南丘小メディアセンター設置―紋別市教委 学力向上へ図書館活用 文科省委託・学校図書館利活用にかかる調査研究
(市町村 2018-07-25付)

 【網走発】紋別市教委は、文部科学省委託・三十年度「学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の利活用にかかる調査研究」の事業概要をまとめた。市立南丘小学校を研究指定校に、南丘小メディアセンター(MMC)の設置、ICTと合わせた情報活用教育の推進などを通して、学力向上や生活習慣の改善に関する取組を進めていく。

 概要はつぎのとおり。

▼事業の目的

 学校図書館ガイドラインを踏まえた学校図書館の活用を通じ、学校における様々な課題の改善に資する取組に関する実践的調査研究を行い、学校図書館を活用した学力向上を目指す。

▼調査研究事項

▽学校図書館を活用した学力向上に関する取組

▽学校図書館を活用した身辺自立や生活習慣の改善に関する取組

▼調査研究の内容

▽学校図書館の活用による学校における課題改善の目標

・学力向上に関すること

 全国学力・学習状況調査において、国語・算数ともB問題(活用力)の平均正答率が低い。学習規律の徹底、家庭学習や読書活動を含めた学習習慣の形成、単位時間や単元を通した授業改善を行っているものの、改善に結び付いていない。

 そこで、学校図書館の整備・活用を推進し、児童の知的好奇心を喚起し、主体的に学ぶ意欲を育てるとともに、調べ方、学び方、情報活用の仕方を身に付けさせる取組を進めることで、標準学力検査における国語の「読む能力」「書く能力」、算数の「数学的思考」における平均偏差値を全国平均以上にする。

・身辺自立や生活習慣の改善に関すること

 学習用具の忘れ物や、提出物・宿題忘れが授業の妨げになっており、家庭学習や家での読書、学習準備を含めた自律的な生活習慣を身に付けさせることが学力の向上にも欠かせない。

 そこで、学校・家庭における読書活動の習慣化を主軸として、望ましい生活リズムの確立を推進し、翌日の学習準備や宿題・家庭学習の定着につなげたい。

 道教委作成の生活リズムチェックシート読書編を活用し、年複数回の読書週間を設けて、読書時間を調査するとともに、読書活動の推進を図り、テレビやゲームに充てられている時間を読書などに振り向けさせるよう、児童や保護者に働きかけていく。

 これによって、現在、一日平均二十一分である家での読書時間を三十分以上に引き上げる。また、現在、全校で統一して調査されていない項目として、不読率をゼロにすること、家庭学習の時間を学年×十分+十分以上の割合を六〇%以上にすること、忘れ物についても実態を把握した上で、新たに目標を設定することとする。

▽これまでの取組と現状の課題

・学校図書館経営計画の策定・南丘小メディアセンター(MMC)設置

 学力向上をはじめとする学校課題に解決に資する場とするべく、ICTを含め学校図書館整備の位置付けと本来担うべき役割を明確化し、整備方針、関係分掌相関図、校内の役割分担、公共図書館司書との連携業務などを定めた。

 しかし、学校司書が未配置のため専任で実務を担当する者がおらず、計画の実行性に課題があり、利用に供する時間も制限されている。また、資料価値のない本が多数を占め、学習課題の解決に機能するものになっていないが、台帳が電子化されておらず、蔵書の実数や鮮度が不明なこと、分類ごとの偏りを考慮した更新計画が立てられないこと、利用統計が取れないこと、紙のカードによる貸出返却手続きに非常に時間がかかり児童の読書活動推進の妨げになっていることなど、課題が多い。

 このため、学校図書館専用のパソコンを設置し、管理ソフトを導入、台帳を電子化し、蔵書の分類ごとの実数を把握すること、それに基づいて計画的な蔵書の更新を図ること、バーコードによる貸出しを行い開館時間に処理できる件数を増やせるようにする。

・利用実態の把握と読書指導の実施

 これまでも、児童を学校図書館へ誘導する掲示やイベントの開催、ボランティアサークルによる読み聞かせ、公共図書館の巡回司書による管理運営業務支援を行ってきた。しかし、蔵書や利用の実態が明らかになっておらず、有効な対策や目標の設定ができていない。

 そこで、管理ソフトの導入によって、児童の利用実態や読書傾向をつかみ、学年ごとの数値目標を設定し、児童の実態に応じた読書指導を行う。また、定期的に統計を取り、さらなる指導の改善に反映させる。

 このことによって、語いを増やし、日本語の言い回しや長い文の構造に慣れ、思考のツールとしての言語能力を高めさせるようにする。

・ICTと合わせた情報活用教育の推進

 パソコンやタブレットを使った調べ学習は行っているが、メディアリテラシーを含めた情報活用の基本について、系統的な指導は不十分な状況である。

 そこで、言葉を定義して使い、出典を明らかにするなど、調べ方や学び方の指導を学校図書館を使って行い、それを補うものとしてICTを活用するよう、全校的な情報活用教育を行っていく。

 このことによって、「国語辞典↓百科事典↓専門書↓パソコン」という自力解決の流れを習得させるとともに、分類や検索の仕組みを知り、事象を体系化、構造化してとらえる力を育て、学力調査問題などにおける思考の技能にも応用できるようにする。

・家庭学習・家での読書・忘れ物指導

 テレビやゲームの時間が長く、家庭学習の時間が短いなど、家に帰ってからの時間の使い方に課題がみられ、そのことが学力にも影響を与えていることが十分考えられる。

 このため、学校図書館を活用して、家での読書を推進する仕組みをつくり、これを軸に生活リズムを整えるようにし、家庭学習や忘れ物対策にも役立てるよう、つぎのような対策を講じる。

①読書意欲の喚起=ボランティアによる読み聞かせ、児童会による学校図書館行事の対策

②読書環境の整備=蔵書の更新(新刊購入)、公共図書館の蔵書の活用、開館時間の延長、貸出手続きの電子化(開館時間に手続きできる人数の増加)

③現在の家での読書時間平均=二一分→三〇分以上に

・児童の視野を広げ、夢をもてるようにする

 南丘小の児童は、素直で教師の働きかけにはよく従うものの、依存心が強く、思考や行動が概して受け身の傾向にある。これは、車依存社会でライフスタイルが家庭内に閉じており、遠隔地にあり交流人口が少なく、知的な刺激が少ないことなどが児童の発達に影響しているためと考えられる。

 こうした地域性を考慮したとき、児童の日常生活にとって、学校図書館を整備・活用することは、児童の視野や興味を広げ、よその世界を知り、自発的な学びの動機を与え、夢や希望をもつきっかけとなり得る。そこで、つぎの点についても、相関を検証する。

①学校図書館・公共図書館の利用回数

②新聞を読んでいるか

③将来の夢や目標をもっているか

 以上の点について、児童の実態や変容を保護者に知らせ、家庭と連携した取組を進める。

▼事業成果の評価の方法

▽学校図書館関係の指標

①児童生徒が学校図書館・公共図書館を利用した回数

②児童生徒、教職員が一ヵ月に読んだ本の冊数

③各教科等の授業における学校図書館の活用回数

④図書委員児童による自主的な読み聞かせや展示の活動回数

⑤家庭における読書時間、全く読んでいない児童の人数

⑥新聞を読んでいる回数、人数

▽学校の課題に関する指標(学校図書館関係以外の指標)

①学力状況に関する指標=NRT国語(読む・書く)、算数(数学的思考)

②忘れ物や宿題忘れの件数

③趣味、将来の夢をもっている児童の人数

④一人で公共交通機関を使って公共図書館などに通える児童の人数

(市町村 2018-07-25付)

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