高・特校長会議の道教委所管事項説明 赤間学校教育局指導担当局長
(道・道教委 2018-05-16付)

局長所管事項説明⑤赤間局指導担当局長
学校経営にかかわっての留意点などを話した

【公立学校全般にかかる事項】

▼教職員の資質能力の向上

 道教委では、改正された教育公務員特例法に基づき、本年三月に三十年度道教員研修計画を策定した。

 この計画は、昨年十二月に策定した北海道における教員育成指標を踏まえ、体系的かつ効果的な教員研修の実施を目指し「各キャリアステージの段階で、どのような資質能力をどのような研修内容を通じて身に付けさせるのか」という、研修内容の系統性、発展性が分かるようにまとめている。

 この計画を参考とすることによって、教員が研修体系や研修内容などを把握し、自ら受講する研修の意義などについて理解を深め、研修効果を高めることができるほか、学校で校内研修を計画・実施する際に、道教委の研修との関連を図ることできるものと考えている。

 各学校においては、教員一人ひとりの資質能力の向上に向け教員育成指標と併せて本計画を活用し、教職経験などに応じた基本研修や教育課題研修、専門研修への積極的な参加やOJTなどを通じて日常的に学び合う校内研修の充実などに取り組んでいただきたい。

▼教育の情報化の推進

 AIやIoT、ビッグデータなどの急速な技術革新や一層のグローバル化が進む中、予測が困難な時代を生き抜く子どもたちにとって、情報活用能力は、将来の仕事に欠かせないものであり、その育成のためにはICTを適切に活用した学習活動の充実を図る必要がある。

 こうした状況を踏まえ、道教委では、これからの時代に求められる情報活用能力の育成などが全道において確実に図られるよう、本道における教育の情報化の目指す姿として、昨年十二月に北海道における教育の情報化推進指針を策定した。

 各学校においては、指針に基づき、情報活用能力の育成にかかわる内容などを教科等横断的な視点で組み立てるなど、学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを工夫していただきたい。

 また、特別な支援を必要とする生徒の指導や支援において、生徒の学習上などの困難さを軽減させる視点から、必要に応じてICT機器を活用していただきたい。

▼部活動休養日等の完全実施

 部活動休養日などの完全実施については、すべての道立学校において「週一日程度は部活動休養日を設けること」などの事項が徹底されるよう本年三月に通知した。

 生徒が十分な休養を取り、部活動以外にも、多様な活動を行うことができるよう各学校においては、保護者や地域に対し、取組についての理解を促すとともに、部活動に関する学校の目標や計画などについて積極的な説明を行うなど、保護者、地域と思いを一つにしながら、完全実施に向けた取組を進めていくことが重要であると考えているので、適切に対応していただきたい。

 また、道教委では、部活動の充実にかかる取組の一つとして、本年度から、道立学校における部活動指導員配置事業を実施することとしたが、部活動指導員の配置に際しては、当該部活動に限らず、校内のすべての部活動において、アクション・プランに示す休養日や活動時間の順守を条件とした上で、国のガイドラインにも配慮した形で部活動を実施するよう努めていただきたい。

▼生徒指導および学校安全

 いじめの問題への対応について、道教委では、本年二月に道いじめ防止基本方針を改定した。各学校においては、本基本方針を踏まえるとともに、各学校のいじめ防止基本方針に基づき、家庭や関係機関などと連携して、適切な対応に努めていただきたい。

 また、先月、道立学校で発生したいじめによる重大事態の事案について、第三者委員会の調査の結果が公表されたが、当該学校の課題として、学校いじめ防止基本方針に掲げている年間計画に沿ったいじめ防止対策が行われていなかった点や、いじめの訴えを受けた教員が個人的な判断でいじめではないと対応した点、学校いじめ対策組織の開催が遅かった点などが指摘されているほか、当該校の課題を踏まえ、再発防止などのための方策が提言されているので、各学校においては、同種の事態は、どの学校にも起こり得るとの緊張感をもちながら、提言内容や改定された道いじめ防止基本方針を十分に踏まえ、家庭や関係機関と連携して適切に対応していただきたい。

 自殺予防教育について。北海道における自殺予防に関する取組をみると、近年、全国の年間自殺者数は減少したとはいえ依然として二万人を超えているとともに、十九歳以下の若年層の自殺死亡率は十年以降横ばい傾向にある。

 また、SNSを利用して自殺願望を投稿するなどした高校生を言葉巧みに誘い出し殺害するといった極めて卑劣な事件も発生している。

 こうした中、国は、二十八年に改正した自殺対策基本法において、困難な事態や強い心理的負担への対処の仕方を身に付けるための教育の推進について示すとともに、二十九年に閣議決定した自殺総合対策大綱では、自殺の事前対応のさらに前段階での取組として、各学校においてSOSの出し方に関する教育を積極的に推進するよう求めている。

 道教委では、大綱に示された児童生徒の自殺予防の取組に先駆けて、二十八年度から文部科学省の自殺予防に対する効果的な取組に関する調査研究の指定を受け、児童生徒の自殺を予防するためのプログラムを作成し、昨年度すべての高校および特別支援学校に送付したが、本プログラムでは、「援助希求的態度」「早期の問題認識」「ストレス対処スキル」の三つの能力を育成することを目指しており、特にストレス対処スキルは、四つの考え直す力を具体的に示している。

 本年度も国から指定を受け、ステップアッププログラム事業の指定校において本プログラムを実施するとともに、子ども理解支援ツール「ほっと二〇一八」や「ほっとプラス」(ストレス対処スキル質問紙調査法)によって、コミュニケーション能力や自己有用感など、生徒に求める能力などが身に付いたかどうか検証することとしており、指定校以外の学校においても、本プログラムを活用し、生徒の自殺予防に向けた取組を推進していただきたい。

 安全教育の充実について。全国的には、学校の管理下における様々な事故や不審者による児童生徒等が被害に遭う事件、自然災害に起因する死亡事故など、重大事件・事故災害が依然として発生しており、国においては、本年三月、雷や竜巻、弾道ミサイルの発射などの新たな危機への対応を含めた『学校の危機管理マニュアル作成の手引』を作成した。

 道教委では、これまでも、学校における危機管理の手引や学校安全推進資料を作成・配布するとともに、学校安全教室や学校安全推進会議を実施するなど、学校や地域の取組を支援してきた。

 各学校においては、国や道教委の資料などを参考に、自校の危機管理マニュアルの見直しや改善を図り、事件・事故災害の未然防止に努めるとともに、事故発生時に適切に対応できるよう、準備を行っていただきたい。

 自転車の安全利用に向けた安全指導の徹底についてであるが、本年四月、道内において、自転車ひき逃げ事件が連続して発生したが、道警本部の調べによると、道内の高校生などが歩行者に危険を及ぼす違反などによって自転車の運転中に警察官に指導された件数は、二十九年中で約三千五百件となっており、交通ルールやマナーを無視した運転による自転車の交通事故が多発している現状にある。

 道教委では、これまでも、『児童生徒の安全な自転車利用について』を作成・配布するなどして、交通事故に遭わないことはもとより、事故を起こさないための交通ルールの順守や他人をいたわることの大切さなどについて啓発してきた。

 各学校においては、生徒に対し、安全な自転車の利用について指導を徹底するとともに、学校だよりやPTA総会などを通じて、すべての保護者に損害賠償保険の加入を勧めるなど、万一の事態を想定した万全の準備を講じていただきたい。

▼学校体育および健康教育の充実

 オリンピック・パラリンピック教育について。現在、国では二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、オリパラ・ムーブメント全国展開事業を実施しており、本年度から、北海道も地域拠点として本事業を展開していくこととしている。

 道教委としては、本事業を活用して子どもたちの豊かなスポーツライフの実現に向けた機運の醸成を図っていきたいと考えており、各学校においては、科目体育ですべての生徒が履修することとなっている体育理論領域で、オリパラの精神や歴史に関する学習を取り入れるなど、指導内容を工夫するほか、パラリンピック種目体験の実施など、授業の一層の充実を図っていただきたい。

 学校保健委員会の活性化について。アレルギー疾患の増加やメンタルヘルスの問題といった従前からの健康課題に加え、妊娠・出産にかかわる女性の健康問題、大規模な自然災害や事件・事故で被害に遭った子どもの心のケアなどの問題も生じてきており、これらの課題に対応するため、各学校においては、学校保健委員会に学校医などの学校三師を委員に含め、専門的見地から指導助言を受けるとともに、必要に応じて保護者や地域の関係機関等と連携を図るなどして機能的な組織体制を整備することや委員会を年に複数回開催し、自校の学校保健にかかわる取組の改善充実を図ることを通して、学校保健委員会の活性化を図っていただきたい。

 学校における食育の推進について、栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れなどに起因する健康課題に適切に対応するため、児童生徒に食に関する知識と望ましい食習慣を身に付けさせることができるよう、食育の観点を踏まえた学校給食の食事内容の充実を図り、食育の推進に努めていただきたい。

 また、学校給食に起因する異物混入、食物アレルギーなどの事故が発生しており、日ごろから教職員の共通理解のもと、危機管理体制を確立することが大切であることから、学校給食衛生管理マニュアルや食物アレルギー対応の進め方、また、特別支援学校においては、特別支援学校における再調理のガイドラインに基づき、事故の未然防止に努めるとともに、実践的な研修を実施し、事故発生時の対応や連絡体制を全教職員で確認するなど、児童生徒の安全確保に万全を期していただきたい。

◆グローバル語り部事業実施へ

【特別支援学校にかかる事項】

 昨年四月に告示された特別支援学校幼稚部教育要領、小学部・中学部学習指導要領の改訂の基本的な考え方の三つの柱は「初等中等教育全体の改善・充実の方向性を重視」「幼稚園、小・中・高校の教育課程との連続性を重視」「障がいの重度・重複化、多様化への対応と卒業後の自立と社会参加に向けた充実」となっている。

 各学校においては、新しい学習指導要領などの趣旨を踏まえ、自校の教育課程の評価・改善に取り組んでいただきたい。

 また、本年策定した特別支援教育に関する基本方針おいては「幼児児童生徒一人ひとりの資質・能力を可能な限り伸長させる教育を推進するほか、多様化する教育的ニーズに応える体制の構築や切れ目のない一貫した指導や支援の充実、安全・安心な教育環境を提供するための体制整備、障がい種ごとの専門性向上を目指した研究や相談などの充実、センター的機能の発揮による地域の特別支援教育の充実に向けた取組を進める」と示しており、校長の皆さんには、リーダーシップを一層発揮して取り組んでいただきたい。

▼特別支援学校のセンター的機能など

 予測困難で変化が激しく、多様性が高まる社会において、障がいのある子どもたちが自立して生き抜く力を身に付けるとともに、すべての子どもたちが個性を尊重し、ともに支え合う心を育むことができるよう、特別支援学校と小・中学校、高校などが相互の連携を深め、特別支援教育の推進を図っていくことが極めて重要である。

 二十九年度特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣実施状況では、特別支援学校において、九百五十六校の小・中学校、高校などに教員を派遣していただいたことに感謝を申し上げる。

 特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業推進校・協力校の一覧では、特別支援学校において、小・中学校、高校に対し、新しい学習指導要領を踏まえた助言を行うことができるよう、まずは自校における障がい種に応じた質の高い授業の実施に向け、校内研修体制を整備し、専門性の向上を図るなどして、センター的機能の一層の充実に努めていただきたい。

【高校教育にかかる事項】

▼これからの時代に求められる資質・能力の育成

 本年三月三十日付で高校学習指導要領の全部を改訂する告示などが公示されたが、改訂の基本的な考え方として「社会に開かれた教育課程を重視し、子どもたちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成すること」「知識および技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成すること」「高大接続改革という、高校教育改革を含む初等中等教育改革と大学教育改革、そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革の一体的改革の中で実施される改訂であること」などが示されている。

 道教委では、高校教育の質の確保・向上を図ることなどを目的として、二十八年度から道高校学力向上実践事業を実施しているが、最終年度である本年度は、コア、ベーシック、アドバンストの三つのモデルごとに、これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指した教材や学力テストの開発に取り組んでいく考えである。

 また、教科指導講座、進学指導講座、ICT活用講座についても、すべての生徒がこれからの時代に求められる資質・能力を身に付けることができるよう、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた学習・指導方法等の改善を図るなど、新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた内容の充実を図っていくこととしており、各学校においては、多くの教員が参加できるよう配慮をいただきたい。 

 なお、各学校においては、ことし四月に入学した一年生が高校生のための学びの基礎診断や大学入学共通テストの対象となることから、今後通知される移行措置期間の特例を視野に入れつつ、学校教育全体や各教科・科目などにおける指導を通して育成を目指す資質・能力を明確にしていくとともに、大学入学者選抜における調査書や推薦書、活動報告書などの提出書類等の改善の動きにも注視する必要があると考えている。

▼グローバル人材の育成

 社会のグローバル化が急速に進展する中、高校教育においても、これからの社会を担う生徒に対し、国際社会の一員としての自覚をもち、自国はもとより、諸外国の歴史や文化、伝統などについて理解を深め、尊重し、様々な価値観をもつ人々とともに協調して生きていく態度や外国語を通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成することが求められている。

 こうしたことから、道教委では、新たな取組として、生徒の海外留学や海外進学への意欲を高めるため、昨年度まで道内五会場で行われていた留学フェアに代わり、留学経験者および海外勤務経験者などを派遣し、講演などを実施する道グローバル語り部事業を道立高校十八校で開催することとしているほか、昨年度まで実施していたスーパーイングリッシュキャンプの後継事業として、国際社会に対応できる英語力や国際理解能力を備えた人材の育成を図るグローバル人材育成キャンプを全道四ヵ所で実施することとしている。

 また、北海道大学などと連携し、留学生と高校生を相互に派遣し合い、北海道にいながら擬似的に留学を体験できる「Hokkaido Study Abroad Program」を実施する予定である。

 いずれの事業も、詳細が決定次第知らせるので、各学校においては、生徒の参加および留学生の受け入れなどについて配慮いただきたい。

▼高校における特別支援教育

 道教委が実施した二十九年度通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒等に関する調査の結果から、通常の学級に在籍し特別な教育的支援を必要とする生徒は、約六割の高校に在籍しているが、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成状況は、昨年度より減少傾向にあることが分かった。

 新しい高校学習指導要領において、障がいのある生徒などについては個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し、活用することに努めるものとすることが明記されており、各学校においては、道教委と保健福祉部が共同で作成した『支援体制づくり取組事例集』を参考にするなどして、特別な教育的支援を必要とするすべての生徒について個別の指導計画と個別の教育支援計画を作成し、活用することはもとより、出身中学校や進学先との引き継ぎについても、十分留意していただきたい。

 また、学校教育法施行規則の改正によって、本年度から高校において、いわゆる「通級による指導」を行うことが可能となり、新しい高校学習指導要領にも、通級による指導における単位の修得の認定などについて規定されている。

 道立高校では本年度、四校で通級による指導を実施するが、各学校においては、特別支援学校のセンター的機能の活用による校内研修の充実や道教委が実施する各種研修会への参加などによって、教員の専門性の向上に努めていただきたい。

 なお、新しい高校学習指導要領では、各教科などにおいて、各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱いなどで「障がいのある生徒などについては、学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと」とされていることから、各学校においては、こうした生徒への対応を一層進めていただきたい。

▼キャリア教育の充実

 二十七年度から三年間実施した小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業は、児童生徒が地域の人々の生き方や産業などにふれることによって、地域への理解を深め、自らの生き方について考えるといった成果を得るとともに、地域によっては、事業が終了したあとも、これまでの取組を継続させるための検討が行われるなど、本事業を契機として、地域を担う人材の育成に取り組もうとする機運も生まれてきている。

 今後、地方創生の観点から、こうした取組がそれぞれの地域で主体的に推進されるよう、事業成果を取りまとめた報告書や新たに学校と地域が連携するためのガイドブックを作成し、各市町村教委や高校に提供するので、積極的に活用し、取組を広げていただきたい。

 また、本年度から実施する道ふるさと・みらい創生推進事業の一つとして、生徒自らが地域課題をテーマとして、地域社会の一員との意識をもちながら、自治体や企業、産業界などと連携してその解決を図るという実践研究を行うこととしている。

 こうした地域の教育資源を生かした取組は、地域の人々と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子どもたちを育む地域とともにある学校への転換に向けたものと考えることもできる。

 道教委では、総合的なポータルサイトを開設し、各学校の取組を支援していくこととしているので、各学校においては、地域と主体的に連携・協働し、地域の特性や教育資源などを活用したキャリア教育の充実に取り組んでいただきたい。

◆育成目指す資質・能力明確に

【学校経営にかかわる留意事項】

▼学校経営指導

 本年度の学校経営指導は、教育指導監による全道立高校長との面談、石狩に加え、上川、十勝に配置となった主幹による採用校長と二年目の校長、および昇任教頭の学校への訪問を行うこととしている。

 新たな体制によって、これまで以上にきめ細かな経営指導、助言を行っていきたいと考えているので、校長の皆さんからも、様々な課題解決に向け、相談、問い合わせをしていただきたい。

▼学習指導要領の質的転換

 本年三月に高校学習指導要領が告示され、特別支援学校高等部学習指導要領も間もなく告示される予定であり、移行措置として、総則などについては、来年度から新学習指導要領によるものとすることが想定されることから、本年度中に、学習指導要領改訂を踏まえて学校経営全体の見直しを図ることが重要である。

 今回の学習指導要領改訂は、これまでにない大きな質的転換を図ったもので、中央教育審議会における、教育課程企画特別部会設置(二十六年)、「論点整理」(二十七年)、「審議のまとめ」(二十八年)の公表を経て、中央教育審議会答申、学習指導要領告示に至っており、改訂の趣旨について、この間の検討を通して十分理解されていることと思うが、あらためて確認しておきたい。

 新学習指導要領の目指す姿は社会に開かれた教育課程の理念のもと、子どもたちが未来社会を切り拓くための資質・能力を確実に育むためにカリキュラム・マネジメントを確立させ、主体的・対話的で深い学びを実現することである。

 今回の改訂では、育成を目指す資質・能力の視点から学習指導要領の構造を大きく見直したことを確認する必要がある。学習する子どもの視点に立ち、教育課程全体や各教科などの学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成を目指す資質・能力を整理した上で、その育成のために「何を学ぶのか」という教育内容と「どのように学ぶのか」という教育方法を目的実現の手段として位置付ける構造としている。

 具体的には、各教科などの目標および内容を、

①知識および技能

②思考力、判断力、表現力など

③学びに向かう力、人間性など

 ―の三つの柱で再整理している。従来の学習指導要領において、各教科等の主要な内容であった領域固有の知識や技能を学ぶ中で、思考力・判断力・表現力などの資質・能力を育むことが明確に示されている。これまでも、各教員の工夫によって思考力などの育成に取り組んできているが、それを学習指導要領で可視化したものと言える。

 さらに、各教科等の学びにおいて、各教科等で示された資質・能力に加え、学校として育成を目指す資質・能力を育むことが求められており、カリキュラム・マネジメントが重要となる。学校として育成を目指す資質・能力は、教科横断的な視点に立った資質・能力であり、学習の基盤となる資質・能力および現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を位置付けることが求められている。

 したがって、来年度の総則等の実施に向け(小・中学校は本年度から)、各学校において、まず取り組むことは、学校教育目標や学校のグランドデザインなどにおいて、学校として育成を目指す資質・能力を明確にすることである。

 なお、学校教育目標については、各学校で定める総合的な学習(探究)の時間の目標との関連を図るものとするとしている。中教審答申では、総合的な学習(探究)の時間は、各学校の教育目標に直接的につながり、特に、高校では学校のミッションを体現するものとなるようにすることを求めている。

 したがって、各高校においては、来年度以降の総合的な探究の時間の実施に向け、現行の総合的な学習の時間の見直しを図ることが求められている。

 つぎに、カリキュラム・マネジメントによって、目指す資質・能力を各教科をはじめとする教育活動のどこで育むかを組織的、計画的に位置付けることである。

 さらに、そうした資質・能力を確実に育むために、主体的・対話的で深い学びの実現、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を推進していくことが求められている。各学校においては、すでに実践が進められているアクティブ・ラーニングが、資質・能力を育むという観点から検証しつつ、一層の改善を進めていただきたい。

▼生徒の発達の支援

 生徒指導について、今回の改訂で「学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること」とされた。

 中教審答申では「すべての教科などにおいて育む学びに向かう力・人間性が整理されることによって、今後、教科等における学習指導と生徒指導とは、目指すところがより明確に共有されることとなり、さらに密接な関係を有するものになると考えられるとし「学習指導においても、「子ども一人ひとりに応じた主体的・対話的で深い学びを実現していくために、生徒指導の機能を生かして充実を図っていくことが求められる」としている。

 また、二十八年の自殺対策基本法の改正では、学校

は困難な事態、強い心理的負担を受けた場合などにおける対処の仕方を身に付けるなどのための教育または啓発を行うよう努めるものとし、二十九年に閣議決定された自殺総合対策大綱では「自殺の事前対応のさらに前段階での取組を推進する」とし、SOSの出し方に関する教育を推進するとしている。

 今後、いじめ、不登校、自殺などの未然防止に向け、学習指導と関連付けながら生徒指導の充実を図り、望ましい人間関係などを育むとともに、すべての児童生徒にストレス対処能力などを育むことが求められる。

 さらに、障がいのある生徒などについてであるが、すべての教科・科目などで「学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと」と示された。新たに「困難さに応じた指導」と示され、これまで以上に、一人ひとりの児童生徒に対して、きめ細かな指導の工夫が求められる。

▼高大接続改革と学習指導要領改訂のスケジュールを踏まえた対応

 高大接続改革については、新たに、高校生のための学びの基礎診断および大学入学共通テストが、現高校一年生から導入されることを踏まえた対応を進めていただきたい。いずれも、現行学習指導要領の各教科・科目での導入となるが、学びの基礎診断においては「知識・技能を問う問題を中心に、思考力・判断力・表現力を問う問題をバランスよく出題」することとし、共通テストにおいては「次期学習指導要領の方向性を踏まえ、各教科・科目の特質に応じ、より思考力・判断力・表現力を重視した作問となるよう見直しを図る」としていることを視野に入れた対応が求められている。

 さらに、各大学の個別選抜においても、学力の三要素を評価する入試に改善することが求められていることにも留意することが必要である。

 こうしたことから、高校においては、本年度から、新学習指導要領の総則などを踏まえた指導を可能なことから随時導入していくことが望まれる。

 最後に、今回の学習指導要領改訂に向けては、二十八年十二月の中教審答申において「明治期に公布された学制に始まり、およそ七十年を経て、昭和二十二年には現代学校制度の根幹を定める学校教育法が制定された。今また、それからさらに七十年が経とうとしている」「この節目の時期に、これまでの蓄積を踏まえ評価しつつ、新しい時代にふさわしい学校教育の在り方を求めていく必要がある」としており、これまでにない大きな改革を推進していくことが求められている。

 校長の皆さんには、こうした動向を十分踏まえ、各学校において、生徒や地域の実態に応じて、全教職員による学校運営の推進、特に、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組んでいただきたい。

 道教委としては、生徒の未来を創り、本道の発展に貢献する学校教育の実現に向けて、校長の皆様と力を合わせて取り組んでいく所存であるので、お願いする。

(連載終わり)

(道・道教委 2018-05-16付)

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