特別支援文教施策要望への道教委回答(道・道教委 2018-11-02付)
十月二十五日に開かれた道教委と道特別支援学校長会(宮崎真彰会長)、道特別支援学校副校長・教頭会(柏木拓也会長)、道公立学校事務長会(阿部雅一会長)との三十一年度道文教施策に関する教育懇談会(十月二十九日付1面既報)における三団体の要望に対する道教委の回答はつぎのとおり。
1 本道のインクルーシブ教育の推進に関する事項
(1)各地域におけるインクルーシブ教育の進展―重点
▽基本方針については、特別支援学校への冊子配布やWebページに掲載したほか、各校長会等の会議や各種研修会などにおいて広く周知するとともに、校長会はもとより各関係機関から広く意見を聴きながら、基本方針に掲げる方策等を着実に推進する。
▽各教育局を通じて、特別支援連携協議会のより一層の機能発揮について働きかけるとともに、道都市教育長会などの機会に周知する。
▽小・中学校、高校の管理職員に対する特別支援教育の研修会の実施については、採用校長および昇任教頭を対象とした公立小・中学校新任校長研修会および公立小・中学校新任教頭研修会において位置付けている。
また、道立教育研究所において、現職校長・副校長・教頭を対象とした研修を実施し、協議などにおいて、特別支援教育にかかる内容を扱っているところであり、研修の内容については本年度の実施状況を踏まえ、検討する。
▽スクールクラスターのモデル事業については、国の動向を注視しながら、実施について検討する。
(2)適切な学びの場の決定の促進と充実
▽障がいのある子どもについて、障がいの状態や必要な支援の内容、地域における体制整備の状況、保護者および専門家の意見などを勘案して総合的な観点から適切な就学先・転学先を決定する仕組みを確立するため、全管内で市町村教育委員会就学事務担当者等研修会を開催し、早期からの教育相談・支援体制の構築や、就学後の支援内容および学びの場の見直しの必要性について説明を行い、市町村の理解促進を図っている。
また、道の保健福祉部と連携し、全管内に推進地域を指定し、発達支援センターや児童デイサービスなど保健福祉分野の部署や機関との連携の充実を図るとともに、早期からの教育相談や支援体制の充実を図る取組を推進している。
今後も、保健福祉部や各教育局と連携し、市町村における特別支援教育の一層の充実に努めていく。
教育局ごとに実施している専門家チーム会議、巡回相談については、引き続き必要な予算の確保に努めていく。
(3)交流および共同学習の推進
▽学校間交流や居住地校交流の一層の推進を図るため、各教育局の特別支援教育スーパーバイザーを通じ、市町村教委や小・中学校などの理解促進に努めていく。
▽交流および共同学習の好事例等を情報収集し、会議研修会などの機会を通じて情報提供していく。
▽居住地校交流に要する教職員旅費の措置は困難である。
また、副次的な籍にかかる制度(副籍制度)については、国の動向を注視していく。
▽高校生段階における交流および共同学習について各視点を踏まえた好事例等を情報収集し、『教育課程編成の手引』等に掲載するなどして情報提供していく。
▽地域における交流事業の実施については、要望を踏まえ、今後検討していく。
▽現在、二十四年四月作成の『交流および共同学習をすすめるために』を道立特別支援教育センターのHPで公開しているが、今後、改訂版の作成を検討していく。
(4)中学校における特別支援教育の理解促進と適切な進路指導の推進
▽すべての管内において、中学校の特別支援学級担任や進路指導担当者などを対象とした特別支援教育進路指導協議会を開催し、障がいのある生徒の進路指導に関する理解促進を図るとともに、本年度は高校における特別支援教育と入学者選考に関する説明のほか、高校における具体的な取組事例を紹介することなどによって理解啓発を図ってきている。
また『道立特別支援学校高等部のしおり』の配布やWebページ掲載を通じ、広く理解啓発に努めている。
今後も、各特別支援学校と連携しながら、中学校において適切な進路指導がなされるよう取り組んでいく。
▽教員の研修については、教特法の一部改正に基づき策定した北海道における「教員育成指標」を踏まえ、三十年三月に三十年度道教員研修計画を策定し、本研修計画に基づき実施している。
管理職については、採用校長および昇任教頭を対象とした公立小・中学校新任校長研修会および公立小・中学校新任教頭研修会において特別支援教育にかかる内容を位置付けている。
また、道立教育研究所において、現職校長・副校長・教頭を対象とした研修を実施し、協議などにおいて、特別支援教育にかかる内容を扱っている。
管理職を対象とした必修の研修会の実施については、予算の確保の面で困難であることから、例えば、現職を対象とした上記の道研の研修を受講した管理職が管内の学校に研修内容を確実に還元することで対応していきたいと考えており、参加者に働きかけていく。
(5)高校における特別支援教育の推進
▽現在、道立特別支援教育センターや各管内で実施している特別支援教育関係の研修会に、高校長の参加を可能とするものがあるほか、道立特別支援教育センターにおいて、高校の教職員を対象とした研修講座を設定している。
また、高校の教員を対象とする道立教育研究所の講座に特別支援教育センターの職員を派遣し、講義などを行っている。
今後も、後期中等教育における特別支援教育の充実に向け、関係機関との連携強化を図りながら、研修機会の充実や理解啓発資料の作成を検討していく。
▽教育上特別な支援を必要とする生徒については、例年実施している調査の結果を踏まえ、各校の要請に応じてスーパーバイザーやパートナー・ティーチャーを派遣したり、学習面、生活面等の支援をするための特別支援教育支援員を配置したりしている。
通級による指導については、二十九年十二月十二日に「道立高校等における通級による指導にかかる基本的な考え方」を策定し、すべての高校等において校長の判断によって通級による指導を行う場合の取扱いなどに関して必要な事項を定めた。
また、本年度、通級による指導を実施している高校四校に対して、国の加配によって別支援教育教諭免許を有する教員を配置し、指導体制の充実を図っており、今後、実施校における取組の成果や課題等を取りまとめ、各学校に周知していくので、引き続き協力をお願いする。
(6)合理的配慮対応マニュアルの作成
▽保護者からの要望の取りまとめや対応の仕方などについては、校長会と連携し資料等の作成について検討していく。
▽二十九年三月に『“合理的配慮の提供”に至るプロセス』を発行し、その中で、「必要な合理的配慮について合意形成を図り、授業を行うまでのプロセス」を示した。
また、三十年八月三十一日に道保健福祉部福祉局障がい者保健福祉課から『合理的配慮事例集』が改訂された。
また、合理的配慮に関する事例集については、『道立知的障がい特別支援学校高等部入学者選考における特別な配慮および合理的配慮を要する受検者等への対応の流れ』『“特別な対応を要する受検”に関する対応事例集』を作成し、管理職に向けて周知しているが、今後、必要となる資料の作成を検討していく。
2 特別支援学校の教育の充実に関する事項
(1)特別支援学校の再編―重点
▽学校の整備等に関する特別支援学校長会等への情報提供や意見交換については、継続して実施していく。
▽配置計画の策定に当たっては、関係課とも連携しながら小・中学校における特別支援学級の在籍者数や児童生徒の実情、高校を含めた生徒の進路動向などを十分に踏まえ、検討している。
また、学科見直しを実施する場合は、実習や就労の見通し、学科の配置バランスなど地域の状況を踏まえ、関係学校と協議しながら行っており、今後も同様に対応していく。
▽狭隘化によって、適切な教育環境が確保されていない学校については、早急に改善を図る必要があると認識しており、狭隘化の解消に向け、校舎増築のほか、高校等の空き校舎を活用した整備を行うなど、可能な限り早期に対策を講じて、教育環境の改善・充実を図っていく。
▽間口の増減が生じる学校に対しては、可能な限り早期に協議しており、今後も同様に対応していく。
▽施設併設の特別支援学校については、個々の学校で児童生徒の就学状況などが異なることから、各学校と協議の上、必要に応じ、実態に即した見直しを講じることとしている。
▽夕張高等養護学校については、学校とも十分協議しながら、在り方等を検討していく。
▽肢体不自由教育校の高等部の在り方については、校長会をはじめ、関係学校とも協議しながら、在り方等を検討していく。
▽八雲養護学校と山の手養護学校については、道教委・札幌市教委・国立病院機構・二校の五者を構成員とする北海道医療センターに併設となる特別支援学校の在り方等に関する連絡調整会議において協議を行うなど、二校間の学校運営の在り方等を検討している。
▽星置養護学校紅葉山分教室の分校化については、設置経緯や石狩市から借用している施設の規模などを踏まえると、現時点では困難である。
▽白樺高等養護学校については、三十一年度に臨時学級減を実施することとしており、次年度以降についても圏域内における進学希望者数の状況を踏まえて検討していく。
▽寄宿舎の整備については、校舎改築や大規模改造時などに関係課とも連携を図りながら、必要な整備に努めていく。
▽特別支援学校に関しては、在籍する幼児児童生徒の障がいの種類や程度など、各学校の状況に応じて柔軟な対応が可能となるよう、設置基準が設けられていないと承知している。
一方、在籍者数の増加に伴い特別教室を普通教室に転用するなど教室不足となっている学校があることは子どもたちの学ぶ場として適切な教育環境を確保する上で、改善を図るべき課題と認識しており、今後も適切な環境の整備に努めていく。
(2)乳幼児・幼児教育の充実
▽聴覚障がい乳幼児療育事業については、事業の適切な実施や充実が図られるよう、毎年度、予算や定数の確保を保健福祉部に要請しており、今後も同様に対応していく。
▽幼稚部に各年齢ごとの学級編制や重複障害学級の設置ができるよう、引き続き国に要望していく。
(3)特別支援学校高等部の在り方の検討―重点
▽本年度も知的障がい特別支援学校高等部入学者選考在り方研究協議会および在り方検討WG会議を開催し、三十二年度からの新しい形の高等部の導入に向け、教育課程や入学者選考検査等の在り方などについて検討している。今後も、特別支援学校長会や副校長・教頭会などから意見を徴し、総合的な見直しに向けて検討していく。
▽今後も、特別支援学校長会や副校長・教頭会などから意見を徴し、特別支援学校の課題に応じた会議を設置するなどして、解決に向けて検討していく。
(4)センター的機能のより一層の充実を図るための施策の推進―重点
▽各教育局に設置する専門家チームについて、必要に応じて隣接する教育局の専門家チームと調整を図り、障がい種別に応じた構成員を招いて支援することができる旨、二十八年度から要項を改訂している。
▽各教育局に配置している特別支援教育スーパーバイザーについては特別支援教育スーパーバイザー研究協議会の実施を通じて資質の向上を図るとともに、本年度は、広域連携協議会や特別支援学級リーダー教員研究協議会へも参加を促し、地域の小・中学校との連携促進や専門性向上に資する取組を進めている。
▽特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業については、実施通知に「派遣教員と管理職や特別支援教育コーディネーターを交えた担任教員等との懇談の機会を設けるなど事業の効果的な実施」について明記し、小・中学校等における組織的な対応の充実を図っている。
▽本庁の学校訪問指導の際に、各教育局に配置している特別支援教育スーパーバイザーなどの同席や、教育局義務教育担当指導主事および高校教育担当指導主事が必要に応じ特別支援学校を訪問するなど、連携協力している。
▽特別支援学校の地域におけるセンター的機能の充実を図るため、国の加配定数を活用し、地域の特別支援教育の中核を担う特別支援教育コーディネーターの配置を行っている。
特別支援教育コーディネーターの配置拡充のためには、国の教職員定数の改善が必要であると考えている。
今後も、特別支援教育の一層の充実に向け、全国都道府県教育委員会連合会などと連携し、国に対して、改善が行われるよう強く要望していく。
▽特別支援教育コーディネーターの育成については、校長会や各教育局と連携し、特別支援教育に関する指導的な役割を担う人材の育成に努めるとともに、特別支援教育センターの特別支援学校コーディネーター研修講座において、小・中学校等が特別支援教育のノウハウを蓄積することができるような助言や援助の在り方などについて説明を行っている。
(5)関係機関と連携した進路支援方策の推進―重点
▽進路開拓や卒後支援等にかかる旅費の予算措置拡充等については困難である。
▽雇用の拡大については、本年度から、特別支援学校の教育活動をサポートする企業の登録を道央圏から全道域に拡大しており、現在、百六十社ほどの登録となっている。
今後も、関係機関との連携を図りながら、進路支援の充実に取り組んでいきたい。
▽合理的配慮の周知については、改正障害者雇用促進法などにかかる今後の国の施策動向を注視しつつ、関係部局とも連携して取り組んでいきたい。
▽障がい者雇用の一層の推進については、毎年、道(経済部雇用労政課、保健福祉部障がい者保健福祉課)と道教委特別支援教育課、道労働局職業対策課の幹部職員によって道内主要経済五団体に対して雇用要請を行い、各総合振興局・振興局および教育局においても、公共職業安定所と連携の上、管内主要経済団体などに対して積極的に要請している。
また、昨年度から経済部との合同によって特別支援学校企業向け見学会を実施するなどしているが、研修会の開催については、今後の検討課題とさせていただきたい。
(6)特別支援教育就学奨励費制度の堅持および拡充
▽特別支援教育就学奨励費負担金等の制度充実については、毎年度、全国都道府県教育長協議会などと連携して国に要望しているほか、道教委としても単独で要望しており、今後も継続していく。
▽寄宿舎食費の限度額廃止については、国に対し、制度の拡充を要望していく。
▽就学奨励費は、保護者の実費負担に基づく支給を原則としており、支給対象品目の確認・審査など適切な事務処理の執行が必要であるが、適切な事務処理を担保した上での簡素化について、各学校から情報収集した上で、検討していきたい。
(7)学習指導要領改訂にかかわる学校への支援
▽カリキュラム・マネジメントが有効に機能できるよう、『教育課程編成の手引き』を作成するとともに、教育課程研究協議会などにおいて管理職や教諭に対し理解啓発を図る。
▽教職員の研修旅費については、校内・地域教職員研修促進費として予算措置している。
二十四年度からは、学校の小規模化の問題に対応するため、事業名を校内・地域教職員研修促進費に変更し、複数の学校が合同で研修を行うことができる地域連携型の事業「地域連携研修」を実施するとともに、二十六年度からは、特別支援学校を対象に含めるなど、拡充を図ってきた。
道の財政は厳しい状況にあるが、これまでの執行状況を踏まえ、引き続き必要な予算の確保に努めていく。
▽本年度、学習指導要領の改訂に伴う教育課程編成についての配慮事項やカリキュラム・マネジメントについての具体を示した『特別支援教育教育課程編成の手引き』を作成し各学校に配布する。
(8)修学旅行等の引率者数の増
▽修学旅行の引率者数の増については、一律に示すことが難しいことから、今後も、各学校の状況や児童生徒の一人ひとりの障がいの状態などに応じて検討していく。
▽特別な事情については、これまでも個別に協議の上対応してきているが、配分基準の見直しについては、知的障がい特別支援学校高等部(職業学科設置校)の学科再編を踏まえ、引き続き検討していく。
▽校外における医療的ケアについては、国の検討会議においても今後検討される項目となっており、その動向を踏まえて、全道的な対応について検討を進めていく。
(9)スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカー活用事業の拡充
▽スクールカウンセラーの配置については、国のスクールカウンセラー活用事業(国庫補助事業)を活用し、札幌市立を除く道内の公立学校(主に中学校を対象)に配置している。
また、緊急に児童生徒の心のケアなどが必要な場合は、配置校以外にもスクールカウンセラーを緊急派遣している。
スクールソーシャルワーカーについては、国のスクールソーシャルワーカー活用事業(国庫補助事業)を活用し、希望する市町村との委託契約によって市町村に配置するほか、委託契約をしていない市町村や道立学校に対しては、道教委で任用したスクールソーシャルワーカーを派遣できる体制を整備している。
特別支援学校については、二十六年度から、特別な事情を有すると判断された学校に、スクールカウンセラーを配置することとしており、三十年度は九校に通年配置している。
また、スクールソーシャルワーカーについては、三十年度は道教委で十一人任用しており、二十九年度には二校に派遣した。
道教委では、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの活用がいじめや不登校などへの対応として効果を上げており、学校の教育相談体制の充実を図る上で重要であると考え、引き続き、国に対して、補助率の引き上げなど、事業の充実を要望していきたいと考えている。
道財政は極めて厳しい状況にあるが、引き続き、必要な予算の確保に努めていく。
なお、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーについては、大学生に対する現場実習の機会を提供するほか、道教委主催の現職者に対する研修や大学授業の聴講の機会を提供する取組を行っており、引き続き、人材の育成や人材の確保に努めていく。
(10)安心・安全なスクールバス運行体制の確保
▽運行中の安全確保については、添乗介助を行うバス事業者に対する事前研修などの対策を講じてきたが、本研修の周知を徹底するとともに、適宜業務処理要領を見直すなどの改善についても、引き続き検討していく。
▽必要な予算の確保について、今後とも努力していく。
▽スクールバスの賃貸借契約は、一般競争入札で実施することが必要である。
▽スクールバスの運行に関しては、添乗介助員の座席や他害行為など児童生徒の障がいの状況等を考慮した必要座席数に基づき、措置台数を定めており、今後も、引き続き各学校の状況を十分把握するとともに、必要な予算の確保に努めていく。
3 教職員の資質向上および専門性の確保に関する事項
(1)教員の資質向上
▽免許法認定講習については、これまで検討を行い、会場や定員の拡充などに努めてきているが、今後も道教育大学等と協議をしながら、免許状の取得を一層促進するよう努めていきたいと考えている。
また、特別支援学校教諭免許状の取得については、免許法認定講習の実施等によって、引き続き促進に努めていく。
一種免許状所有者の領域の追加については、現状の二種の領域の追加に比べ、講座内容などが異なるとともに、所要単位数も二倍となることから、現時点では実施の予定はない。
▽各教員が免許状更新手続を確実に行うことができるよう、免許管理者等が各教員の免許状保有状況などを把握するため、昨年度から全国規模で所有免許状調査を実施している。
今後、保有状況の情報を整備するとともに、更新時期の確認など、必要な情報提供に努めていく。
▽道教委としては、教職カリキュラムに教員育成指標の内容が反映されるよう、道内の各教員養成大学に働きかけていく。
(2)専門性向上のための研修事業の充実および校内研修への支援―重点
▽教員の研修については、教特法の一部改正に基づき策定した北海道における「教員育成指標」を踏まえ、三十年三月に三十年度道教員研修計画を策定し、本研修計画に基づき実施している。
中央研修および大学院研修派遣、長期研修派遣にかかる旅費等については、道の厳しい財政状況の中、可能な限り予算措置しているところであり、増額は困難である。
ICTに関する研修については、中央研修「特別支援教育におけるICT活用に関わる指導者研究協議会」の参加旅費を措置しているほか、道立教育研究所において、タブレット活用研修講座など三講座を開設している。
また、自立活動教諭の研修については、中央研修「自立教科等担当教員講習会」の参加旅費を措置しているほか、特別支援教育センターにおいて自立活動研修講座を開催している。
教職員の研修旅費については、校内・地域教職員研修促進費として予算措置している。
二十四年度からは、学校の小規模化の問題に対応するため、事業名を校内・地域教職員研修促進費(校内研修費、教職員研修費、地域連携研修費の三種類で構成)に変更し、複数の学校が合同で研修を行うことができる地域連携型の事業「地域連携研修」を実施するとともに、二十六年度からは、特別支援学校を対象に含めるなど、拡充を図ってきた。
道の財政は厳しい状況にあるが、引き続き必要な予算の確保に努めていく。
▽道内外からの外部講師招へいにかかる旅費等の措置については、地域連携研修費として予算措置している。
校内研修費および教職員研修費は、あくまでも教職員にかかる旅費であることから、講師招聘にかかる費用については、地域連携研修費を活用いただきたい。
道の財政は厳しい状況にあるが、引き続き必要な予算の確保に努めていく
▽ICTを活用した遠隔研修については、道立教育研究所において、特別支援学校を対象とした研修では、三講座開設しているほか、管内研修センター等連携研修講座(ミニ道研)を十四管内で十八講座開設している。
また、研修講座の一部を録画した講義動画や研修資料などを、Webページを活用して配信するオンデマンド研修を十九講座開設している。
遠隔研修、オンデマンド研修については、引き続き、実施に努めていく。
▽医療的ケアにかかる研修については、研修機会の拡充や、より効果的な開催地域の在り方について、特別支援学校医療的ケア体制整備事業の実施などを通して検討していく。
医療的ケア実施のためのハンドブックについては、国における検討会議や道教委における国委嘱事業の成果を踏まえ内容の充実に努めていく。
▽真駒内養護学校に配置した自立活動教諭を他校に派遣するための予算を措置しており、配置校と連絡調整しながら派遣を実施するとともに、特別支援教育センターにおいて摂食および嚥下に課題のある幼児児童生徒にかかる専門性向上に向けた研修の実施について検討していく。
▽指導等に課題のある職員などについては、今後も、各学校と連携を図り、状況の把握に努め、適切に対応していく。
(3)寄宿舎指導員、実習助手、介護員の研修の充実
▽特別支援教育センターにおいて、寄宿舎指導員などを対象とした研修を実施しており、各学校の実情に応じた研修の機会の確保と内容の充実を図っていきたい。
▽本年度、特別支援教育センターの寄宿舎指導員研修講座において寄宿舎指導研修マニュアルに基づく研修を実施する。
(4)事務職員の資質向上に向けた研修機会の確保と研修内容の充実
▽道立学校に勤務する行政職員に対しては、現在、事務長研修(新任)、事務主任研修(新任・現任)、事務職員研修(新採用・財務実務)、職務換研修の階層別研修を行っており、今後においても職位に応じた研修機会を確保するほか、不断に内容の見直しを行い、行政職員の資質・能力向上を図っていく。
4 施設設備や教育環境の整備に関する事項
(1)給食関連の施設設備の整備と予算の確保
▽施設設備の改善、児童生徒数の増加、再調理に対応できる施設設備の計画的な配備および臨時職員の配置などについては、引き続き、関係課と連携を図りながら検討していく。
▽給食関連運営予算については、学校運営費の一部として確保しており、厳しい財政状況にあるが、今後とも、給食が円滑に運営されるよう、適正な予算の措置に努めていく。
▽学校給食における業務委託について対応に不備がある場合は、契約書に基づき教育局を通して委託業者に是正を求めていただくようお願いする。
なお、業務従事者に対する教育訓練については、業務処理要領において訓練の都度、報告を義務付けているので、教育局から委託業者に報告を求めるようお願いする。
▽栄養教諭の業務内容および業務量の改善に関しては、関係課と連携しながら、必要に応じて、学校内における支援体制などについて助言していく。
また、栄養管理ソフト等の更新については、引き続き、関係課と連携を図りながら検討していく。
(2)校舎や寄宿舎の改修等の計画的な推進―重点
▽狭隘化によって、適切な教育環境が確保されていない学校については、早急に改善を図る必要があると認識しており、狭隘化の解消に向け、校舎増築のほか、高校等の空き校舎を活用した整備を行うなど、可能な限り早期に対策を講じて、教育環境の改善・充実を図っていく。
▽学校施設を適切に維持管理するための大規模な改修については、道の施設整備方針に基づき、築後二十年および築後三十五年をめどに大規模改造工事を実施するなど、安全・安心な教育環境の維持が図られるよう、計画的な事業の実施に努めているが、厳しい財政状況によって、必ずしも方針どおりに進んでいない。
引き続き、大規模改造工事等の実施のほか、必要な補修を行うなどして適切な学校施設の維持管理に努めていきたい。
避難所指定を受けている学校施設の改修等については、阪神淡路大震災を契機として、これまで、多目的トイレやシャワー室を備える防災棟を整備してきた。
一方で、老朽化が著しい学校施設において、速やかな改修の必要性も高まっている。
引き続き、限られた財源の中で、学校施設の適切な維持管理に努めるとともに、避難所として必要な防災機能の充実に取り組んでいく。
▽学校施設の必要な補修等については、これまでも、学校から提出された補修調書に基づき、関係書類を確認し、必要に応じて、聴き取りを行うなどして、実態を把握し、緊急性や優先度を判断しながら、予算の範囲内で対応してきた。
引き続き、安心・安全な教育環境の維持が図られるよう、必要な予算の確保に努めていく。
(3)校務支援システムにかかる環境の充実
▽本年度から運用を開始した新スクールネットのグループウェアは、セキュリティ強化を図った上で、職員用に特化しており、将来的な校務支援システムとの一本化を検討していく。
また、特別支援学校における校務支援システムについては、現行においては、特別支援学校の実情に十分に対応しきれていないので、本年度、設置した校務支援システム改修検討委員会において、改善の方向性について検討していく。
(4)ICTを活用した教育の充実―重点
▽クラウドサービスの利用に当たっては、セキュリティや利用する回線帯域への負荷などについて配慮する必要があるが、現在実施しているセキュリティ調査の結果や高校における国の指定事業などを検証し、利用に当たっての条件について検討していく。
▽ICTの活用については、現在、各校にリースパソコンを整備しているが、専任の技術者の雇用やメンテナンス、通信費用などについては、財政上、新たな予算措置は厳しい状況にある。
▽情報教育機器拡充の対応については、道財政が厳しい中ではあるが、必要な予算確保を検討していく。
(5)学校管理運営予算の確保
▽暖房費等や除雪、排雪にかかる経費および学校備品予算については、道財政が厳しい状況にあるが、引き続き、予算確保に向けて努力していく。
▽予算の執行に当たっては、計画的かつ効率的な執行を確保するため、道立学校における予算の調整配分にかかる事務処理要領を定めている。
▽管理運営旅費の配分については、管内別配分単価や学校数等によって積算し、過去の配分額を基に算出しており、過不足については、例年執行状況調査を行い、調整配分を行っている。
(6)危機管理対策にかかる予算の充実
▽このたびの胆振東部地震の対応等について、検証を行うとともに、厳冬期における対応も見据えてマニュアルの見直しを行うなど、安全確保に向けた取組を強化していく。
▽AEDを用いて早期の除細動を行うことは、心停止者の救命に有効であるとされている。
学校においては、児童生徒の不測の事態に備えることが重要であることから、道教委では、現在、道立学校全校に一台、AEDを整備しているが、各学校の現状や、他県の整備状況などを把握し、今後の整備の在り方について検討を進めていく。
▽聾学校(寄宿舎含む)における視覚情報提示装置(LED、文字表示装置等)については、道財政が厳しい中ではあるが、必要な予算確保を検討していく。
5 管理職も含めた職員の業務の適正化および管理職候補者の育成に関する事項
(1)ミドルリーダーや管理職候補者の育成
▽管理職候補者等の人材確保については、校長会などと連携を図りながら、来年度から、再開する特別支援教育センター長期研修の成果等を周知するなど意図的・計画的な人材育成に向けた具体的な方策を検討していきたい。
▽単身赴任手当については、部局を異にする異動に伴って住居を移転し、やむを得ない事情によって同居していた配偶者などと別居して単身で生活することとなった教職員に対し支給できるものであり、支給要件については、今後においても国の取扱いを基本として対処していきたいと考えている。
赴任旅費については、国の制度に準ずることを基本としながら、二十七年四月以降、赴任に伴う移転料の増額調整の対象拡大、子を随伴して赴任した職員の取扱いや新規採用職員の取扱いを見直すなど、職員の赴任の実態に合うよう改正した。
今後とも、職員の実態に即した旅費となるよう努めていく。
(2)管理職の待遇改善―重点
▽給与の縮減措置については、退職手当の見直しによる人件費の歳出削減が見込まれることなどから、三十年度末をもって終了することとしている。
(3)副校長、教頭の業務の適正化
▽調査を実施する際は、教員の負担軽減に十分留意し、調査の削減に積極的に取り組むよう努める。
また、校長会などとも連携し、具体的改善案等について検討していく。
▽学校の実態に沿った勤務時間の把握方法を検討するため、スクールネットとタイムカードの二つの出退勤管理システムによる対照実験を行ったところであり、この実験結果などを踏まえ、勤務時間を客観的に把握し集計するシステムを可能な限り早期に構築していく。
▽副校長、教頭の専決事項については、道立学校事務専決代決規程を定めているが、さらに事務効率を図るべき事項などについては校長会等からも意見を伺いながら研究していく。
6 その他
(1)人事評価制度の改善
▽人事評価業務の効率化の観点から、本年度から人事評価シートの所見欄については、記述方式のほか定型文のプルダウン方式での記載も可能とし、評価者による選択を可能とするとともに、全体評語「C」および個別評語「c」の場合は、所見欄の記載自体を省略することも可能とした。
面談の実施回数の柔軟化など、制度の効率的な運用にも努めているが、引き続き意見等をいただきながら適宜、改善検討を行っていきたいと考えている。
(2)教育実習制度の改善―新規
▽小・中学校特別支援学級においては、特別支援学校と同等の実習内容を確保することが極めて困難であることから、小・中学校特別支援学級での教育実習を特別支援学校教諭免許取得にかかる教育実習として扱うことは難しいと考える。
(3)期限付教員等の安定的な確保―新規
▽期限付教員等の配置については、これまでも学校運営の支障とならないよう確保に努めてきており、今後も学校長と十分協議しながら対応していく。
(4)障がいのある教職員の働きやすい条件整備―新規
▽教職員の配置については、標準法に準拠して配置しており、現行の配置基準以上に措置するためには、国の新たな教職員定数の改善が必要であることから、特別支援教育の充実を図るための教職員の定数措置の拡充について、引き続き、国に対して要望していく。
(5)新スクールネットの使用にかかわる環境の充実―新規
▽マニュアルについては、道スクールネットポータルサイトに掲載している。活用事例については、必要に応じ、資料などの作成について検討していく。
▽メールの一括保存については、各学校の要望を踏まえ、五月に旧スクールネットと同様にTEXT形式でメールを保存できるよう、メール形式変換ツールを作成し、道スクールネットポータルサイトに掲載した。
(道・道教委 2018-11-02付)
その他の記事( 道・道教委)
道青少年健全育成審議会が会合 非行などの状況確認 審議会・部会開催も協議
道が設置する道青少年健全育成審議会(丸山治会長)は一日、札幌市内のかでる2・7で三十年度第一回審議会を開いた。委員十人が出席。部会委員の指名や審議会および部会の開催について協議したほか、事...(2018-11-06) 全て読む
道教委など4者が支援活動 子の健全育成目指し サッカー教室や宿題教室
道教委、JAグループ北海道、㈱コンサドーレ、道教育大学は十月二十五日、札幌市内の子ども食堂もくきちなどで四者連携による支援活動を実施した。コンサドーレによるサッカー教室、道教育大の学生によ...(2018-11-05) 全て読む
胆振東部地震の被害状況―道教委まとめ、10月25日現在 学校施設被害額は57億円 農業高で停電により生乳破棄
道教委は、十月二十五日現在における北海道胆振東部地震に伴う道内公立学校、社会教育・文化施設、文化財などの被害状況をまとめた。被害件数は三百九十二件で、被害額(判明分)は五十九億五千五百万円...(2018-11-05) 全て読む
高校入学者選抜説明会開く―留萌局 円滑な遂行へ認識共有 留意事項を説明
【留萌発】留萌教育局は十月中旬、苫前町公民館で三十一年度公立高校入学者選抜説明会を開いた。管内の公立中学校・高校の校長や教頭など管理職と担当教諭ら三十三人が出席。入学者選抜業務における留意...(2018-11-02) 全て読む
アビリンピック出場の2生徒 悔いないよう頑張って! 道教委・佐藤教育長を表敬訪問
小樽高等支援学校(松浦孝寿校長)三年生の佐藤稜真君、函館五稜郭支援学校(田近憲二校長)三年の山内萌さんは十月三十一日、第三十八回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)参加を前に道教委の佐...(2018-11-02) 全て読む
安全マップコンクール優秀作品 知事賞に札幌市幌北小 児童見守る機運を醸成
道教委は、本年度「安全マップコンクール」における優秀作品を発表した。児童を見守る気運の醸成を図ることをねらいに本年度初めて開催。審査の結果、最高賞の「北海道知事賞」には、札幌市立幌北小学校...(2018-11-02) 全て読む
SCRUM道東圏域連絡協議会 授業改善など理解深め サポート校・釧路湖陵高が発表
【帯広発】道教委は十月二十四日、帯広柏葉高校を主会場に道高校「教科等の本質的な学びを踏まえた主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習・指導方法の改善のための実践研...(2018-11-02) 全て読む
北海道specialプロジェクト 特別支援学校3校を指定 専門家招き地域拠点づくり
道は、三十年度「北海道Specialプロジェクト」の実施校として、新得高等支援学校、室蘭聾学校、東川養護学校の三校を決定した。スポーツ、文化、芸術などの分野で活躍する専門家を招き、生徒や地...(2018-11-01) 全て読む
道文化賞・道文化奨励賞贈呈式 文化振興に一層協力を 高橋知事が4氏へ表彰状
道は十月二十九日、ホテル札幌ガーデンパレスで三十年度道文化賞・文化奨励賞の贈呈式を執り行った。平取町二風谷アイヌ語教室講師の木幡サチ子氏ら三個人が文化賞、北海道大学総合博物館准教授の小林快...(2018-11-01) 全て読む
道教委・坂本部長が渡島管内視察 頑張って目標達成を 授業見学し児童生徒と交流
【函館発】道教委の坂本明彦教育部長兼教育職員監は十八日と十九日の二日間、函館市と七飯町の学校や教育施設を視察した。初日に訪問先の函館商業高校で生徒の夢を聞いた坂本部長は「ぜひ、頑張って目標...(2018-10-31) 全て読む