【PickUp2017】渡島管内 乗り入れ授業、小中一貫の糸口に 八雲町落部小・落部中の挑戦
(学校 2017-12-21付)

◆学校づくりのモデルを模索

 道教委の新規事業「小中一貫教育支援事業」の指定を受けた八雲町立落部小学校(見延誠一校長)、落部中学校(池田公貴校長)の二校は、八雲町教委の「小中一貫型コミュニティ・スクール(CS)」の活動を取り入れながら、学校づくりのモデルを模索している。

 この事業は、中学校区において、目指す子どもの姿を学校関係者・保護者・地域住民が共有し、小・中学校九年間を通じた教育課程の編成・実施など、地域の実情に応じた小中一貫教育導入の取組を支援することで義務教育の質の向上を図るもの。

 一方、町教委では「みんなでつながる、みんなで支える、みんなが生きる学校づくり」を基本目標とした小中一貫型CSを進めており、来年度からは町内の全中学校区でCSを導入する方針。落部地区は、そのモデル校として五月に指定を受けており、取組の成果に期待が寄せられている。

◆算数・数学と音楽テーマに

 事業実施に向け、昨年から両校の管理職など六人で構成する落部小中学校一貫教育運営委員会を設置。落部地区の目指す子ども像などについて協議してきた。

 全国学力・学習状況調査の結果などをもとに現状と課題を洗い出した結果、「義務教育課程九年間を見通した算数・数学の教育課程の編成と検証改善サイクルの確立」と「豊かな心と情操を育むための専門性の高い音楽の指導」の必要性が浮かび上がった。これらを実現化するため、算数・数学では小中相互に、音楽では中学校の教員を小学校に派遣する「乗り入れ授業」の実施を決定した。

 乗り入れ授業は、算数が五・六年生で年間百七十五時間、音楽は六年生のみで三十五時間。数学については十五時間をチーム・ティーチング形式(TT)で実施することにした。実施に当たっては、道教委事業の指定で中学校に加配となった数学教諭が基本的に毎日、小学校を訪問。音楽は中学校の音楽教諭が週一回程度小学校で、数学は六年生の担任が月に一回ほど中学校で指導に当たっている。

 算数の乗り入れ授業を担当する落部中の野村直樹教諭は、TTの役割分担の中で小・中の学びをつなげる部分に力点を置く。図形の角を調べる授業では、中学校の授業と関連する部分が出てきたときに、「中学校では四角形以上の多角形の和を求める授業がある。今の部分は分かっていることが当たり前のことになる」などと説明する。

◆6年生の意識の変化に手ごたえ感じる

 当初は「児童が戸惑っているのが分かった」と話す野村教諭だが、ことしの取組を通じて手ごたえを感じている。「特に六年生は、中学校とのかかわりの説明に関心を持つようになってきている。児童との授業後のコミュニケーションも増えている」。

 見延校長も「野村教諭が前に立って説明すると、大事な部分なんだという意識をもって聞いている」と児童の変化を感じ取っている。

 音楽についても、落部小の藤谷毅教頭は「昨年よりも表現力や授業への積極性が向上している」と話しており、中学校教諭の専門性を生かした授業の成果が表れている。

◆課題は時間、意識

 その一方で「授業の打ち合わせをする時間の不足」「小・中学校全体で取り組む意識の醸成」「事業の指定終了後の対応」という課題が明らかになってきている。

 見延校長は「来年度からは外国語活動の時数増加でさらに多忙になる」と、教諭が時間をつくる難しさを指摘する。指定終了後に加配措置が継続されるかどうかは不透明だが、仮に継続されなければ、対応は難しくなる。八雲町教委の本庄伯幸指導主事も「現在と同様の乗り入れ授業の実施は定数では難しいが、成果が出ているので何とか継続していきたい」と苦しい胸の内を吐露する。

 一方、落部中の増田正弘教頭は、大半の児童生徒、教諭が乗り入れ授業にかかわっていないことを指摘。「学校づくりに参画しているという意識を全体でもつことが重要」と対応の必要性を感じている。

 見延校長は「まだ一年目で、一貫というよりも連携という部分が強い」と取組が緒についたばかりであることを強調。その上で「各教員が情報を共有しながら、九年間を見通した教育を推進していきたい」としており、その中でどう課題解決を図り、さらなる成果につなげていくのか、今後の動向が注目される。

(学校 2017-12-21付)

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