メンタルヘルスを高める職場のコミュニケーションづくり №24 職場リーダーのメンタルの保持・増進のために(メンタルヘルス 2017-04-14付)
今回が本シリーズの最終回となります。今回は、職場のリーダー自身のメンタルヘルスを高めるためのコミュニケーションのとらえ方を説明します。
◆人は変わらない、変わるのは自分と考える
学校リーダーは自校の教育活動の推進や、業務の円滑な推進のため教職員へ様々な働きかけをします。しかし、時として相手の理解を得ることができず、その悩みがストレスになってしまうことがあります。
指導的立場にある学校リーダーは相手に変わることを求めますが、自分を変えようとすることは苦手です。その理由は、「自分を変えず、人を変えようとばかりしているから」です。学校経営を進めていく中では、様々な問題が起こります。そうした状況の中では、取組の方法や、教職員とのかかわり方に問題はないか、リーダー自らが冷静に問い直し、状況に応じた対応を考えていくことも大切です。
生徒指導を例にとっても、過去は叱責や指導がよく行われてきました。現在は、生徒理解に立った指導が当然のように行われています。教職員との関係でも、明確な上下関係がよしとされた時代もありましたが、これからの時代は、教職員の話をよく聞き、そこで出された意見なども取り入れながら、「チーム学校」を意識した教職員との関係づくりが必要です。そのためには、過去の知識や経験にとらわれず、「人は変わらない、変わるのは自分」など、学校リーダー自らが、これからの人との人間関係について学んでいくことが求められています。
◆マイナスの感情にとらわれない自分づくり
感情は、お互いに分かり合うためのものであり、決して対立するためにあるのではありません。学校リーダーに求められる心の力は、心の揺れ幅が少ないことです。特に否定的な経験をしたときなどは「情緒の安定度」が、ある一定の揺れ幅に収まっていることが大切です。ストレスは感情が激しく揺れ動くときに感じます。
想定外のことが起きても、冷静に対処していくことが求められます。
学校リーダーだけではありませんが、事故や事件が起きたときなど、プライドにこだわるあまり、説明などの場で一人相撲を取り、周りとの関係を著しく損ねてしまうことがあります。
押されれば押し返すのが感情であり、正論であっても感情的に納得していなければ、相手は正しく受け止めてくれません。本連載の最初に示した傾聴法で、相手の言い分を正しく聞き、不毛な議論にならないように話を進めることが大切です。
◆自分の立ち振る舞いを客観的に振り返る
学校リーダーは、その一挙一動が教職員から注目されています。そのため、望ましい職場づくりのために、自身の立ち振る舞いを意識的に振り返ることが必要です。人間の思考や行動にはそれぞれクセがあります。特に感情は同じパターンを繰り返します。自分を客観的にみつめ、なりたい自分像と現状を比較しながら改善のための努力を積み重ねていくことが、より良い職場コミュニケーションづくりにつながっていきます。
(前公立学校共済組合北海道支部学校支援アドバイザー・石垣則昭) (シリーズおわり)
(メンタルヘルス 2017-04-14付)
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