道高校長協会等の31年度文教施策要望(関係団体 2018-07-27付)
道高校長協会(川口淳会長)、道高校教頭・副校長会(渡邉周一会長)、道公立学校事務長会(阿部雅一会長)の道教委に対する三十一年度文教施策に関する要望内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
道教委として、つぎの事項について十分配慮され、早期実現を図るよう要望する。
Ⅰ 教育にかかる各種計画および制度について
1 「北海道教育推進計画」
北海道教育推進計画の具現化に向けては、社会情勢の変化に即応し、安全・安心な学校づくりはもとより、地方創生の核となる教育活動の推進のため、また、学習指導要領の改訂や高大接続改革などに対応するため、質の高い教育環境の整備を一層推進することを要望する。
2 「これからの高校づくりに関する指針」および配置計画〈重点〉
「これからの高校づくりに関する指針」に基づき、公立高校配置計画を進めるに当たっては、国の動向を踏まえ、中・長期的展望に立ち、地域や学校の実情を把握するとともに、定時制通信制高校や私立高校の状況を考慮しつつ、教育条件の一層の充実のための施策に積極的に取り組むことを要望する。
また、募集定員の調整や学校の再編、多様なタイプの高校づくりに当たっては、当該校の準備期間を確保するため、教員の定数や人事異動、予算措置などについて十分配慮することを要望する。
3 学校職員人事評価制度〈重点〉
学校職員人事評価制度については、実施状況を検証し、一層の改善を図ることを要望する。
4 学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」〈重点〉
アクション・プランの理念を具現化するため、勤務時間の把握については、出退勤管理システム対照実験における実証結果を踏まえ、学校職員の負担にならないシステムの導入を要望する。
また、調査などを精選・削減し、事務作業の負担を軽減することを要望する。さらに「チーム学校」の実現に向けて、部活動指導員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、特別支援教育支援員など専門スタッフをより積極的に配置することを要望する。
5 高校入試制度
高校入学者選抜については、中卒者の減少をはじめ、学習指導要領の改訂や高大接続改革「これからの高校づくりに関する指針」などを踏まえつつ、保護者や中・高校などから幅広く意見を聴取するなどして、現行制度の検証と見直し・改善を行うことを要望する。
6 校務支援システム〈重点〉
校務支援システムについては、大学入試制度改革や学習指導要領の改訂に伴う対応が必須なことから、改修の方針およびスケジュールを明確にし、計画的に進めることを要望する。
7 学校事務の改善〈重点〉
道立学校の事務改善について、道立学校運営支援室および教職員事務センターに集約した業務の状況や集約効果、課題などの検証を行い、事務処理方法や事務職員の配置の改善を図ることを要望する。
Ⅱ 社会の変化や時代の要請に応える教育について
1 教育の機会均等〈重点〉
学校が地方創生の核となり、社会に開かれた教育課程を実現する観点から、特に地方の小規模校に対しては、経験年数や年齢など教職員構成のバランス、学校運営予算や施設設備の配慮を十分に行うとともに、大学入試改革に伴う英語の民間の資格・検定試験については、都市部以外の生徒が不利にならないよう、最大限に支援することを要望する。
2 キャリア教育の推進
高校生のインターンシップなどを通したキャリア教育を推進するために、引き続き予算の増額を図り、関係機関などとの連携を強化するとともに研修の充実を図ることを要望する。
3 グローバル教育の推進
グローバル社会において、リーダーシップを発揮し国際的に活躍する人材などを育てるグローバル教育を推進するために、知事部局や関係機関などとの連携を強化し、北海道総合教育大綱や「北海道のグローバル人材の育成について」に基づいた取組を進めることを要望する。また、新たな英語教育を推進するため、国の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」および「生徒の英語力向上プラン」の進捗状況や分析結果に応じた具体的な施策を講じることを要望する。
4 ICTを活用した教育の推進
「北海道における教育の情報化推進指針」に基づき、ICTを活用して生涯にわたり学習の基盤となる情報活用能力を身に付けるための教育を推進することを要望する。
特に、北海道の広域性や小規模校の実情を踏まえ、遠隔授業などの円滑な実施と拡充を図るほか、ICT支援員を配置することを要望する。
5 特別支援教育の推進〈重点〉
特別支援教育については「特別支援教育に関する基本方針」に基づき、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの理念のもと、特別な教育的支援を必要とする生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導や支援の充実を図るため、教員研修の充実や特別支援学校との人事交流による専門性の向上のほか、特別支援教育支援員の配置や特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業の拡充など、体制整備を一層進めることを要望する。
特に、三十年度から高校において「通級による指導」が可能となったことを踏まえ、北海道全体を見据えた今後の対応の方向性を明らかにするとともに「通級による指導」の実施が必要な学校には、専門的な知識・技能を有する教員の加配など指導体制の充実を図ることを要望する。
6 生徒の心の健康管理〈重点〉
不安やストレスに伴う不登校・薬物等の乱用・性の逸脱行為等が問題となり、生徒の心の健康管理が一層重要になっていることから、学校の実情に応じて、スクールカウンセラーの拡充やスクールソーシャルワーカーの派遣および関係専門機関との支援体制の充実を図ることを要望する。7 部活動によるスポーツや芸術文化活動の充実〈重点〉
これまで部活動が果たしてきた人間教育の役割を重視し、引き続き、社会をたくましく生きるための心身の健康や豊かな心を育むため、財政的な支援や指導者の養成・確保・配置、施設・設備の充実、北海道アクション・プランを踏まえた地域と連携した支援などを推進することを要望する。
また、華道・茶道など日本の伝統的な文化にかかる部活動指導員の配置について、特段の配慮を行うことを要望する。さらに、高体連・高文連・高野連・定通体連への人的・財政的支援について、特段の配慮を行うことを要望する。
8 学校図書館の充実
豊かな人間性を形成する場としての学校図書館の充実を図るため、改正学校図書館法の趣旨を踏まえ、学校司書の配置について計画的に進めることを要望する。
9 産業教育の充実〈重点〉
道産業教育審議会建議「本道におけるグローバル人材の育成に向けた産業教育の在り方について」を踏まえ、学校が社会と円滑に接続し、グローバル社会に対応できる資質・能力を育成できるよう、時代に即応した学科転換や教員研修の充実、施設・設備の更新によって、専門教育、職業教育の充実をより一層推進することを要望する。
また、安全確保のため、老朽化著しい施設・設備の改修・補修を早急に進めることを要望する。
10 定通教育の充実
多様な学習ニーズに応える定通教育の充実と活性化を図るため、道立通信制協力校の規模の縮小などに伴う面接指導講師の確保に十分配慮することを要望する。
また、道立通信制協力校には、生徒自身や家庭事情など複雑な問題を抱える生徒が多く在籍しており、よりきめ細かな対応・支援が必要なことから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの派遣ならびに特別支援教育支援員の配置について一層の充実を図ることを要望する。
Ⅲ 施設・設備について
1 老朽施設・設備の整備
生徒・職員の安全確保を図るため、老朽化の著しい校舎の整備、補修、大規模改造、改築や武道場の暖房等の整備を着実に進めることを要望する。特に、緊急を要する補修等に関しては、早急に予算措置をすることを要望する。また、グラウンドなどの屋外施設の改修や補修、撤去を計画的に進めることを要望する。
2 教育の情報化のための環境整備〈重点〉
教育の情報化を推進するため、ハードウェアおよびソフトウェアについて、更新の予算を確保し計画的に進めることを要望する。特に、校内LANの管理やセキュリティ対策、機器のメンテナンスなどにおける学校の負担を軽減し、設備管理の効率化を図ることを要望する。
また、無線LAN環境やタブレット端末、プロジェクターなど時代に即したICT活用のための環境整備・充実に努めることを要望する。
3 生徒の安全確保
外部の危険から生徒の安全を確保し、不審者などへ対応するため、防犯カメラの設置など施設・設備の整備について適切な対策を講じることを要望する。
4 自然災害への対応
自然災害に対応するための一層の環境整備については、地震や津波のほか、特に暴風雪等で孤立し一般的な通信手段が断たれた場合でも使用可能な自然災害時の通信手段の確保および指定避難所が機能するために必要な非常用物資等の備蓄・整備推進について市町村との連携と適切な対策を引き続き講じることを要望する。
5 給食の施設・設備の整備拡充
給食にかかる施設・設備について、空調設備など各校の課題に応じて学校給食衛生管理基準に基づく安全・安心な整備を引き続き進めることを要望する。
6 寄宿舎へのAED設置
生徒が日常的に生活を送る寄宿舎において、生命にかかわるような事態に迅速に対処することのできる危機管理体制を構築するため、AEDを設置することを要望する。
Ⅳ 学校運営費等について
1 学校運営費の増額および配分〈重点〉
適正かつ円滑な学校運営とさらなる保護者負担軽減のため、学校運営費の増額を図るとともに、学校・学科の実態や特色に即した教育活動の予算措置に配慮することを要望する。
2 普通旅費および研修旅費の確保
(1)教職員の研修旅費〈重点〉
新規学卒者求人確保対策費(旅費)などを引き続き確保することを要望する。
(2)修学旅行引率旅費等について〈重点〉
貸切りバスなど各種料金の大幅値上がりや地域の交通事情を踏まえた予算を確保することを要望する。また、配分基準教員数の激変緩和措置を継続するための予算を確保することや特別な配慮が必要な生徒の引率にかかる教員の増員など学校事情に引き続き対応することを要望する。
(3)全国大会、全道大会部活動引率旅費の確保
全国大会に出場する部活動引率旅費については、全額を引き続き予算措置することを要望する。
3 公費負担による口座振替
学校徴収金や団体会計については、公費に準じた取扱いになっていることから、金銭事故防止および学校事務の効率化の観点からも、引き続き公費負担による口座振替を実施することを要望する。
4 道高校奨学会奨学金の支給方式
道高校奨学会奨学金について、直接、奨学会から支給する方式を取り入れるよう、奨学会に働きかけることを要望する。
5 高校体育・文化活動への道費補助
体育・文化活動振興のため、高体連・高文連・定通体連に対する補助金の増額を図ることを要望する。
また、事務局体制の維持について特段の配慮を行うことを要望する。
6 大会参加旅費の補助(1)高体連、高文連、定通体連の全国大会に出場する生徒の交通費などについて、特に定時制・通信制に通学している生徒は経済的に困窮している家庭が多い状況にあることなどを考慮し、予算確保することを要望する。
(2)専門学科における農業および家庭クラブ活動は学習指導要領に位置付けられ、本道産業の発展を担う重要な活動であることから、全国大会に出場する生徒の交通費等について補助することを要望する。
Ⅴ 教職員関係について
1 教職員配置の改善
(1)教職員加配の弾力的な運用と拡充〈重点〉
学校や生徒の実態に即し、創意工夫を生かした学校改善、研究指定校事業の取組の充実、学習指導・生徒指導の質の向上、特別支援教育への対応などに積極的に取り組めるように、教職員加配の弾力的な運用と拡充を図ることを要望する。
(2)講師時間数増と任用の弾力化〈重点〉
生徒の実態に応じて多様な選択教科・科目を履修させ、生徒と向き合う時間を確保するため、学校の実情に十分配慮して講師時間数を増やすとともに、三間口以下の学校についても、間口数や学校の実態に応じた講師時間数の配当を図ることを要望する。
また、外国人講師の拡大およびALTの配置の拡充、民間非常勤講師の時間数確保について配慮することを要望する。
(3)校種・設置者にこだわらない学校間連携の制度化
小規模校の教育活動の活性化を図るため、道立学校間のみならず、校種・設置者にこだわらない学校間連携の制度化を検討することを要望する。
2 教職員の人事
(1)人事異動要綱・実施要領〈重点〉
人事異動要綱・実施要領については、長年勤務、都市部・郡部間の教員構成の不均衡、定年延長や再任用など様々な課題を解決するため、実効性のある改定を早急に進めることを要望する。
(2)行政職員にかかる人事
行政職員については、業務の円滑な遂行と相互牽制の確保のため、事務長および事務主任を全校に配置するとともに、都市部・郡部間の異動を促進することを要望する。
また、全・定併置校において、定時制に配分基準どおりに配置することを要望する。
(3)管理職にかかる人事ア 減少している教頭などの候補者を確保するため、待遇改善や特殊事情による勤務地への配慮など具体的かつ実効的な方策を早急に検討することを要望する。〈重点〉
イ 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく特定事業主行動計画」に基づき、女性管理職のために人事上特段の配慮をするなど条件整備を引き続き進めることを要望する。
ウ 副校長の配置については、学校組織運営体制の一層の充実を図る観点から、支部長校をはじめ、学校の実情に応じて、積極的に加配として配置することを要望する。
(4)主幹教諭配置にかかる講師時間数の配分
主幹教諭の授業担当時間数を軽減するための講師時間数を配分することを要望する。
(5)新採用にかかる人事
ア 教員希望者の減少や採用登録辞退者の増加を踏まえ、優れた人材を確保するため、北海道の教育や教職の魅力を効果的に発信し、具体的かつ実効性のある方策を講じることを要望する。
イ 職業学科の実習を担当する実習助手の採用について、専門性(知識・技術・技能)を有する者の確保に引き続き十分配慮することを要望する。
(6)初任者の配置にかかる人事
初任者の配置については、人事異動実施要領のとおり、小規模校および定時制課程を避けることを要望する。
(7)教科「看護」および「福祉」、「芸術」、「家庭」、「情報」の教員配置にかかる人事
教科「看護」および「福祉」、「芸術」、「家庭」、「情報」の教員配置については、地域や学校の実情を考慮の上、教員の確保、および積極的な任用や他校との兼務のための条件整備や特別免許状制度の活用を図るなど、特段の方策を講じることを要望する。
(8)再任用にかかる人事
再任用教員の取扱いについては、学校運営や教育活動の活性化および都市部・郡部間の異動促進の観点から、運用上の課題を検証し、必要な改善を図ることを要望する。
(9)期限付教諭にかかる人事
期限付教諭については、年間を通じてその確保が困難な状況にあり、学校運営に大きな支障が生じる事案が増えていることから、正規採用によって人材を確保することを要望する。
また、教職を目指す者に対し期限付教員として勤務することの利点をホームページ等を活用して丁寧に周知するなど、引き続き募集の充実を図り、時期を問わず確実に人材を確保することを要望する。
3 研修の充実強化
(1)教員の専門性を高める研修
高度情報化や科学技術の進展に対応する産業教育研修の充実や新学習指導要領に対応する研修、生徒の心のケアに実践的に対応できる教育相談研修など、教員の専門性を高める研修の充実に努めることを要望する。
また、英語の授業について、いわゆるオールイングリッシュでの授業を推進し発表・討論・交渉等の高度な言語活動を行うことができるよう、担当教員の資質・能力の向上に資する研修を悉皆で実施するなど、研修機会の拡充に努めることを要望する。
(2)これからの時代に求められる資質・能力を育むための研修
「主体的・対話的で深い学び」の観点からの授業改善、ICT活用など学力向上に関する諸課題に対応した研修の拡充を図ることを要望する。
(3)特別支援教育に関する研修
特別支援教育に関する校種間の連携の在り方を含めた実践的な研修を繰り返し実施するとともに、特別な配慮を必要とする生徒一人ひとりのニーズに応じた個別支援を充実させるための研修等の施策を講じることを要望する。
また、高校における通級による指導の導入に向けた研修をより一層推進することを要望する。
(4)行政職員の研修
学校事務体制の維持と事務職員の資質向上に向けた事務主任・事務職員・職務換職員の階層別研修の実施および研修機会の確保と実務研修の充実を図ることを要望する。
(5)教員免許更新制の環境整備
教員免許更新制については、円滑に行われるよう交通不便地で勤務する教員の受講環境の整備および新免許状所持者への対応について関係機関と十分な連携を図ることを要望する。
4 教職員の待遇改善
(1)給与改善措置
ア 給料表の最高号俸の上積み措置について、引き続き努力することを要望する。〈重点〉
イ 各種手当の削減・縮減等、教職員の待遇について改変を行う場合は、特に慎重に対応することを要望する。
ウ 寒冷地手当の支給については、本道の特性と物価の状況に配慮するよう関係機関に申し入れることを要望する。
エ 本道の広域性や再任用制度の趣旨を踏まえ、再任用職員にへき地手当、寒冷地手当等を支給することを要望する。
(2)管理職の待遇改善〈重点〉
人材確保・育成の観点から、給与・管理職手当等、職責に応じた給与・手当等待遇の在り方について早急に改善し、給与の完全回復を図ることを要望する。
(3)主幹教諭の待遇改善
主幹教諭の職責に応じた待遇改善を引き続き要望する。
(4)舎監等の待遇改善
寄宿舎を有する学校教職員の業務が過重であることから、舎務手当の増額、舎監の増員および農業経営者育成寮の寄宿舎指導員の配置等の過重負担軽減措置の改善を進めることを要望する。
(5)公宅の改築・補修等
老朽化した公宅の改築や補修の一層の促進を図るとともに、地域の実情に応じて改築・改修年限の短縮措置を講じるなど、特に郡部の住環境を改善することを要望する。
5 変形労働時間の期間の拡大
変形労働時間制度における四週の期間を拡大し、より趣旨が生かせるよう国に働きかけることを要望する。
(関係団体 2018-07-27付)
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