生活改善にほど遠い内容 道公務共闘が道人勧に対し声明
(関係団体 2016-10-17付)

 道高教組(國田昌男中央執行委員長)、道教組(川村安浩執行委員長)などで構成する道公務・公共業務労働組合(=道公務共闘)地公連絡会は七日、「二〇一六年道人事委員会勧告に対する声明」を発表した。勧告内容について、「生活改善にほど遠い月例給、差別賃金を拡大させた一時金」などと批判。今後、任命権者との賃金確定交渉において、賃金や手当の改善、希望者全員の再任用など、諸要求の実現に向けて戦うことを表明している。

 声明の内容はつぎのとおり。

          ◇          ◇          ◇

 道人事委員会は十月七日、知事と道議会に対し、道職員・教職員の本年度の給与等についての勧告と報告を行った。この間、道公務共闘は道人事委員会と二回の交渉を行い、現場の切実な声と実態を届けてきたが、我々の労働基本権制約の代償機関としての役割を果たしたとは到底言えない内容である。

【1】

 勧告の主な内容はつぎのとおりである。

(1)月例給・一時金ともに三年連続の引き上げ

①月例給の引き上げ六百七十二円(〇・一七%)

ア 月例給公民較差 独自削減前 〇・一七%(六百七十二円)、独自削減後 一・二六%(四千八百四十五円)

イ 給料表(行政職給料表の場合)は、初任給を一千五百円引き上げ、若年層についても同程度の改定。その他の層は再任用も含め四百円を基本に改定。

②一時金は四・三〇月(再任用二・二五月)

ア 現在の四・一〇月を四・三〇月に、再任用職員は二・一五月を二・二五月に引き上げ、勤勉手当に配分。

(2)医師・歯科医師および獣医師に対する初任給調整手当の支給限度額を百円~五百円引き上げる。

(3)扶養手当は「見直す」。配偶者手当は半額の六千五百円に、その原資を用い、子の手当を三千五百円引き上げ一万円とし、二年間で段階的に実施する。給料の官民較差の原資を用い、道独自で本年度四月にさかのぼり、子の扶養手当を四百円上げて六千九百円にする。

・二〇一六年度=配偶者一万三千円、子六千九百円

・二〇一七年度=配偶者一万円、子八千円

・二〇一八年度=配偶者六千五百円、子一万円

(4)再任用職員の勤勉手当に「優秀」区分をつくる。そのために「良好」の成績率を下げる。

(5)実施時期

 (1)の①と②、(2)はことし四月にさかのぼり実施。(3)は前記を参照。(4)は来年六月より実施。

【2】

 生活改善にほど遠い月例給、差別賃金を拡大させた一時金。

 月例給は、民間より〇・一七%(六百七十二円)低いとして、行(一)の俸給表でいえば、初任層を一千五百円、それ以外を四百円引き上げた。三年連続の引き上げは、この間の取組の成果と言えるものの、現給保障金額内となる四十代以降は、実質の賃上げとはならない。官民較差は現給保障された金額で比較されているので、その金額に上乗せされなければならないはずである。

 また、この引き上げ幅では、現給保障の経過措置期間が終了する二〇一七年度末以降に賃下げとなる職員が出るのは明らかである。二〇一五年度の消費者物価指数は対前年比で〇・八%上昇しており、〇・一七%の改善では、実質賃下げと言わざるを得ない。

 一時金は、人材確保や再任用職員の賃金改善などを求めた結果、国並みの四・三月、再任用者も二・二五月となったが、その改善は「勤務実績に応じた給与を推進する」として、引き上げ分をすべて勤勉手当に充てている。「国並み」への引き上げは評価できるが、その原資すべてを差別的な勤勉手当に充てるとした勧告には断固反対する。

 また、再任用者に「優秀」の上位区分をつくる内容となっているが、「良好」の成績率を下げて原資をつくり出すなど、この面でも格差を拡大するもので認められない。再任用者が望むのは、賃金改善や寒冷地手当など生活関連手当の支給であり、その実現につながる勧告をしてこそ、「これまで培ってきた能力や経験を活用」することにつながるものである。

 さらに、非正規職員の雇用の安定と賃金改善には全くふれられなかった。正規職員と同様の仕事をしている非正規雇用者の労働条件改善を引き続き人事委員会に求めていく。

【3】

 国言いいなりの配偶者手当「見直し」。配偶者は半額に、子は三千五百円引き上げ。

 配偶者手当については、ことしの道内の民間の「扶養家族の構成別支給月額」が一万三千四百二十九円にもかかわらず、公務の配偶者手当を半額にし、その原資を用いて子にかかる手当を三千五百円引き上げる「見直し」を行った。

 我々は、交渉で「見直し」によって、四割もの職員が不利益変更を受けることを明らかにさせ、この「見直し」の手法が職員間を対立させるものであることを示し、配偶者手当を削減せず、子の手当を改善するよう求めてきた。

 このことは、人事院が「女性の活躍」を口実にした政府の労働力不足政策に与し、民間準拠の実態がないにもかかわらず、公務率先で扶養手当を見直したことが背景にあるが、道人事委員会も同様であり、断じて認められない。

【4】

 再任用については、「再任用職員数の大幅な増加が見込まれている」中で、都市部に集中する希望者に「地方勤務を促す」ことや「能力や経験を活用」するために、「役付職員への再任用に引き続き積極的に取り組んで行く必要がある」と報告し、昨年度の「新たな制度を構築する必要」から後退した内容となった。国は、昨年十二月に定年延長ではなく、「再任用の義務化」の方針を明らかにしたが、依然として、教員の再任用率は低く、とりわけ高校教員では、希望者の四分の一が辞退を強いられている。これまでの通知や今回の国の方針に基づき、「希望する職員全員の再任用」を引き続き求めていく。

 また、両立支援については、「一の要介護状態ごとに三回以下、かつ合計六ヵ月以下で指定」「連続する三年以下、一日二時間以下の介護時間の新設」「介護休暇・育児休業・介護時間の取得が昇給・勤勉に直ちに不利にならない取扱」などについて、各任命権者で検討するよう求めているが、我々が求めた代替の確保や超勤解消などの環境整備については一切ふれていない。

 超勤については、昨年「年間七百二十時間以上の超勤を来年度末までにゼロにする」という目標を掲げた知事部局が、「七百二十時間以上超勤」が増加し、その解消として、「柔軟な業務分担の変更」「管理職員自ら業務優先度を判断」「業務の定型化、効率化」などのアンケート結果を紹介しているが、道人事委員会として、仕事の総量を減らすことや人員増などの具体策にはふれていない。

 学校現場では、「過労死ライン」を超える超勤にも残業手当は支給されず、給特法を理由に放置され続けている。引き続き、具体的な超勤解消策を明らかにするよう強く求めていく。

【5】

 道高教組・道教組が本年行った「学校職員実態・要求アンケート」では、時間外勤務について「一日三~五時間」が三九%、「六時間以上」が八%と、四七%もの教職員が三時間以上の超勤実態であることが明らかになった。そのような中で、今回の勧告は、道民・子どもたちのために日々奮闘している道職員・教職員をはげます内容とは到底いえない。

 また、「世界で一番企業が活躍しやすい国をめざす」ために、労働法制の改悪や社会保障の切り下げなどが狙われる中、我々は、今後も職場からの要求を束ね、公務労働者はもちろん、すべての労働者の賃金底上げや労働条件改善に積極的な役割を果たすべく、民間労働組合や民主団体とともにたたかいを進めていくものである。

 今後、任命権者との賃金確定交渉において、公務・民間労働者および道民と幅広く共同し、賃金や手当の改善、「希望者全員の再任用」と長時間過密労働の解消など労働環境整備の諸要求の実現と合わせて、憲法を守り活かす道民本位の道政をめざして総力を挙げてたたかうものである。

(関係団体 2016-10-17付)

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