道立学校事務改善に関する提言 道公立学校事務長会
(関係団体 2017-02-07付)

 道公立学校事務長会(永井進会長)が道教委に提出した「道立学校事務改善に関する提言」の概要はつぎのとおり。

【課題解決の方策】

▼事務職員定数検証

 昨今、時間外勤務の縮減がワークライフバランスを考える上で取り組むべき課題とされている。

 しかしながら、実際は、業務に追われ時間外勤務が増える傾向にある。事務処理の状況ならびに業務量と事務職員数が適正であるかを学校の実態調査を行うなど、早急に検証していただきたい。

 事務長会としては、学校事務室としての機能を十分に果たし、学校運営にも積極的に参画するためには、小規模校であっても最低三人の事務職員が必要と考えている。

〈提言の根拠〉

 公務補の委託による外勤、事務生の職務換えによる庶務事務も事務職員が担当することになり、事務改善以外の施策による事務職員を取り巻く環境も大きく変化している。現在、事務職員が実際に二人で勤務している学校があるが、出張や文書受付、来客・電話対応等で業務遂行に大きな支障が出ている状況である。特に、文書受付については、メールのプリントアウトにかなりの時間を要する。

 また、内部牽制が働きづらいという業務処理上の問題もある。

 さらに、事務改善の本来の目的である学校運営機能強化にも合致していない。

▼業務分担の見直し

 支援室・事務センターと事務室で重複している業務が多く、これらを解消していくことで効率化・省力化を図る。

▽支援室契約業務

 除排雪契約、生徒健康診断、一般・産業廃棄物処理契約等は、すでに一部集約している管内もあるが、集約効果が期待できる業務であることから、支援室での契約が望ましい。

 除排雪契約に関しては、民間の年間請負契約に対し、道の契約はその年の降雪状況によって総額が決まる単価契約であり、その積算単価も低いと言うことで、業者確保が困難な状況である。都市部に限られるが、複数の学校を一つのブロックにまとめることで、同一業者での請負が可能になり、学校、業者両者にメリットが生ずる。

〈提言の根拠〉

 除排雪契約については、従前から集約要望が多い。入札業務を現在の学校の事務室で行うのは、負担が大きい。ブロック化が可能な場合は、支援室契約となる。事務の効率化・省力化につながる。

▽自動販売機設置の教育財産貸付契約

 事務室での契約となっているが、実施時期、参加業者等を考慮しても集約効果が期待できることから、支援室契約が望ましいと考える。

〈提言の根拠〉

 支援室と学校の二ヵ所で手続を行うことで、業者が混乱している。

 業務を行っている学校数が少なく、個々の学校で契約するよりも集約し、一括して契約することによって効率的な処理ができる。

▽少額工事契約

 現行は百万円未満の工事は学校と規定されているが、請書、設計書および図面が省略可能な七十万円未満に下げていただきたい。

 また、学校では、工事契約の経験が浅い事務職員も増えており、積算や仕様書、図面の作成等で苦労している。工事内容ごとにまとめた事例集や実践的マニュアルの発行、また、研修の実施によって、基礎知識を習得させる等人材を育成するためのサポートをしていただきたい。

〈提言の根拠〉

 百万円以上の工事自体、学校での取扱件数が少ないため、実質的に集約前と変わっていない。予定価格の積算等は、価格が大きくなるほど難しくなるため、負担が大きい。

 同様な工事内容で積算が学校によって異なる等の指摘もあり、共通理解を図るためにも事例集、マニュアル等の発行を望む。

▽学校予算の調整配分

 事務長会として、予算調整の時期の延長について関係課に要望しているが、関係課からは、「困難」という回答をいただいている。一方、「学校間調整」は対応可能なことから、各局支援室が調整役を担うことで、学校予算の有効活用を図ることが可能となる。

▽旅費支給事務

 旅行命令簿と旅費請求書を別葉とし、旅費請求内訳書をデータで送付する。このことによって、訂正のためのやり取りを減少させることができ、迅速な支出ができると考える。

 この場合、様式作成と連動した精緻なソフトを導入することによって、事務センターも、学校も、正確な旅費計算によって効率化が図られ、支出に要する時間が短縮されると考える。

 将来的には、学校は旅行命令のみで、旅費計算は事務センター等で行い、重複業務の解消に努めていただきたい。

〈提言の根拠〉

 教職員事務センター旅費グループの業務は、旅費審査・支出のみであることから、学校での処理は旅費計算・添付書類整理があり、業務量としては集約前と大きく変わらず、効率化・省力化になっていない上、支給に関しては、以前より時間を要している。

 現在は前渡資金がなくなり、学校長は支出命令者ではなくなった。このことから、旅行者はセンター長へ旅費を請求することになるので、旅行命令と旅費請求書は別にしたほうが合理的であると考える。

▽叙位叙勲事務

 業務集約されたが、実質、学校で作業している部分が多いことから、功績調書の作成・更新等一部業務を学校とするなど、支援室と事務室の分担の見直しが必要と考える。また、管内によって、学校で作業する内容に違いがあるので、各管内でどのような処理をしているのか、支援室間で情報共有しながら、見直していただきたい。

〈提言の根拠〉

 管内によっては、膨大な業務となる支援室もある。現状を把握し、過度に業務が偏り、負担にならないように適切な見直しが必要である。

▼道立学校情報のデータ化

 基本的な学校の情報を可能な限りデータベース化し、変更のつど、事務室と支援室でデータを更新することで、学校情報の共有が可能になり、効率化・省力化が図れる。

 また、全学校で同様な整理をすることで、異動時においても、財産の把握が容易にできるメリットがある。

〈提言の根拠〉

 現在、校舎環境整備、ボイラー、消防設備、清掃等の契約ごとに支援室から照会があり、関係データを提出しており、効率化になっていない。

 同様な形式で処理された、データベース化した資料を参照することによって、全道どこの管内に異動しても、調査にも迅速に対応でき、学校、支援室の双方にとって効率化につながる。

▼ITシステムの見直し

▽電子届出システム

 教員個人が入力しやすい(分かりやすい)画面・方法の工夫が必要である。例えば、画面を見ながら対話形式での入力が可能な方法や、簡単に見られるマニュアルをシステム上に設置し、入力しやすい環境を整備する等の対応をしていただきたい。

 また、事務センター(給与)で行う不足書類等の照会は、直接、本人にメール送信(学校メールにも同時送信が必要)する対応も必要と考える。

〈提言の根拠〉

 本人の入力が基本であるが、教員には自分で入力が行えない者が多く、ほとんどの道立学校では、事務職員がサポートして入力している状況がある。また、事務センターからの照会も事務担当者が対応している。

▽予算経理システム

 実際の支出は、北海道トータルシステムで行っている現状から、学校ごとに新たにコード(細節コード)を割振り、学校ごとの管理を可能とする機能を付け加えることで、予算経理システムへの入力は不要になるのではないか。

 また、決算報告がトータルシステムによって容易にできるものと考える。

〈提言の根拠〉

 「予算経理システム」は、入力作業は支援室が行い、学校ではシステムにデータをインポートして入力内容を確認するというものであるが、データ入力にかなりの時間を要する割には、データ確認後、このシステムの活用ができないため、学校で経理簿を別に作成するなど省力化にはなっていない。

▼人材育成

 支援室においても、集合研修等の開催をしているとは思うが、学校事務職員の研修機会が少ないので、財務に関する研修会(疑似体験)やオンデマンド研修など様々な研修機会を設けていただきたい。

 また、その研修内容を各学校に情報提供していただきたい。

〈提言の根拠〉

 以前、支庁会計課に会計研究会という組織があった。十数年前に解散したが、財務に関する規則の変更など、五~六月ごろに会議を開催し、改正ポイント等を説明していた。現在はそのような研修会もなくなり、支援室契約が多くなったことによって、学校事務職員の財務規則等に関する知識の低下が危惧されている。

▼事務改善推進会議の設置

 支援室と事務室が定期的に、改善に向けた情報交換ができる場を設置し、業務処理に関する共通理解を図り、今後も、集約業務の検証と改善に対する意識をもっていただきたい。

〈提言の根拠〉

 現在、支援室と事務室が協議する場がなく、共通理解を図ったり、業務内容を調整するといったことができず、お互いに理解不足が生じていると思われる。

 業務の効率化・省力化を進める上で、支援室と事務室の連携は必要不可欠である。

▼その他

▽職員健康診断二次検査

 現在、学校で契約および受診結果報告をしているが、一次検査と同様に、福利課が地域ごとに医療機関と契約することが効率的であり、改善していただきたい。

【さらなる効率化・省力化に向けた取組の推進】

 北海道の事務処理における現状を検証するため、先進地域として、都立高校での調査を実施したが、そこでは、電子決裁の活用や職員ポータル(行政部局と学校のオンライン化)等によって、文書送付の手間を省いたり、学校の様々なデータを蓄積するシステムが構築されている。このデータ蓄積によって、従来、各学校で行っていた勤務および業務実績に関する調査も不要となり、当該データに照会することで、実態を把握できる環境が整備されていた。

▼学校事務のオンライン化の実施

 行政部局と学校間では、旅費請求書などの書類は郵送等によらなければならないのが現状である。

 行政部局と学校間で電子決裁を可能にすることで、旅費請求書や通知・報告文書などの書類をオンラインで送受信することが可能になり、文書番号簿への記載や文書受付簿の整理、郵送料および時間の節約が期待できるとともに、ペーパーレスを推進する環境が整備される。

▼出勤簿の電子システム化の導入

 タイムカード式出退勤管理システムの導入や休暇願を電子決裁することによって、出勤簿の整理が不要になる。また、出勤状況をデータで蓄積することによって、パソコン上で欠勤日数等も自動的に集計され、勤勉手当、昇給等で勤務日数等の確認が容易となり、事務処理の省力化が図られる。

▼学校基本情報のデータベースの構築

 学校基本情報について、現在行っている調査と同じ内容、形式でデータの蓄積が可能であれば、あらためて、その都度調査する必要がなくなることから、北海道においても将来に向け、服務、財務等に関するデータベースの構築を図ることで、調査業務の集約・縮減等大幅な効率化・省力化が図られると考える。

(関係団体 2017-02-07付)

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