各取組や「生活リズムチェックシート」等を活用した望ましい学習習慣や生活習慣の定着に向け、家庭・地域と連携した取組の充実
―に重点的に取り組んでいただきたい。
教育局としても、引き続き、学校教育指導やオンデマンド配信を含めた「ひやまModel」の作成と発信、局独自研修の実施など、六点の取組等を通して、各学校の支援をしていく。
特に、江差町立南が丘小学校を実践指定校とし、江差町立江差小学校、江差町立江差北小学校を近隣実践校に、せたな町立瀬棚小学校、せたな町立北桧山小学校、せたな町立久遠小学校、今金町立今金小学校を特別連携校に指定した「学校力向上に関する総合実践事業」に対し、支援していく。
また、江差北小、江差町立江差北中学校に取り組んでいただく「小中一貫パイロットモデル事業」、上ノ国町で実施する「地域の学力向上支援事業」などの各指定事業については、指定の最終年度となることから、その成果を管内に普及していく。
▼健やかな体の育成を目指す教育の充実
二つ目の重点は、「健やかな体の育成を目指す教育の充実」についてである。
この重点は、管内教育推進計画の基本目標二の④、基本目標四の②、および基本目標五の④を重点化したものである。
体力は、あらゆる活動の源として、健康維持のほか、意欲や気力の充実にも大きくかかわっており、子どもたちが生涯にわたって心身ともに健やかに生きるための基盤である。
そのため、幼児期から、運動に親しむ資質や能力の育成、体力の向上に努めることが大切である。
管内の体力の状況は、着実に成果を上げてきているところであるが、全国調査の結果、中学校においては、依然として、男女とも体力合計点が全国を下回っていることや、小・中学校とも、体力合計点に大きな学校差がみられることが課題となっている。
このようなことから、特に、本年度は、「管内すべての〝学校〟において体力合計点の全国平均以上」を目標として掲げ、各学校においては、一点目の「体力・運動能力の向上を目指す取組の充実」について、引き続き、
▽新体力テストの全学年・全種目の実施および結果を踏まえた授業改善
―など三点に重点的に取り組んでいただきたい。
また、管内においては、「朝食を毎日食べる」子どもが、全国と比較して少ない傾向がある。朝食欠食や不規則な食事など、子どもたちの食生活の乱れは学習意欲や健康に様々な影響を与えることが指摘されていることを踏まえ、二点目として、「食に関する正しい知識と望ましい食習慣の育成を目指す取組の推進」を掲げたところであり、
▽「早寝早起き朝ごはん」運動を通した朝食摂食率の向上など、食に関する正しい知識や食習慣の定着のための家庭・地域と連携した食育の充実
―に重点的に取り組んでいただきたい。
教育局としても、学校教育指導はもとより、江差町およびせたな町で取り組み、特に成果を上げていただいている「体育専科教員活用事業等」や、せたな町で取り組んでいただいている「体力向上先導的総合実践事業」の各指定事業の成果の普及などを通して、各学校の支援を継続していく。
▼いじめ・不登校への対応
三つ目の重点は、「いじめ・不登校への対応」についてである。
この重点は、管内教育推進計画の基本目標二の③と、基本目標三の②を重点化したものである。
これまでも、管内の各学校においては、いじめ・不登校の解消に向けた取組を推進していただいているところではあるが、ここ数年、管内のいじめの認知件数は三十件前後、不登校は四十件程度で推移しており、依然として、いじめに苦しむ子どもや不登校の子どもがなくならない状況が続いている。
また、今日では、特に、SNSなどによる見えないいじめが増加傾向にあり、今まで以上に、常日ごろから望ましい人間関係を醸成する学校経営・学級経営に努めるとともに、学校、家庭、地域、関係機関と連携した組織的な対応が求められているところである。
このようなことから、本年度も引き続き、「管内におけるすべてのいじめ・不登校の解消」を目指し、各学校においては、一点目の「いじめ・不登校の未然防止・早期発見・早期解決に向けた取組の充実」について、
▽ネットトラブル防止に向けた情報モラルを身に付けさせる指導や情報モラル教育に関する教員研修の充実 ―など五点に重点的に取り組んでいただきたい。
二点目の「生徒指導・教育相談の体制の充実」について、
▽計画的な教育相談や関係機関との連携による教育相談、教育相談に関する教員研修など、チームで対応する教育相談の充実
―など三点に重点的に取り組んでいただきたい。
教育局としても、スクールソーシャルワーカーの配置がないなどの管内の実態を踏まえ、教育相談の充実を図るため、カウンセリングICT活用事業等の活用に向けた支援など、四点の取組等を通して、各学校の支援をしていく。
特に、北桧山小、上ノ国町立上ノ国中学校、上ノ国高校で進めていただく「いじめ未然防止プログラム事業」については、指定事業の最終年度となることから、その成果を管内に普及していく。
▼特別支援教育の充実
四つ目の重点は、「特別支援教育の充実」についてである。
この重点は、管内教育推進計画の基本目標一の③を重点化したものである。
特別支援教育については、共生社会の形成に向けて、障がいのある子どもと、ない子どもがともに学ぶインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、特別支援学校はもとより、幼稚園、小・中学校に加え、高校においても、発達障がいを含む障がいのある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実が求められている。
管内においても、訪問支援やパートナー・ティーチャー派遣事業の活用が増加しており、教育的ニーズに応じた支援の充実が図られているが、関係機関と連携を図った個別の教育支援計画の作成と引き継ぎ等での活用、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする子どもについての個別の指導計画の作成については十分とは言えない状況が続いているところである。
このようなことから、本年度については、「管内すべての学校において個別の教育支援計画および個別の指導計画を活用した指導や支援のより一層の充実」を目指し、各学校においては、一点目の「インクルーシブ教育システムの理念を踏まえた特別支援教育の推進」について、
▽保護者との早期からの共通理解に基づくキャリアプランを位置付けた個別の教育支援計画の作成と活用
―など三点に重点的に取り組んでいただきたい。
また、管内においては、特別支援教育の専門的な知識をもつ教員や人材が少ない実態があることから、教員の専門性の一層の向上を目指し、二点目の「特別支援教育にかかわる専門性の向上を目指す取組の充実」について、
▽「校内研修プログラム」や「実践事例集」を活用した取組の充実
―など二点に重点的に取り組んでいただきたい。
教育局としても、訪問支援や学校教育指導、オンデマンド配信を含めた「ひやまModel」の作成と発信など、三点の取組などを推進していく。
特に、局独自で実施してきた特別支援教育支援員の研修については、本年度も実施時期等を改善し、各学校の支援をしていく。
また、本年度の新規事業である「発達障がい支援成果普及事業」については、振興局の社会福祉課と連携し、推進地域の江差町、推進校の江差小、江差町立江差中学校、桧山北高校を支援するとともに、その成果を管内に普及していく。
▼社会教育の推進
五つ目の重点は「社会教育の推進」についてである。
この重点は、管内教育推進計画の基本目標四の①、③と基本目標五の①、④を重点化したものである。
過疎化の進行、家族形態、ライフスタイルの変化等を背景とした地域社会のつながりや支え合いの希薄化によって、地域の学校、地域で育てる子どもという考え方が失われてきたと指摘されている。
子どもたちの健やかな成長のためには、家庭や地域社会が教育の場として十分な機能を発揮することが重要であり、そのためには、様々な機関が連携し、ネットワーク化を図っていくことが求められる。
このようなことから、各学校においては、地域人材や社会教育関係団体の活用について促進していただきたい。
教育局としては、地域の家庭教育サポート企業との連携や社会教育関係団体の活性化、コミュニティ・スクールの導入を通して学校・家庭・地域への支援を行っていく。
以上、本年度の管内教育の推進に当たって、今後二年間のテーマおよび方針と、本年度の五つの重点を申し上げた。
私は、昨年六月に赴任以来、各学校や各地域を訪問させていただいたが、その中で実感したことは、桧山の子どもたちは、純朴で、何事にも懸命に取り組んでいること、桧山の先生は、課題に真摯に向き合い、解決しようとする熱意と解決するための高い指導力を備えていること、桧山の学校は、一つの目標に向かって一体となって進もうとする勢いがあること、そして、桧山の各地域には、全国に誇ることができる伝統・文化等の豊かな教育資源があるということだった。
今の子どもたちが生きる未来には、厳しい挑戦が待ち受けていることが予想される。そうした時代にあっても、子どもたちがしっかりと自立をし、優しい心をもってともに支え合い、たくましく生きていく力を培うことは、大人である我々全員の責務である。
私としては、管内教育の現状に、常に危機感をもち、目の前の課題を先送りせず、来るべき未来を見据えながら管内教育の充実・発展に取り組んでいきたいという思いを込め、本推進計画を策定させていただいたところである。
【むすび】
最後に、校長への期待を申し上げ、結びとする。教育は、人と人とが織り成す営みである。各町教育委員会をはじめ、家庭や地域・社会教育関係団体が「桧山の子どもたちは、管内の大人たちの手で、地域全体で育んでいく」という思いを共有することこそが、この営みを、より強く、より温かく、よりしなやかなものにするのではないだろうか。
そして、この思いを紡ぐことで、子どもたちが、ふるさと桧山に育ったことに誇りをもち、将来にわたってこの地域を支えてくれる存在になると信じているところである。
校長におかれては、組織のトップとして、桧山の未来をつなぐ自立した人づくりのため、創意に満ちた学校経営を行っていただくよう期待申し上げ、管内教育推進の重点の説明を終わらせていただく。
この記事の他の写真
説明する毛利局長
(道・道教委 2016-04-19付)
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