高・特校長会議の道教委所管事項説明(2) 実効性あるいじめ防止を 学校の政治的中立性確保求める(道・道教委 2016-05-18付)
説明する北村学校教育局長
◆北村学校教育局長
これから説明する内容は、例年と共通するものや、本年度新たに追加したものなどを含め、多岐にわたる。各局、室から説明する内容も、学校教育局所管事項に限らず、学校経営において、その確実な実施や一層の充実が求められている内容である。
年度初めに、このように全道各地から校長が一堂に会する意味は、求められる事項を再確認願うとともに、私たちの思いを直接お届けする機会であるとも考えている。
そのような趣旨も理解いただくとともに、皆さんには、自身の学校経営の中で、「何ができていて」「何が不十分なのか」「何をどのように改善すべきなのか」という点を意識して、他校の校長との情報交流も交え、あすからの学校経営を具体的に改善する方向性を整理しながらお聞きいただければ幸いと思う。
最初に、皆さんに期待すること、考えていただきたいことについて話す。
私どもからは、それぞれの事項について、「適切に実施願う」旨の話になるが、「適切」とは、「何を」「どのようにすることなのか」について、整理していただく必要がある。
実施した結果は当然のこと、実施のプロセスについては、各学校の実態によって、様々な経営上の工夫が求められる。
例えば、学校規模や学科、設置形態などのうち、一つを例にとっても、百人近くの教職員を抱える学校、一方、少人数の学校、多様な職種の教職員が校地内の各所で勤務する学校など、様々の実態がある。
さらに、教職員の年齢構成や教職経験年数、価値観なども様々である。
そのような学校という組織において、教職員一人ひとりの段階にまで、教育改革の方向性や、今日、学校が求められている役割を落とし込み、実際に児童生徒に指導する場面において、その趣旨が、共通して反映され、目に見える成果につなげなければ、教育改革は学校教育現場に浸透しない。
言うまでもなく、教育改革は、学校教育にみられる全国の課題や背景などを詳細に調査し、これまでの取組を検証しつつ、導き出された解決の方向性を示したものであると理解したい。
もちろん、個々の学校の実態が、それにすべてぴたりと一致するとは考えていないが、校長という職は、学校個々にみられる課題の要因を分析し、その要因と教育改革の背景との関連性を整理し、実は、自校にもそのような要因が潜んでいることや、教育改革の方向性と個々の学校課題を解決する方向とは一致しているのだということを教職員に理解させる通訳としての役割が重要と考えている。
そうでなければ、対処療法的な対応に追われるばかりではなく、教育改革が学校教育の充実につながってはいかず、多忙感ばかりが増殖していくことになる。
また、教育改革は、児童生徒がこれから生きていく社会の変化を想定しつつ、そこで求められる能力等を踏まえた教育の方向性も示している。
私たちには、これまでの経験値に加え、様々な関係者と協働しながら、新たな学校価値を創造するという使命が期待されていることも学校教育現場に浸透させ、新しい時代を拓く教育を実現するというやりがいを、すべての教職員に実感させていただきたい。
今日、学校教育にかかわって、全国、全道的に様々な問題が発生している。
特に、「問題の根幹となる法令や規則を理解していなかったケース」「〝そうなるとは思わなかった〟という見込み違いのケース」「教職員間の情報共有がなされていなかったケース」「問題の初期段階を管理職が把握しておらず、事態が悪化した段階で管理職が知るケース」など、初期対応や組織的な対応の不適切さがみられた事案は、問題が深刻化している傾向にある。
これらの実態をみる際には、問題が顕在化した学校のみにみられる傾向なのか、すべての学校に潜在する問題なのかについて、校長として、自校の経営を検証する必要があると考えている。
皆さんには、釈迦に説法の感もあるが、この機会に、学校経営の基礎・基本を再検証していただきたい。
【道立・公立学校全般にかかる事項】
▼儀式的行事の適切な実施
本年度の入学式における国歌斉唱の実施状況については、各学校の指導によって、「しっかりと歌っていた」と報告のあった道立学校は、前年度より若干増加した。
一方、小・中学校においては、本年度の入学式において、すべての学校で「しっかりと歌っていた」状況となった。
今後、道立学校においては、一層の改善が求められる。
各学校においては、引き続き、儀式的な行事の意義を踏まえ、式の全体練習などにおいて歌唱指導の時間を確保したり、指導方法を工夫するなどして、適切な実施に努めていただきたい。
▼生徒指導および安全教育
▽いじめの問題への対応
いじめ防止対策推進法が施行されたあと、道立学校では、重大な事態に至る事案が発生しており、全国においても、重大な結果を招いた事案が、たび重なって起こっている。
各学校においては、いじめを正確に漏れなく認知し、特定の教職員が問題を抱えることなく、迅速かつ組織的に対応するとともに、「学校いじめ防止基本方針」の点検、見直しを図り、学校の実情に応じた、実効性のあるいじめの防止等の取組を行っていただきたい。
▽不登校等への対応
不登校児童生徒数は、高校では減少傾向にあるものの、小・中学校では、二年連続で増加しており、憂慮すべき状況にある。
二十七年度問題行動等調査における、不登校にかかる調査では、不登校の児童生徒の状況をきめ細かく把握するため、調査項目の変更が検討されており、不登校の状況についても、詳細な把握ときめ細かな対応が、一層求められている。
各学校においては、不登校の未然防止や早期発見・早期対応に向けた取組を引き続き、充実させていただきたい。
▼健康教育等
▽体力の向上
道内の小・中学校の児童生徒の体力の状況は改善傾向にあるものの、依然として全国平均を下回っており、運動の実施時間が総じて少ないなど、運動習慣の定着に課題がみられる。
また、高校生の体力についても、道の独自調査において、全国平均を下回っている状況である。
各学校においては、全学年で新体力テストを適切に実施し、学校および個々の児童生徒の課題に応じて授業改善を図るなどして、体力向上の取組を充実させていただきたい。
本年度から、毎年十月を「どさん子体力アップ強調月間」に設定し、道教委と知事部局等が連携して取り組むこととしている。
この取組の趣旨も理解の上、各学校においては、体力向上に向けた取組の工夫・改善に努めていただきたい。
▽事故防止に向けた取組
これまで、学校の体育活動中や給食における事故が発生しているが、中には、事前の点検や確認、教職員の共通理解や迅速な対応があれば、事故を未然に、または、被害を最小限にできたと考えられるものもある。
各学校においては、国や道の関連する手引きや通知等を踏まえ、事故防止に万全を期していただきたい。
▼選挙権年齢引下げに伴う対応
生徒の政治的教養を育む教育と、生徒による政治的活動等にかかわる対応については、これまでも説明してきたとおり、国の通知に基づき適切に実施していただきたい。
特に、指導に当たっては学校の政治的中立性を確保すること、また、生徒の政治的活動等について指導するに当たっては、家庭や地域の関係団体等との連携・協力を図ることに留意しつつ、国・道教委が作成した副教材や指導資料、選挙管理委員会等の外部講師を積極的に活用するなどして、取組の充実を図っていただきたい。
【特別支援学校に関する事項】
▼特別支援学校における教育の充実
▽教員の専門性の向上
特別支援学校においては、障がいの重度・重複化、多様化に対応するため、教員の専門性の一層の向上が求められている。
各学校においては、障がい種別の取組事例を掲載した『教育課程改善・充実の手引』を活用するなどして、校内研修の充実を図るとともに、道立特別支援教育センター等の研修への参加の一層の促進を図っていただきたい。
また、国の動向を踏まえ、すべての教員が特別支援学校教諭免許状を取得することができるよう、免許法認定講習の積極的な受講を働きかけていただきたい。
▽新しい形の知的障がい特別支援学校高等部
二十九年度入学者選考においては、「比軽(ひかる)」と「比重(ひおも)」の学科群を解消し、職業学科に一本化した入選となる。
三十二年度には、義務併設校においても、「普通科Ⅱ型」に移行することから、これまでの教育課程を評価することはもとより、職業学科の取組状況やコース制の取組例などの情報を教職員と共有するなど、移行に向けた準備を進めていただきたい。
▼「障害を理由とする差別の解消に関する法律」の施行を踏まえた対応
ことし四月から「障害者差別解消法」が施行された。
各学校においては、これまでも障がいのある児童生徒や特別な配慮を必要とする児童生徒に対する指導の工夫や支援の充実を図っていただいている。
今後については、これまで以上に本人や保護者等からの様々な要望や相談が考えられることから、引き続き、必要な支援について、本人や保護者と学校との間で十分な相談体制を構築することが重要と考えている。
各学校においては、本人や保護者等の心情をくみ取った、丁寧な対応に努めていただきたい。
また、小中学校や高校からの相談にも積極的に対応願いたい。
さらに、教職員の理解を深め、適切に対応できるよう、各学校においては、「職員対応要領(サポートブック)」(二十八年二月二十三日付通知)を活用するなど、校内研修の促進に取り組んでいただきたい。
【高校に関する事項】
▼教育課程の編成・実施
▽適切な教育課程の編成・実施
現在、国においては、次期学習指導要領改訂に向けた作業が進められているが、学校においては、子どもたち一人ひとりの可能性を伸ばし、新しい時代に求められる資質能力を確実に育成していくことや、そのために求められる学校の在り方を不断に探究していくことが求められている。
とりわけ、これからの時代を生きる子どもたちの資質能力を育むためには、学校が地域や社会と接点をもちつつ、多様な人々とつながりをも保ちながら学ぶことのできる、「社会に開かれた教育課程」の視点をもつことが重要である。
各学校においては、こうした国の動向を注視しつつ、教育課程の適切な編成・実施を行っていただきたい。
特に、義務教育、高等教育、社会との連携を意識した取組を推進願う。
▽英語教育の充実
ことし四月に、教員や生徒の英語力の状況、授業における英語の使用状況等の調査結果が公表されたが、本道は、いずれも全国平均を下回っている。
本道では、二十九年度までに高校卒業段階で、英検準二級以上を取得している生徒、または、同程度の力を有していると考えられる生徒の割合を五〇%以上とすることを目標としている。
各学校においては、学校・学科の特色、生徒の実態等を踏まえ、独自の学習到達目標や目標値を設定し、その達成に向け、指導方法や指導内容、評価方法の工夫・改善を図っていただきたい。
また、英語教員に求められる水準を達成するため、各試験団体の特別受験制度を活用し、積極的に受験させていただきたい。
▽ICTを活用した取組
本年度、教育政策課に担当グループを開設した。
タブレットを活用した授業の工夫や、遠隔授業の効果的な実施について、実践研究に取り組んでいくこととしているが、指定校での研究の一層の推進と成果の普及に加え、各学校においては、効果的な活用について検討するとともに、可能な段階からの積極的な活用を願いたい。
▽教科書の選定
昨年度、教科書発行者による採択の公正性・透明性に疑念を生じさせかねない事案が発生し、大きな問題となった。
各学校においては、「道立学校の教科書の採択に関する実施要綱」に基づき、適切に行っていただくとともに、公正性・透明性を説明する観点から、採択理由の公表についても、積極的に行っていただきたい。
▼キャリア教育・進路指導の充実
本道においては、就職した卒業生のうち三年以内に離職した生徒は、減少傾向にあるものの、全体の約四八%となっており、全国より約八ポイント高い状況にある。
非正規雇用者の割合の増加や産業構造の転換など、就労環境が大きく変化する中、若者の早期離職は、本人にとって、また、社会全体にとっても大きな問題である。
若者と社会との接続が円滑に図られていないという今日的な社会の課題を踏まえると、将来、社会人・職業人として自立するためには、学ぶことや働くことの意義を理解させるとともに、一人ひとりの社会的・職業的自立の基盤となる能力や態度を育むことが求められている。
また、生涯にわたって、学び続ける態度を養うことが非常に重要と言われている。
道教委では、今後、早期離職の原因等について調査・分析するとともに、本年度から新たに実施される「若者早期離職防止プログラム」において、知事部局と連携し取り組んでいくこととしている。
各学校においては、これまでの就労支援の取組に加え、就職先の企業等と連携し卒業生の状況を把握・分析するほか、教育課程の編成・実施において、一層の工夫・改善を加えるなどして、キャリア教育・進路指導の見直し・改善を図っていただきたい。
▼高校における特別支援教育の充実
昨年度実施した調査によると、高校において、教育上特別な支援を必要とする生徒の在籍数は六百人を超えている。
各学校においては、支援の充実を図るため、「校内研修プログラム」を活用した教員研修の実施、研修未受講の特別支援教育コーディネーターの解消、個別の指導計画の作成について、重点的に取り組んでいただきたい。
また、ことし四月から「障害者差別解消法」が施行され、各学校における対応については、先に述べたとおりである。
各学校においては、必要に応じて、各教育局や特別支援教育センター、特別支援学校等に相談するなどして、本人や保護者等の心情をくみ取った丁寧な対応に努めていただきたい。
▼研究指定事業等
▽道高校学力向上実践事業
これからの時代に求められる力を育成するとともに、高校教育の質の確保・向上を図るため、本年度から三ヵ年の計画で、新たに本事業を実施することとした。
取組内容については、すでに通知したが、各学校においては、本事業を積極的に活用し、学力向上の取組をより一層進めていただきたい。
▽小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業
同事業は、小・中学校、地域の企業や首長部局等と連携し、地域の教育力を活用しながら、十二年間を通じて、ふるさとを愛する心と、将来、社会人・職業人として必要な資質能力の育成を目指すものである。
少子高齢化や社会構造の変化によって、地方減退・消滅が言われる中、地域ぐるみで子どもを育てる本事業は、道内の自治体も大変注目している。
指定校においては、小・中学校はもとより、特に、地域の企業や各機関等と密接に連携し、地域色あふれる取組を進めていただきたい。
また、同事業における昨年度の取組内容については、研究指定校のほか、各教育局や高校教育課のホームページに公開している。
各学校においては、これらの成果等を参考に、地域の教育力を十分に生かしながら、小・中学校等と連携したキャリア教育の充実に取り組んでいただきたい。
▼高校等就学支援金
高校等就学支援金については、新制度導入から三年目となり、これまでも事務室と学級担任等が連携し、校内で情報共有を図り、すべての保護者に対し、制度の確実な周知が図られてきたものと承知している。
本年度は、学年進行によって、全日制ではすべての学年で対象となることから、各学校での事務処理も増加するものと思われるが、引き続き、生徒・保護者等への積極的な周知を図ることはもとより、教育局とも連携し、認定結果の確認を十分行うとともに、校内の体制整備について、あらためて確認をお願いする。
(道・道教委 2016-05-18付)
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