遠隔授業プロジェクト始動―道教委 ハイレベルな学習機会提供 数・英配信し進路実現後押し(道・道教委 2016-05-19付)
札幌東高校
道教委は、本年度から三ヵ年計画で遠隔授業プロジェクトに着手する。「ほっかいどうICT活用教育加速化事業」のもと、配信校を札幌東高校と札幌西高校に指定し、それぞれ豊富高校と寿都高校で大学進学等を目指す生徒向けにハイレベルな授業を提供。映像や音声を双方向で交流できるシステムで、大学進学に対応したレベルの高い教材を使用する。道教委では、対象校や教科の拡大も検討している。
人口減少に伴い公立高校の小規模化が進行する中、道教委では、広域分散型の本道の地域性などを踏まえ、ほかの学校への通学が困難な地域にある小規模校に対して、ICT等を活用した遠隔授業を実施し、地域の教育機能の確保を図ることとした。都市部の進学校の授業を地方の小規模校に在籍する意欲と能力のある生徒に対して、ハイレベルな学習機会や切磋琢磨する場を提供する。
事業の成果が得られるよう段階を踏んで配信校の教員が受信校の生徒を指導することや、配信校および受信校の数を拡充することを考慮し、実施期間は三年間とした。
本年度は、札幌東高校から数学の授業を豊富高校へ、札幌西高校から英語の授業を寿都高校へ配信している。地域キャンパス校である豊富高と寿都高には、映像や音声を双方向でライブ配信できる遠隔授業システムが設置されており、今回は札幌東高と札幌西高にもシステムを整備した。
両校とも受信校の教科書のほか、レベルの高い問題集や配信校の教科書などを使用。実物投影機やパソコンも整備しており、配信校の教員は、テレビに映された受信校の生徒に向かって指導し、受信校でも担当教員がサポートに当たっている。
札幌東高では藤井弘之教諭と齋藤晃教諭が担当。空き教室に設置した遠隔授業システムを使い、数学の習熟度別授業を行う豊富高一年生四人、二年生一人を指導している。
齋藤教諭が担当する二年生の授業では、黒板の文字が見やすいようカメラをリモコンで動かしたり、ゆっくりと大きな声で話したり、宿題は授業前に黒板に書いておくよう指導したりと工夫していた。
一方、札幌西高では視聴覚準備室を使い、南部真人教諭、伊藤都章教諭が、寿都高一年生六人と三年生四人へ「コミュニケーション英語」の授業を配信している。三年生の授業を担当する伊藤教諭は、実物投影機で資料を提示し、オールイングリッシュで物語の内容を確認。一緒に音読しながら生徒の発音について助言していた。遠隔授業で音読テストを行うほか、定期試験は配信校で作成したものを送付する。
配信校両校の教諭からは、「少人数で個に応じた指導ができる」と成果に期待する一方、教諭が質問してから生徒が答えるまでのタイムラグ、映像や音声の乱れを課題として指摘する声もある。
両配信校とも事前に担当教諭が受信校の対象生徒と面談を行っているが、「年に数回は対面して授業したり、生徒の学校生活を見たりしたい」という教諭もいる。
道教委では、「国立大学進学を目指す生徒のために受験科目に対応した教科を増やしていく必要がある。距離や時間の制約を受けないICTをフル活用したい」と述べており、対象校の拡大も含めて検討していく。
国の制度改正によって二十七年度から遠隔授業でも単位認定できるようになったため、道教委では地域キャンパス校とセンター校の遠隔授業を積極的に推進することも打ち出しており、今後は、効果的な取組を情報共有して、小・中学校における遠隔授業の試行実施も想定するなど、広域な本道におけるICTの効果的活用について研究していく。
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札幌西高校
(道・道教委 2016-05-19付)
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